元銀行マンが懸けるコンテンツビジネスの夜明け - (page 3)

--御社がJDC信託へと商号を変更したのは、2005年6月ですね。信託がデジタルコンテンツへの投資に最適である理由は何ですか。

 実をいうと、弊社創立以前の段階から、デジタルコンテンツの資金調達には、信託が最も適している、という見通しは立てていました。なぜなら、制作サイド、資金調達サイド双方にとって、プロジェクトベースでことを進めたほうが、お互いにリスクが小さいのは言うまでもありませんが、それを実現するためのツールとして、信託が一番適しているのは明らかですから。

 任意組合や有限責任組合、匿名組合などの機能や特性を比較したとき、信託は元本を返す必要がなく、実質的配当型である点、おおもとの知的財産を管理・保全できる点、資金の性格を自在に転換できる点が特徴です。また、制作会社寄りでも流通寄りでもない、中立な立場で最適な投資を行える、という強みもあります。

--2004年の信託業法改正によって、ようやくそれが可能になったと。

 知的財産に関する日本の戦略の遅れは、当時誰の目にも明らかでした。私も、信託関連法改正研究会や流通・流動化小委員会において、知的財産の信託を認めるよう提言していました。

 そんな折、小泉首相が知的財産戦略大綱をぶちあげ、知財立国の戦略を変えてくれた。おかげで信託業法が改正され、信託で受託できる財産の中に、知的財産も含まれることになったんですね。信託関連法の改正は当時の私のライフワークで、10年はかかるだろうと踏んでいましたから、その意味では想像以上に早く進んだ印象です。

--デジタルコンテンツの資金調達において、信託が大きなアドバンテージを持っているにもかかわらず、御社以降、知的財産権信託を扱う企業はなかなか出てきませんね。

 確かに、ベンチャーキャピタルが完全に1社に特化して作品に投資する、身内ファンドのような形は出てきていますが、弊社のような規模で信託業務を行う企業は出てきていません。各社ともまだ様子見で、弊社の動向を観察しているのだろうと思います。弊社の信託財産が1000億円を超えるようになれば、おそらく信託銀行などがこぞって動き出すのではないでしょうか。

 加えて、この業界にはコンテンツ業界に詳しい人材が少なく、人手不足という面もあるでしょうね。いずれにしても、いろいろな企業が参入して、市場自体を盛り上げてくれることを期待しています。

--デジタル化、ネットワーク化に対応した法整備についてはどう考えていますか。

 もちろん、例えばライセンシーの保護や利用者の保護は必要だと思っていますし、何より新たな市場や才能を生むには不可欠の要素でしょう。ただ、例えば著作権法の大枠を崩すのはなかなか難しいですから、時代の要請にあわせた形での、ある意味で折衷案的なものになるのではないでしょうか。また、中国における違法コピーなど、遵守方策の問題もあります。これも一民間企業の手に負えるものではなく、国が本気で考えてくれないとまずい問題ですから、条約もしくは政府間交渉によって、少しでも改善する努力を期待したいですね。

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