「書店」業界は、そんなに厳しい状況におかれているのでしょうか? まずは全国の書店数と坪数の推移を見てみましょう。
書店数は2014年度に、1万4658店。書店の総坪数は、131万2243坪。2003年度以降で見ると、書店の「数」が減少し、2014年度に史上最低となる一方で、逆に「総坪数」は増加を続け、2013年度にピークを迎えていることがわかります。
なおこの資料では、坪数の報告があった店だけの面積を集計しているため、偏りがある可能性がありますが、大手取次の日販がまとめた同様の資料でも、坪数のピークが前倒し(2010年度)となっているほかは、ほぼ同じ傾向を示しています(「出版物販売額の実態」2015年版)。
これが何を意味するかというと、「書店」の「数」は確かに減っているけれども、その分、大型書店の進出も続いており、「本を売る店の総面積」はさほど減っていない、ということになります。少なくとも「本を売る店の総面積」で見れば、「書店衰退」というのは、実態に即していないイメージであることになります。
大規模小売店舗立地法の施行(2000年)以来、商業の中心地が鉄道の駅前やその周囲の旧来の商店街から、国道、県道沿いの郊外へと移り、伝統的な商業地が衰退し「シャッター通り」となったことが各地で問題化しています。このグラフからは、「書店」も同じ変化に巻き込まれていることが伺えます。
しかし、書店はただモノを売っているのではなく、地域の知的水準を維持し、文化へのアクセスを保証する特別な役割を負っているとも考えることができます。その観点から時折指摘されるのが、地域内に1つも書店がない「書店空白自治体」の問題です。次のグラフを見てください。
「空白自治体数」のボタンと「空白自治体率」のボタンを押して、それぞれの数の変化を見てください。
「空白自治体数」は、単純に各都道府県内の書店のない自治体の数をまとめたものです。「空白自治体率」はその数を各都道府県内の総自治体数で割った率です。
「数」では北海道の47がトップですが、「率」では沖縄、長野の46%、45%がトップとなります。
この情報の出所は書店データをまとめている出版社のアルメディアで、毎日新聞が2015年に記事にして話題となりましたが、その意義については、少し引いて考える必要がありそうです。
というのは、いわゆる「平成の大合併」で、自治体の数はこの10年でかなり変動しました。これが「書店空白自治体」に影響している可能性があるからです。
「大合併」を積極的にした都道府県では、たとえ車で1時間も走らせないと行きつけないような書店が自治体内にあっても「書店空白自治体」とみなされない一方で、「大合併」が盛んでなかった自治体では、旧来の小規模自治体内の書店が店を閉じてしまえば、「空白自治体」となってしまいます。
しかし、「地域に書店が1つもないのは寂しい」という気持ちは、1人の本好きとして筆者にもわかります。このデータは、そうした気持ちを裏付ける数字として見るべきなのかもしれません。
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