「単なるEC」からの脱却を--「ZOZOTOWN」のスタートトゥデイが考えていること - (page 3)

インタビュー:鳴海淳義(編集部)、文:加藤さこ2007年05月11日 20時22分

「ありがとう」でCSRに注力

──「ZOZOARIGATO」は、どういう経緯でできたものなんですか?

 社内にはCSR部門があり、3人の専属スタッフが会社が社会に存在する意味、何ができるかを常に考えています。そこで行き着いた答えの一つが「ZOZOARIGATO」なんです。最初は環境保護活動や人道支援活動を考えていましたが、ひとつの分野にフォーカスして取り組んでいくのはちょっとZOZOらしくないなという気がしていました。何をやるにしても思いやりがあれば、環境問題も人道問題も自然に考えるようになると思います。人が誰でも持っている優しさに改めて気づいて欲しい、それがこのサービスを立ち上げた想いです。「ありがとう」と言われて不愉快なことってないじゃないですか。改まって伝えづらい「ありがとう」を伝えることで、優しさや思いやりが呼び覚まされると思うんです。そのきっかけになればいいなと始めたのがこのサービスです。

 ありがとうのメッセージが1回流れるたびに10円が国際NGO団体に当社負担で寄付されます。ありがとうという気持ちを伝えながら、寄付までできるという企画です。

──成長段階の企業でCSRを重視するのは珍しいと思うのですが。CSRは大企業が取り組むというイメージがあります。

 うちの規模の会社でCSRに取り組んでいる企業はまだまだ少ないかもしれませんね。でも、今後は増えると思いますよ。若い世代の社長さんはこれからの社会に何らかの形で還元していきたいという想いを持っていると思います。そうであると信じたいですね。

 他にも地域貢献の一環として、幕張周辺に住むスタッフには2〜3万円の手当てを支給しています。ただの住宅手当というのではなく、地域への貢献。会社のある幕張に、利益を還元してくださいという意味が込められています。ですから、住宅手当ではなく「幕張手当」という名前なんですよ。結果、168人中、約1/3のスタッフが幕張に住んでいます。スタッフだけでなく家族も住む、友達も住む、そういった洋服好きな若者達がどんどん幕張を変えていけるといいなという想いもあります。

──設立当初から社会貢献は考えていましたか?

 利益を出し続けてやっているだけでなく、社会に還元していく取り組みにはずっと興味がありました。こういった取り組みは、若い会社でやらなければと思います。個人の責任も大事ですが、企業の責任はもっと大きいと思います。企業のやり方ひとつで、個人の取り組みが無駄になってしまうんです。個人の集まりの企業が個人の想いを台無しにしては、企業の存在価値がありませんね。

──会社が大きくなると理念を社員全員に伝えるのは大変になりませんか?

 リクルーティングの時点で、企業理念を話して、賛同して手を取り合って一緒にがんばれる人だけ来て、という採用方法を取っています。選考段階で共有できているので、大変と感じたことはありません。スタッフとなって会社に入ると、まわりの仲間がひとつの方向を見ているので、特に僕が頻繁に語りかけるわけでなく、末端のスタッフまで自然に伝わっているんだと思います。

単なるECサイトからの脱却を目指す

──会社の今後の事業目標を聞かせてください。

 「単なるEC」からの脱却。EC専攻で取り組んできたので、世間的にはZOZOはEC事業者として捉えられているかと思いますが、もう少し総合的にやっていきたいです。ZOZOに行くと楽しい、心が休まるというサイトにしていきたいです。

──ブランド、ショップの受け皿はいっぱいにはなりませんか?

 ZOZOTOWERは横でなく、上にもどんどん伸ばせます(笑)。大丈夫ですよ。

──企業としての中期的な目標は?

 僕らがやりたいことは、世界、地球規模で考えていくこと。取り組んでいくことは、社会にとって良いことかどうかを判断しています。目先の利益が出るかは大した問題ではなく、それが人々に笑顔を与えることができる事業なのかというのがキーなんです。

 事業単位でやりたいこと、取り組んでいることはたくさんあって話しきれませんが、これだけはやりたくないということはひとつあります。嘘はつきたくない。正直でありたいと思います。

──最後に、起業を考える人、IT系の企業で働きたい人に対してメッセージをいただけますか?

 リクルーティングのとき、新卒の学生さんには何のために働くのかと聞いています。これは深いテーマなので、必ず問いかけています。何の仕事をするかというよりも大切なことです。技術者だったら、何のために技術を身に付けたいのか、その技術によってしたいことが何なのか。それを考えれば、行き着くところは同じような気がします。気付けるか気付けないかでだいぶ違うと思います。僕は、自分のすることが誰かの役に立っていれば、それだけで充分だと思っています。そう思うことで困難なことも乗り越えていけるんだと思います。

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