ベトナムIT業界に起こる「オフショア疲れ」--対応を迫られる日本企業 - (page 02)

ネルソン水嶋2016年05月04日 10時00分

ベトナム人とうまく働くコツは?

 ここからはITから離れて、人材として捉えたときのベトナム人に迫ってみよう。日本人を基準としたときの、その特徴について関氏に訊ねてみた。「全体的に、ディレクション能力が低いと思います。指示待ちになる傾向があり、イノベーティブな発想や行動は起こりづらい。ただ、その分、1つのことを教え込んだら的確に実行する人は多いです」(関氏)。

 ほかにも、日本人同士でありがちな「あとはよろしく」といった相手の解釈まかせの指示はご法度。必ず、5W1H(When、Where、Who、What、Why、1How)をしっかりと伝えなければいけない。何事も過剰に信頼しすぎることはなく、性善説より性悪説で厳しく臨んだ方が長期的にお互いのためにもなるとのこと。

 「『これは分かる?』という限定質問ではなく、『あなたはどう思う?』という拡大質問をすると良い。日本人同士でも当たり前のことかもしれないが、言葉や習慣に壁がある分、お互いのイメージをより入念に共有しなければいけない」(関氏)。

 これは筆者の体験談だが、こちらの伝えたことを同僚が理解しているか気に掛かり、「今私が言ったことを繰り返してみてください」と伝えたところ、「どうしてそんなことを聞くのか」と機嫌を損ねさせてしまったことがある。業務上確認したいだけなのに相手のプライドを逆なでしてしまい、どうしたものかと頭を抱えた。

 「家族主義の傾向も強い。社内でも父親役と母親役を置くと、上手くことが運びやすい」(関氏)。これは、チーム内での序列が2番目の立場の人間が指示したことでも、1番目(父親役)の承認がなければなかなか動かないところがあるという。前述の「ディレクション能力が低い(自律性が低い)」という特徴の顕れなのかもしれない。日本の縦割り社会によく通じるところだが、これを「家族」の概念を基準として考えた方が良いだろう。

 彼らは承認プロセスのみならず、心の拠り所を会社に求める傾向にある。社員旅行に家族を呼んだり、休日も職場の同僚とパーティを開いたりするなど、ベトナム人にとって仕事とプライベートの境界線は曖昧だ。ベトナムの日系企業の間では、家族ぐるみで仲良くなるということが離職を防ぐ策の一環としても知られており、これはミャンマーやインドネシアではまず見られない特徴だという。

 ベトナムに進出する日系企業、特にIT企業にとって、本稿が少しでもお役に立てば幸いだ。国の発展が進み、オフショア開発の旨みは徐々に減るかもしれないが、日本に進出するという「手番」が回っているうちに動かなければ、向こうからやってくる可能性はゼロではない。

(編集協力:岡徳之)

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