ブイキューブ、ドローン参入の狙い--間下社長インタビュー

 2020年に開催される東京オリンピックがもたらす日本全国の経済波及効果は、少なくとも数兆円と言われている。過去を振り返っても、オリンピックとテクノロジの発展は密接な関係にある。世界的にスマートフォンがあたりまえに使われるようになった今、テクノロジを活用したさまざまな取り組みが、2020年をターゲットに進んでいる。果たして、生活、働き方、モノづくりなど、各産業や業界はどのようにパラダイムシフトしていくのか。

 今回のテーマは「ドローン」。日本では4月の首相官邸への落下事件以来、無人航空機(ドローン)を規制する動きが強まっている。その一方で、災害時の被災状況確認や消火活動、インフラの監視、警備や宅配など、さまざまな分野での活躍が見込まれているのも事実だ。長年、ウェブ会議システムを提供してきたブイキューブも、そんなドローンに大きな可能性を感じている。


ブイキューブ代表取締役社長の間下直晃氏

 同社は1月にドローンの商用利用に関する技術を開発するRapyuta Robotics(ラピュータ)に出資。ドローンで撮影した映像をリアルタイムにウェブ会議システム「V-CUBE」上で視認できるようにする取り組みを進めている。これにより、老朽化対策が課題になっている橋梁やトンネルなどのインフラ点検、人の立ち入りが容易でない高所や煙突があるプラント保守、災害現場での被害状況確認、ビルのフロアの無人警備などを、ドローンで実現したい考えだ。

 地方自治体との連携も始めている。8月4日には神奈川県の「公募型『ロボッ卜実証実験支援事業』」に採択されたAAAの「水難救助マルチコプター」に、ブイキューブが開発するドローンの自動飛行やウェブ会議システムを搭載すると発表。8月12日には、NPO情報セキュリティ研究所とともに、ドローンを活用したリアルタイムな映像による災害対策やインフラ点検に関する実証実験を実施した。

 ドローン事業に参入した狙いや、自治体との取り組み、今後のロードマップなどを、ブイキューブ代表取締役社長の間下直晃氏に聞いた。

--ドローン事業に参入した理由を、改めて教えて下さい。

 私たちはこれまでビジュアルコミュニケーションサービスを提供してきましたが、これは人と人だけに限る必要はありません。これからは人が行けないところに代わりに行くみたいなところで、ビジュアルコミュニケーションを生かせる可能性は十分にあります。すでに我々のユーザーの中には、iPhoneやタブレットで現場から中継するような使い方をしている方もたくさんいますから。


ウェブ会議システム「V-CUBE ミーティング」

 土砂崩れが起きているところに人を見に行かせて、本当に事故が起きて亡くなっている方もいます。そういったことを含めて、日常的に「ちょっと見てこい」ということは、皆やっていると。それなら、ボタン1つで見に行ってくれるドローンがあるじゃないかと。あとは、どうすればドローンが人の代わりにパッと見に行って、安全に現場の様子をリアルタイムに把握できるようにするのかと考えた時に、ビジュアルコミュニケーションとつながったということですね。

 ドローンを使って空撮する方法もあると思うのですが、そこは我々のやるところではなくて、コンピュータ制御で、人の手を介さず、かつ安全・安心に運用できる仕組みを作っていこうとしています。自分たちでやっていると分かるのですが、ドローンの高度な操作を人が習得するには結構な時間がかかります。やはりコンピュータで制御するのが一番安全なんです。制御システムについては、出資先のRapyuta Roboticsのテクノロジを採用していきます。

--これまで培ってきたウェブ会議システムのノウハウはどのように生かされるのでしょうか。

 インターネットを介して、遠隔で映像をやりとりしたり、制御したりするところは、まさに我々の強みです。たとえば、災害が起きた際に現場の様子を見たいのは1つの拠点だけではありません。災害対策室や国土交通省など、多くの関係者が見なければいけないけれど、皆が同じ場所に集まることはできない。そういう時に、我々のウェブ会議の仕組みが使えるわけです。いま、リアルタイムに映像を見られて、コントロールができるものをソリューション化しようとしているところです。

 映像についても、環境が悪い中でやりとりするようなテクノロジは持っていますから、ある程度帯域を確保できればHDクオリティで見られます。通常のドローンだと録画して戻ってきたものを回収すると、見たいものが撮れていないこともあります。そうすると、「もう1回行け」みたいなことになるわけです。そこをリアルタイムで見られるのは大きいですよね。見たい人はPCの前にいればどこでもいいので、たとえば中目黒の様子を見たい時に、別にアメリカにいてもいいわけです。

 あとは安全性をどう確保するか。先ほど話したように、人が操作すると結局、事故が起こります。いくら慣れていても、人なのでどこかでミスをします。コンピュータはそこのところで圧倒的に優位性が高くて、何かが意図的にぶつかってきた場合は話が別ですが、自分からぶつかることはまずないので、落ちる可能性は非常に低いです。なので、いずれは手動で飛ばすのは禁止になるかもしれませんね。

--どのようなシーンでの活用を想定していますか。また、2月から実証実験のパートナーを募集していますが、企業や自治体からの引き合いは。

 製鉄所や発電所などでドローンが朝昼晩に飛んで定期巡回するといった使い方はできますね。たとえば造船所なんかは山手線の渋谷駅くらいの広さがありますので、敷地内を移動するだけで30分とか1時間かかってしまいます。また、毎回足場を作らないといけなかった高所などもドローンなら確認できるので、品質管理や工程管理も楽になります。


ドローンの活用イメージ

 市区町村を対象にした、災害対策や防災、防犯などにも活用できると思っています。火災が起きた時には、ドローンが一番早く現場に駆けつけて状況をすぐに伝えられます。特殊なカメラを使えば温度も分かるので、火事の種類も大体把握することができます。いまは、現場に行って足りなかったら応援を呼んでいますが、ドローンならすぐに必要な人数などを確認できるので、警察や消防での可能性は大きいですね。

 そのほかにも、水難や山などでの人命救助や、農業IoTなど活用方法は多岐にわたります。これまで実証実験を続けてきた中で、どういうところにニーズがあるのかが見えてきたので、それをソリューションとしてまとめあげて展開していこうと思っているところです。

 パートナーについては、いま40近くの企業や自治体と話を進めています。もう見積もりを始めている市区町村や工場もあるので、ものが動いてくれば、初歩的な段階から結果がついてくると思います。我々もまだまだ準備段階にあり、実証実験を一緒にしているところなので、実際に販売を開始するのは2016年の夏頃になる予定です。

--ドローンの耐久性やバッテリ駆動時間はどうなのでしょう。

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