CNET Japan Live 2016

アイトラッキング技術が産業にもたらす新たな世界とは --無意識の動きを可視化する

 朝日インタラクティブは2月18日、東京オリンピックが開催される2020年を契機として各産業や業界がテクノロジによってどのようなパラダイムシフトを遂げるのか、2020年以降の未来に向けてどのようなイノベーションが世の中を変革させていくのかを考えるイベント「CNET Japan Live 2016 Target 2020~テクノロジーがもたらすパラダイムシフト~」を開催した。

 展示会場で行われたミニセッションでは、人の目の動き=どこ視線を向けているのかという情報をリアルタイムに記録してマーケティングなどに活用するアイトラッキング技術を開発、提供しているトビー・テクノロジー代表取締役社長の蜂巣健一氏が、「熟練者の目を追う!--アイトラッキングでモノづくりの現場を変える--」と題したプレゼンテーションを開催した。

トビー・テクノロジー代表取締役社長の蜂巣健一氏
トビー・テクノロジー代表取締役社長の蜂巣健一氏

 蜂巣氏はまず、同社が開発しているアイトラッキング技術について紹介。アイトラッキングは、人がどこを見ているのかを測定する技術で、中でも同社のアイトラッキング技術は人の興味関心と相関性の強い「中心視野」と呼ばれる部分に注目し、「角膜反射法」によって眼球の位置を測定しているという。角膜反射法とは、LEDを用いて眼球に赤外線を照射し、眼球の動きをアイカメラが解析する技術。これによって目がどこに注目しているかをデータ化できる。

 なお、同社のアイトラッキング技術はグローバルでトップシェアを獲得しており、学術研究やマーケティングリサーチ、作業の効率化や技術継承、遠隔サポートといったリサーチ目的での活用や、視線だけで操作できる障がい者支援のための福祉機器、視線の動きで操作する電子機器などのインターフェースに採用されている。

  • 「見る」という行動における周辺視野と中心視野の違い

  • アイトラッキングに採用している角膜反射法と呼ばれる測定方法

 蜂巣氏はこうしたさまざまな活用シーンの中から、マーケティングリサーチでの活用と、技術継承するための活用を取り上げ、その仕組みや効果について具体的に紹介した。

 トビー・テクノロジーはこれまで、ウェブサイト、映像、スマートフォンなどを視聴する際の目の動きを計測し、ユーザビリティの改善などに活かす非接触型のアイトラッキング製品と、店舗、商品パッケージ、作業者の視線など空間を見るときの目の動きを計測して空間デザインや商品開発に活かすウェアラブル型のアイトラッキング製品をリリースしている。また、調査サービス(課題・抽出&仮説立案から会場設営やリクルーティングを含む実査データ処理、数値データ分析レポート)も提供している。

 その中でも、ウェアラブル型アイトラッキング製品「Tobii Pro グラス2」は、店舗内で来店客がどこに注目しているのか、陳列棚のどのゾーンにある商品に見ているのかといった来店客の無意識な行動データを計測してマーケティングに活用できるという。また商品そのものやそのパッケージ、商品コンセプトを書いたシートなどを見る視線をトラッキングすれば、消費者が商品を選ぶ際にどこに注目しているのかも計測できる。資料やチラシなどのデザインやインターフェースの改善に活用することも可能だ。

 蜂巣氏は、こうしたマーケティングリサーチの意義について、「言葉を介して行われるインタビューやアンケートでは、記憶を遡る際に回答者の想像や脚色といったノイズが入ることがあるが、アイトラッキングでは無意識に注目した点や記憶していないこと、ノイズが入らない被験者の本音を探ることができる」と説明。従来のマーケティングリサーチからは知ることのできない消費者の無意識な部分を探ったり、またアイトラッキングから得られた視線データを年齢、性別や嗜好性といった属性別に比較して、視線の差分をチュ出、分析してみることで、有益な気づきを得られることがアイトラッキングの価値であるとした。

  • 人の無意識や本音を探ることがアイトラッキングの意義

  • 商品のどこに注目しているかを探ることで、マーケティングに活かせる

 一方、技術継承という点で蜂巣氏は、アイトラッキングは人が無自覚、無意識に持っている暗黙知を視覚化し、共有、継承ができる形式知へと昇華できると説明。例えば、熟練の技術者がモノづくりの技術継承をする際に、映像に記録して共有ができる“見ればわかること”、技術継承する人が説明することで伝えられること、といった情報は、可視化、言語化ができる。これにアイトラッキングを加えると、技術継承する人が作業中に自覚なく行っている目の動きや、無意識にどこに注意を払って作業をしているかといった情報をも可視化することができる。ここから得られた技術を継承する人が追認、補足説明することによって、技術の共有がより深いものになる。

  • 無自覚、無意識に作業者が行っている暗黙知を可視化することができる

  • 熟練作業者と非熟練作業者の目の動きの違いを比較することで、ノウハウを継承できる

 また、こうした視線の動きからわかる暗黙知を継承するという点では、スポーツ分野の強化、育成にも活用できるという。例えば、テニスプレーヤーがプレー中にどのような視線の動きをしているのか、サッカーのペナルティキックにおいてゴールキーパーはキッカーのどこに視線を向けているのか、野球の打者がピッチャーの動きのどこに注目してボールを待っているのか、などアスリートの目の動きからわかるノウハウを選手の育成に活用することができるという。こうしたさまざまな分野における人材の育成にもアイトラッキングは活用できるのだ。

  • バッターがピッチャーのどこに注目しているのかを計測することで選手の育成に活用できる

  • アイトラッキングを活用することで、ノウハウのマニュアル化やトレーニングの効率化が可能になる

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