ネット業界の老舗、ネットイヤーが作り出す次の領域

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:坂本和弘
2006年10月16日 08時00分

 インタラクティブメディアの特性を活かしたマーケティング業務、および新規事業開発を支援しているネット業界の老舗企業のネットイヤーグループが9月、ウェブサイトの制作、運用に特化した100%子会社、「ネットイヤークラフト」を設立した。

 ネットイヤーグループは、インターネット創生期の1993年に、米国における電通国際情報サービスのマルチメディア&インタラクティブメディア部門として活動を開始。現在では、Eコマースサイトやコーポレートサイト、携帯電話向けサイトなどの設計から構築、運用までを広く請け負っている。

 最近では、9月13日にリクルートが開始した、雑誌のようにパラパラと地図と写真を見ながら店舗や場所探しができる地図情報サービス「スゴイ地図」の開設を支援した。

 ウェブサイトの制作やコンサルティングなどを古くからしてきたネットイヤーグループが、なぜ今になって、ネットイヤークラフトを設立したのだろうか。

 ネットイヤーグループ取締役兼SIPS事業部長の佐々木裕彦氏と、ネットイヤークラフトの代表取締役社長に就任した福田和之氏の両名に、新会社を設立した理由やネットイヤーグループ全体の今後の戦略展開などとともに、ウェブ業界をとりまく変化について話を聞いた。

--まず、ネットイヤーグループの現状を聞かせて下さい。

佐々木:当社は、古くからクライアントに対するネット戦略のコンサルティングやマーケティング支援などの事業と並行して、インキュベーション事業やCRMパッケージの提供などをやっていました。ただ、2003年に事業の見直しを図り、インキュベーション事業を手がけていたナレッジキャピタル・パートナーズは2004年にネットエイジグループと経営統合しています。当社はクライアントの事業成長を支援するために、インターネット技術をベースとした戦略的なマーケティングサービスであるSIPS(Strategic Internet Professional Service)事業に注力しようということになりました。

 2003年には、東京証券取引所第一部に上場しているシステムインテグレータのソランから資本参加を受け、現在はウェブのコンサルティングや企業のウェブサイト制作、ブランディングなどを中心にインタラクティブマーケティングを総合的に支援する業務を展開しています。

--現在の顧客の構成は。

佐々木:顧客としては、KDDIやジブラルタ生命、セコム、Gapといった大企業がクライアントの90%以上を占めています。 特に、5年ほどのお付き合いになるKDDIの業務は、数千ページにも及ぶ企業サイトの制作、運用、新サービスが出た時のオンラインプロモーション、ブランディングのお手伝いなど、多岐に渡っています。

--2000年ごろと比べ、ウェブビジネスはどのように変化してきていますか。

佐々木:2005年あたりから、企業がネット事業に投資する額が明らかに増えてきました。それと、昔作ったウェブサイトをもう一度作りなおしたいという要望も増加傾向にあります。昔は「とりあえずウェブサイトを作っておけばいいや」という意識だったものから、徐々に、「戦略フェーズの時点から力をいれ、しっかりとしたウェブサイトを制作したい」という意識に変わってきましたね。

--企業が変わってきたというのは、ウェブが企業のPRやマーケティングに有効だということがわかってきたということでしょうか。

佐々木:そうだと思います。電通の調査によれば、日本の広告市場規模は約6兆円とのことですが、ウェブ広告やウェブマーケティングに企業が使う金額は年々増えています。そのため、現在市場の60%以上を占めるマスコミ4媒体(新聞、テレビ、ラジオ、雑誌)の比率は年を追うごとに薄まってきていますね。

--新会社のネットクラフトはネットイヤーグループの中でどういった役割を担うのですか。

佐々木:当社のウェブサイト構築のプロセスには、1)戦略策定、2)設計デザイン、3)制作、4)運用という4つのフェーズがあるんですが、このうち、制作と運用の部分を新会社の方で取り組んでいこうと思っています。もともとネットイヤーでは戦略策定から設計デザインまでを手がけていて、制作や運用は外部に任せていたのですが、それを内部で持つことにしたんです。顧客の窓口業務は引き続きネットイヤーが行っていきます。

--ネットイヤークラフトを設立した狙いは。

佐々木:大きく言って、2つの理由があります。1つは業務量の増大への対応、もう1つは高い品質管理です。

 現在、企業サイトに掲載される情報量が急増し、それに伴うページ数も膨大なものなってきています。同時に、高い品質管理も求められてきている。しかし、このように企業の需要が増えてきている状況にもかかわらず、それらの要求に対応できるクリエーターの絶対数が足りていません。質の高いものを求めるならばなおさらです。企業がネットの重要性に気づき、ウェブ上での情報発信を増やしていきたいと思っていても、数と質の両方の面で、それらを満足させることが難しいのです。一言でいえば、全体的に非常に需給バランスが悪い。そこで当社は、供給する人材を質と量を確保し、量と質の2つの視点で増大する需要に対応するために、新会社を設立するにいたりました。

--今後ネットクラフトは、ネットイヤーグループからの仕事だけではなく、外部からの仕事も請けていくんでしょうか。

福田:当面は、ネットイヤーグループからの仕事に注力していく予定です。

--現在ネットクラフトの社員数は15人ということですが、今後増やしていく予定はありますか。

福田:そうですね。来年で30人、再来年で50人といったペースで増やしていこうと計画しています。

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