電子書籍ビジネスの真相

芳林堂も破産、書店閉店が止まらない日本--書店復活の米国との違いとは? - (page 3)

林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)2016年02月26日 15時45分

「書店はもうからないビジネス」は本当か?

 経営の面から見ると、書店ビジネスの現状はどうなっているのでしょうか?

 下記は、「情報メディア白書」が紹介している(元データは日本経済新聞出版社刊『日経MJ トレンド情報源』)、書店売上トップ10のデータです。

 ここで1点、お断りがあります。「書店」とは言っても、本を売る事業だけでなく、文具・雑貨販売、レンタルビデオ、カフェなどを手がけている企業も多く、中には、本や雑誌販売以外の事業から得ている売り上げの方が、出版物販売よりも大きな割合を占めている、つまり「多角経営」や「書店がむしろ副業」の企業も少なくありません。

 その場合、ある閾(しきい)値を設定し、「書店は副業である」として、書店ランキングから除いてしまう考え方と、そうではなく企業全体の売り上げを「書店」の売り上げとして捉える考え方の2通りがありえます。

 このランキングは後者の考え方に立っています。前者の考え方に立ったランキングに、日販のまとめたもの(前掲の「出版物販売額の実態」)がありますが、そこではカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、ブックオフ、ヴィレッジヴァンガードは除外されています。

 ともあれ、ここではより広くとらえる立場で見てみましょう。「売上高」ボタンだけでなく、「経常利益」「経常利益率」ボタンを押してみてください。

 紀伊國屋書店、ジュンク堂書店、有隣堂書店など「書店メイン」のイメージに強い企業が、経常利益や経常利益率では、「多角経営」のイメージの強いCCC、ブックオフ、ヴィレッジヴァンガードの後塵を拝していることがわかります。

 「書店はもうからない」と言われることがありますが、「他の事業を組み合わせて多角経営をしている事業体は儲けている」。ウラを返せば、「専業の書店は厳しい」ということでもあります。

 丸善ジュンク堂を擁する、丸善CHIホールディングスの業績推移は、以下のようになっています。

 丸善CHIと同じく大日本印刷のグループ会社で、郊外型書店として一世を風靡した文教堂HDの業績推移は、こんな感じです。

 多言を要しないでしょう。その一方で、書店以外の事業も幅広く手掛けるCCCはどうかというと、非上場なので細かい経営数値は公開されていません。ただ、出版物の売り上げは、次のように右肩上がりを継続しています。

 非常に雑駁で、ツッコミどころ満載ではありますが、ここまでに取り上げた書店の印象を立地と業態でまとめてみると、次のようになります。


 この図は「過去のイメージ」をまとめたもので、実際には、たとえば紀伊國屋書店が積極的にショッピングモールへと出店を進めるなど、現在進行形の事態を反映しているとはいえないところがあります。また、新古書店であるブックオフを新刊書店と同じ水準でとらえていいのか、という問題もあります。

 とはいえ、こうして図にしてみると、どうやら、現在比較的苦しくなっているのは、右上の「駅前」「専業」の本屋さんであって、左や左下の「兼業」「郊外」の書店は比較的堅調なのではないか、という見方も成り立ちます。

 要するに、「書店」という業界全体が苦しいのではなく、立地や業態によっては、比較的うまくやっている企業もある、ということです。そして厳密ではありませんが、どうやら「兼業」で「郊外」の書店チェーンにはまだ可能性がありそうだ、ということもいえそうです。ここでいう「郊外」には、いわゆるロードサイドだけでなく、ショッピングモールなども含みます。

 では、「専業」「駅前」書店には、未来はないのでしょうか? どうやら、そうでもないかもしれません。というのは、米国で「書店復活」とも言える動きが起きているからです。

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