「電子書籍は嫌い」と言われるとき、その理由としてよく挙げられるのが「電子書籍は読みにくい」というものでした。
一口に「読みにくい」といっても、いろいろな意味がありますが、ここでは物理的に「見にくい」、そのために「目が疲れる」という点に絞って、いくつかの調査結果をご紹介しました。
それによると、こんなことが言えそうです。
今後、技術が進めば、今よりさらに、見やすく疲れにくい表示デバイスが出現することでしょう。
その時まで待つか、あるいはやはり現状に不満だから、敬遠しつづけるか――。
これは個人の選択の問題なので、筆者としては何もいえません。確かに「紙の本」は現在の「電子書籍」より、圧倒的にすぐれていることは間違いないのです。
そして、それは「本」にとって、よいことです。新聞、雑誌、音楽、映画、テレビ、ラジオなど、他の伝統メディアが雪崩を打つようにネットに飲み込まれ、旧来の仕組みが恐ろしい勢いで崩壊しつつある中、主要なメディアの中で「本」についてだけは、「紙」という旧媒体の優位性が、しっかり残っているということなのですから。
「電子書籍」がまだまだ「紙本」にかなわないということは、他のメディアと違って、「本」はまだまだネットに負けない、ということでもあります。
おそらく大きな流れとしては「ネット」へ向かっていくことは間違いないのですが、その移行期間は、まだまだ長く続くと見てよいでしょう。「本」には時間があるのです。これは、ほかにはないメリットです。
……と、ここまででだいぶ長くなってしまったので、「電子書籍が嫌われる理由」のうち、「その2:使いにくいから」「その3:紙の本が売れなくなってしまうから」については、後日、また改めて考えてみたいと思います。
ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
林 智彦
朝日新聞社デジタル本部
1968年生まれ。1993年、朝日新聞社入社。
「週刊朝日」「論座」「朝日新書」編集部、書籍編集部などで記者・編集者として活動。この間、日本の出版社では初のウェブサイトの立ち上げや CD-ROMの製作などを経験する。
2009年からデジタル部門へ。2010年7月~2012年6月、電子書籍配信事業会社・ブックリスタ取締役。
現在は、ストリーミング型電子書籍「WEB新書」と、マイクロコンテンツ「朝日新聞デジタルSELECT」の編成・企画に携わる一方、日本電子出版協会(JEPA)、電子出版制作・流通協議会 (AEBS)などで講演活動を行う。
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