技術と企画力の両輪でモバイル業界を支える--エイチアイの次の一手 - (page 2)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:加藤さこ
2007年06月14日 14時45分

人と人とのコミュニケーションをPC上に持ち込む

――エイチアイ設立の経緯を教えて下さい。

 エイチアイは1989年の4月に創業しました。創業者は私ではなく、私が仕事を通じて知り合った慶應義塾大学の学生でした。しかし、学業が忙しいという理由ですぐに経営を退いたため、私が引き受けました。

 創業当時は、オープン系と呼ばれていたワークステーションやPCに関わるシステムの受託開発が中心でした。また、プログラミングには自信があったので、企業のエンジニアを対象としたセミナー業務も行っていました。

――3Dレンダリングエンジンに目を向けたのは、いつ頃からですか。

 PC上でのコミュニケーションのサポート、ユーザーインターフェースへのこだわりは、創業時から持っていました。

 コンピュータには無限の可能性を感じていたものの、その使いにくさのためにフラストレーションを感じていました。社名の「エイチアイ」には、ソフトウェアの存在を感じさせないくらい気軽に使えるものにしていきたいという思いを込めています。「ヒューマン・インターフェース(Human Interface)」の頭文字を取ったもので、PCに気楽に向かうという意味で挨拶の「ハーイ(Hi)」から名づけました。

 私はNECの子会社である関西日本電気ソフトウェアに入社して、NEC東京本社に2年出向したのですが、そのとき、インターユーザーフェースのパートを担当し、毎日どんなユーザーインターフェースが良いのか考えていた時期がありました。そのため、エイチアイ創業時から人と人とのコミュニケーションとPC上でのコミュニケーションの違いに着目していました。

 PC上でのコミュニケーションは文章が主体になります。一方、人と人が対面するコミュニケーションは、言葉で伝える部分はほんの一部。身振り手振り、言葉の抑揚、顔の表情など、さまざまな感覚をフルに活用して伝えようとしているわけです。これをPCに持ち込むことはできないかと考え、「感覚」に代わるものとしてマスコットを登場させることを思いつきました。

 1994年頃から経営にゆとりが出てきて、PCのデスクトップ上に3Dのマスコットキャラクターが出てきて動くというリアルタイム描画エンジンの開発に着手していきました。

 当時のPCは処理速度が非常に遅かったので、ソフトウェアだけで3Dレンダリングをやるのは難しいという声もありました。しかし、工夫して3Dエンジン「MascotCapsule」のPC版を開発し、デスクトップ上に犬が飼える「Dear Dog」や3Dのキャラクターが動き回る「Desktop Character」など、さまざまなソフトを作りました。その後、ゲームのインターフェースに面白さを見出し、1995年からゲームの開発へシフトしていきました。ゲーム業界の主要な方とはこの時期から仲良くなり、関係を深めていきました。今も密接な関係を築いています。

――それがなぜ携帯電話向けになったのですか。

 1999年にiモードが登場し、処理速度の速い携帯電話が登場しました。この頃の携帯電話のCPUは24MHz程度。1994〜1995年頃のPCが33MHzくらいなので、PC版で最初に作ったマスコットが携帯電話で動かせるのではという考えに至り、開発に着手しました。そして2001年、J-フォンのJ-SH07に採用され、携帯電話初の3Dグラフィックソリューションエンジンとしてデビューしました。ここから一気に事業は携帯電話向けにシフトし、ゲームの開発もゲーム機向けからモバイル向けになりました。

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