ベンチャースピリットは「アンチゆとり教育」から-- NICT×高専×jig地方発の取り組み(後編) - (page 2)

文:加藤さこ インタビュー:島田昇(編集部)2007年03月08日 08時00分

プログラムのアイデアは「頑張る人」から募る

--本プログラムは今後、どんな活動をしていくのかを教えて下さい。

木村氏:報道発表から、実際に受け付けるのは新年度の4月以降になります。実践に当たっては、我々NICTではよくわからないところがあるので、各高専のみなさんのアイデアを尊重したいと思っています。

 プログラムに「頑張る高専学生」と命名したのは、「頑張る」というところに期待を込めているんです。今、日本は頑張らない風潮が強い。若い人は、「頑張っても仕方がない」と思っている人が多いですよね。教育する側でも、頑張る子だけを奨励すると、頑張らない子をつくると考えてしまう。そうした悪平等主義がはびこってしまうんです。

 これからは、頑張る人を褒め称えたい。ですから、頑張る人達の積極的で独創的なアイデアを出していただきたいんです。

--具体的にはどのようにして高専のアイデアを尊重するのですか。

画像の説明 福井工業高等専門学校教授(応用物理学)で副校長の太田泰雄(理学博士)氏

木村氏:アイデアを伺って相談しながら進めていく予定です。我々は東京にしかいないので現場のことはわからない。組織で地方の支部があるので、そちらと高専と連絡会を開いて意見交換をしていきたいです。

--というと、全国で共通したプログラムにはしないということですね。

木村氏:全国統一はないです。地方のカラーがでるものがいいと考えていますから。我々ができるメニューを提供して、選んでもらうのが良いと思います。メニューから取捨選択してくれればいいです。実施は6月以降にはなるのですが、できるだけ速く実施するために4月から受け付けていきます。

--高専を支援していこうという企業は多いんでしょうか? また、プログラムがうまく動くか、問題点はありませんか?

木村氏:日本は好景気になってきて技術者を獲得するのが難しくなってきています。ぜひ参加したいと手を挙げるベンチャーは多いと思うので、その点は心配はしていません。すでにネットワークからVB、VCや有識者に登録していただいています。また、プログラムが実施されれば、新たに登録してくれる人も増えてくるでしょう。

--未熟な若者がマネーゲームを企てる支援をしてしまうような危険性はあり得ませんか。

福野氏:いえ、その対極にあると思います。技術先行で伝統産業の職人を育てて、自らの製品を直販することを教えるという感じかな。起業するのは、職人の気風を高めることができると思うんです。何もないものを、さもあるように見せるのがベンチャーではないですからね。

 このプログラムをきっかけに、正しいベンチャー像が広がればいいと思います。「ベンチャー企業、いいんじゃない?」と親からも言ってもらえる環境ができればいいですね。これはずっと先の話になれそうですけど。

--将来的には高専の社会的評価を高めるというビジョンはあるんですか?

太田氏:私は高専機構の人間ではないのですが、NICTには高専を支援していただいてありがたいと思っているんです。学生のそばにアントレサポートセンターを作り、支援いただくことで、学生達は自分の研究、学習の目的を知ることができます。それで研究が進めば一番いいと思っています。

福野氏:私が勝手に考える将来像は、みんな大学が高専なればいいんじゃないかと(笑)。高専の技術者のパフォーマンスは認知されています。これを技術だけに留めるのはもったいないです。法学でも経済学でも、中学を卒業するときに道が決まっているのなら、5年間みっちり勉強して、パフォーマンスをあげてもらう方がいいのではないかと思うんです。高専を出て、すぐに現場の第一線で働く人間を作ったほうがいいでしょう。

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