世界中の誰もが言っていることですが、「有望なベンチャーの存在なしに経済の発展はありえない」と思っています。つまり、ベンチャーの動きを止めることは、日本経済の動きを止めてしまうことにもつながるのです。
米国はどんな不況下においても、毎年1000億円企業が生まれています。それが日本ではどうでしょう。むしろ、国際競争力が年々落ちていくという傾向にありますし、ベンチャー企業自身も日本にとどまらず国際化していく必要があります。
ですから、我々は今後、単なる日本のネット関連・投資企業ではなく、「ベンチャー」と「イノベーション」を軸としたグローバルな次世代型の総合商社のようなポジジョンを狙っていくつもりです。21世紀はアジアの時代と言われていますが、日本を中心としてアジアと繋がることができれば、それは世界と繋がることと同義なのです。
わたしはアジアの経済動向をよく見ているのですが、彼らの勢いはすごいですよ。特にベトナムなどは本当に勤勉かつ純粋な人が多く、みんな朝6時から猛烈に働いている。そんな状況下で、日本だったら東証マザーズに上場できてしまうような企業がたった1年でできてしまっている。日本とは活気から市場成長性から何から何まで、全く違います。
今米国では、投資などは日本を頭越しにして中国を軸としたアジア圏で積極展開しています。このままでは、日本は置いて行かれてしまうでしょう。ですから、日本ではベンチャーの信頼回復とベンチャーがもっと思いきった展開をしやすい環境づくりが重要だと考えています。
そのために考えているのが、オランダの童話作家レオ・レオニが書いた作品に由来する「スイミー戦略」です。
スイミーはいつも大魚にいじめられ、海の隅で小さく暮らしている小魚たちの物語です。その小魚たちの中で特に好奇心の強いスイミーはある日、大魚の中を潜り抜けて大海へ出ると、そこには竜宮城のような世界があることを知ります。今までに見たことのないような、自由と幸せに溢れる世界です。
スイミーは大海へ出れば得られる自由と幸せの世界を知り、「みんなで大海に出よう」と提案しますが、小魚たちは怖がって誰も行こうとはしない。そこで頭のいいスイミーは、自分が「目」になり、みんなで大魚の形を作って大海に出るという方法を思いつきます。
このスイミーのアイデアによって小魚たちはハッピーライフを手に入れるというわけなのですが、我々もこのスイミーの「目」になろうと思っています。
日本経済は尖がった時期もありましたが、それは小魚一匹一匹の尖がった存在であって、小魚一匹がどんなに真面目に頑張っても、戦略なしに無謀に大海に飛び出して行ったのでは討ち死にしてしまいます。だからわたしたちがスイミーとなってビジョンを共有するベンチャーたちと外に出て行き、世界の大企業に対しても互角に戦えるコンソーシアムを作っていこうと思っています。
7〜8年前に、わたしと西川(ngi group取締役会長の西川潔氏)は日本にもシリコンバレーを作ろうと「ビットバレー」活動を推進しました。この活動は国内のネットベンチャー市場を活性化させるのに大きな役割を果たしましたが、今度はアジアを舞台にした活動をしようとしています。
実は水面下ではさまざまなことをやっていて、例えば世界中が注目している中国やベトナムなどアジアの急成長市場の内部にも深く入り込んでいます。
先日、北京の人民大会堂で開催された「日中韓若手経済人サミット」では、日本の若手経済界を代表してわたしが団長を務め、中国側は政治経済の中枢たる人材を排出する中華全国青年連合会(胡錦涛主席の出身母体)の主席がホストをしてくれました。
中国ではベンチャー企業がいかに新規性の高いサービスなどをリリースしても、政府の規制にビジネスが左右されてしまうリスクがあり、信頼できる中国人パートナーや政府とのパイプは必須だと考えています。そういう意味で国の中枢にリレーションがあることは強みです。
ベトナムとも優秀な技術者が集まり、科学技術大臣を排出し続けているハノイ工科大学と提携しています。
現在、ベトナム株ブームですが、それは資源や社会インフラ系の産業であって、新しい革新的なものではありません。ただ、まだ市場としてはまっさらで勢いもあり、ここで我々のノウハウを生かす機会は十分にあると思っています。
そのほかにも、さまざまな急成長市場にコミットしています。
旧ネットエイジグループはこれまで、何をやっている会社か分らないとよく言われてきたし、ngi groupになってもますます分らないと言われ続けていくかもしれません。しかし、わたしはそれでいいと思っています。
例えば、日本の総合商社って何をやっているか分からないですよね。でも必ず新規産業やビジネスチャンスのあるところでは姿を現して大きなビジネスを展開していく。そういう業態は、これからも時代の潮流に合わせながら存在し続けていくでしょう。
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