外食嫌いのミャンマーに「自転車フードデリバリー」の波

 周辺諸国に比べ、ミャンマー人はあまり外食をしない。実際、外食が盛んな同じASEAN内のベトナムに比べ、外食産業の規模は10分の1以下という分析結果もあるほどだ。

 その理由については諸説あるが、敬虔な仏教徒であるミャンマー人は基本的に、食事はもてなすものであってお金をとるものではないと考えているためという説が有力だ。そんなミャンマーで最近、フードデリバリーサービスが盛り上がりつつある。

「Food2u」のドライバー
デリバリーサービスの草分け的存在、「Food2u」のドライバー

 ベトナムの場合、ほぼすべてといってよいほどの飲食店がデリバリーサービスを行うのに対し、ミャンマー、とりわけヤンゴンで配達を行う店はきわめて限られる。これは、交通事情が大きく影響している。

 成人のほとんどがバイクを所有しているといわれるベトナムでは、バイクでの配達が容易だ。しかしヤンゴンでは、2005年に市街地へのバイク乗り入れを禁止。自転車は主だった通り以外は走行できるが、それではどこへ行くにも遠回りになり、中心部ではほとんど見かけない。かといって、民主化が進み始めた2011年からの中古車輸入規制の緩和で増えすぎた自動車は、常態化した渋滞にはばまれ、デリバリーには適さない。

 ということで、民主化が進むにつれて増加の一途をたどる飲食店は、配達サービスをほとんど行ってこなかった。そこへ登場したのが、自転車を使ったデリバリーサービスだ。自転車の走行が禁止されている大通りを避け、遠回りになっても路地だけを通って配達するという、ある意味、アイデア産業といえる。裏道を通ることで渋滞も避けられる点も秀逸だ。

派生的に誕生したFacebookのグルメページも評判に

 ミャンマー人に人気なのが、2015年1月に始まった「Food2u」。エリアごとに登録された飲食店リストで店を選ぶと表示される、メニュー一覧から注文する仕組みだ。店によるが、1回の注文につき2500チャット(約210円)前後の配達料がかかる。

飲食店メニュー
「Food2u」に掲載された飲食店メニュー

 現在の加盟店は、地元の若者に人気の、さほど高くない価格帯の店が50店舗ほど。サイトの表示は英語かミャンマー語から選べるが、加盟店の中にはミャンマー語のメニューしか表示しない店もある。

 同サイトはFacebookにもぺージを持っているが、ここでは加盟店の料理を毎日のように紹介。読者が「いいね!」を押したりコメントしたりすることで、一種のグルメサイトの様相を呈している。若者に人気が高く、ミャンマー版「ぐるなび」といったところか。

外国人人気から火がついた自転車デリバリーサイト

 一方、最近ぐんぐん知名度を伸ばしているのが「Yangon Door2Door」。2013年10月に立ち上げられたサイトで、主宰するのはミャンマー人とエジプト人の合弁企業だ。加盟店はFood2uに比べれば価格帯が若干高めで、外国人に好まれる店が多めとなっている。

「Yangon Door2Door」
「Yangon Door2Door」

 オーナーの1人である、エジプト人のシャディ・ラマダンさんは、自社の成長をこう語る。「社員10名、5台の自転車&ドライバー、加盟店7店で始めましたが、3年で社員15名、41台の自転車&ドライバー、加盟店は70店余りまで成長しました。注文は平均して1日150件ほど。多い日は170件ほどでしょうか」。

シャディ・ラマダンさん
ミャンマー以外の外国での在住経験はないというシャディ・ラマダンさん

 彼は、デリバリーサービスがこれほど急速に受け入れられてきた背景には、「デリバリーのファッション化があるのでは」と分析する。

 「ミャンマーには今、留学や海外での仕事から戻ってくるミャンマー人が増えています。在住外国人に加え、そういったデリバリーに慣れ親しんだ層が利用することで、ほかの若者たちにもデリバリーが欧米風のおしゃれな文化に映ったのかもしれません」。

配達料がかからないサイトもある「Yangon Door2Door」
配達料がかからないサイトもある「Yangon Door2Door」

 Yangon Door2Doorは英語でのみの表示で、当初、注文の90%近くは在住外国人からのものだった。それが今や、半数をミャンマー人が占めるという。元英領のミャンマーは英語教育に熱心で、中間層以上の家庭の子弟は英語が堪能なため、英語表示にもさほど抵抗がなかったのだろう。

 デリバリーのブームは、ミャンマー人を外食好きにする一助を担えるのか。今後の展開を見守りたい。

(編集協力:岡徳之)

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