元銀行マンが懸けるコンテンツビジネスの夜明け

 米国に次ぐ世界第2位のデジタルコンテンツ大国である日本。財団法人デジタルコンテンツ協会の発表によれば、その市場規模は2006年度が約2兆7700億円、2007年には3兆円を突破する見通しだ。その一方で、現状に則した著作権法の立ち後れやコンテンツのクオリティ低下など、様々な問題も指摘されている。

 そうした状況を受け、市場に一石を投じようという動きも出てきている。コンテンツ制作への投資・信託業務や、ビジネス構築業務を手がけるジャパン・デジタル・コンテンツ信託(以下JDC信託)は、その先駆者的な存在だ。同社代表取締役社長の土井宏文氏に、同社設立の経緯やデジタルコンテンツを取り巻く環境の問題点、知的財産権信託の可能性について聞いた。

--まずはJDC信託設立の経緯についてお聞きします。御社の前身、ジャパン・デジタル・コンテンツの創立は、1998年3月でしたね。

 ええ。ことの始まりは1996年。通産省(現・経済産業省)への働きかけによって発足した、マルチメディアコンテンツ流通研究会に端を発します。当時はようやくインターネットが一般に普及し始め、コンテンツのデジタル化も徐々に進められてはいたものの、産業としては期待したほど伸びず、「コンテンツ冬の時代」などともいわれていました。

 そうした状況を分析するために設置された当研究会で、コンテンツホルダーが権利をコントロールしながら円滑に資金を調達するのが難しいこと、権利や契約のあり方が非常に複雑、かつ曖昧であることなどが問題点として挙げられました。JDC信託は、そうした問題を解決するために創設されたといえます。

--土井さん自身は、どのような問題意識を持って研究会に参加したんですか。

 当時、私は銀行員だったんですが、たまたまコンテンツ産業に触れる機会があり、「デジタル化さえ進めば、日本のコンテンツは世界中に広まるだろう」と確信していたんです。ところが、何年経っても、一向に伸びてくる気配がない。これはおそらく流通にボトルネックがあるのだろうという結論に達し、研究会設置を通産省に持ちかけたんです。

 研究会ではレポートをまとめたり、参加社を集めたりと、いわゆる座長、実質的には事務局兼司会者のポジションを務めました。自分の目論見としては、JDC信託の創設までは関わって、あとは誰か別の適任者にお任せしようと思っていたんですが、皆さんから「逃げるな」といわれまして(笑)。

--トヨタやNTTデータ、ビクターなど、そうそうたる主要株主の中にあって、44歳にして常務取締役に就任し、2年後には代表取締役社長となって、同年に東証マザーズ上場も果たしていらっしゃいます。すごいスピードですね。

 上場してもいいなら社長を引き受ける、と条件をつけたんです。というのも、確かに主要株主には優良企業がずらりと顔を並べてはいますが、当時はファンドで資金供給をやっているというだけで、あまりいいイメージは持たれなかった。信用力を上げるためにも、上場は不可欠だと思ったんです。証券取引法が改正されて、現在はリスクマネーに対する理解も拡がってきましたけどね。

--JDC信託設立当初の業務内容はどんなものでしたか。

 コンテンツにファンドを通じて資金を供給することで、コンテンツ制作者のみならず流通側に対しても、マーケティングや権利面を明確に提示することを目指しました。その際、ハリウッドのフィルムファイナンスや、オーストラリアのマルチメディアファンドなどが参考になりましたね。具体的に、まずは任意組合や有限責任組合を作って先行して資金を集め、ベンチャー企業の作るような比較的金額の小さなゲームやアニメーションなどのコンテンツへの投資を始めました。

 その後、今度は「まずファンドありき」の形ではなく、進行中のプロジェクトに合致する内容での資金調達需要に応えるため、特定目的会社の下に匿名組合をぶら下げた形での資金調達を開始しました。GDHの「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」がその典型例ですね。

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