“隠れ爆買い”する訪日タイ人を支えるWi-Fi・SIM市場--タイ人の本音とは

 2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人向けの観光ビジネスが盛り上がりを見せている。日本はもともと歴史が長く、また風光明媚な風景に恵まれているにも関わらず、この分野にはそれほど注力してこなかった。しかし、近年は海外、特にASEAN諸国からの観光客が増えている。

3年で3倍、急増する訪日タイ人観光客

 背景としては、主に「円安」と「訪日ビザの緩和」が挙げられる。円安により手頃感があることに加え、一部の国では2週間程度の短期訪問や指定旅行会社のパッケージツアーであれば、ビザが免除されるなど緩和が後押しした形だ。各国での中間所得層の増加や、スマートフォンによって情報収集が容易になったことも、これを助けているだろう。

 域内の国々のなかでも、日本との国交を樹立してから120年以上が経つ「タイ」からの訪日観光客が急増している。同国は、自動車産業など経済においても交流が盛んなほか、「一休さん」や「ドラえもん」などの日本アニメが現地で根強い人気を誇る、随一の親日国と言われる。

 2012年に年間26万人だった訪日観光客は、短期訪日ビザが解禁された2013年に45.3万人、翌2014年に65.7万人に増加。2015年は10月時点ですでに62.7万人となり、当年実績から算出した月次平均からすると75.2万人に上る見通し。3年前と比べ3倍にまで増加している。

 日本企業としては彼らをもてなし、安全に楽しく日本を旅してもらい、少しでも外貨を稼ぎたいところ。こう書くと、旅行業界だけが盛り上がっているように思えるが、実はそれを縁の下の力持ちとして支え、自らも業績を伸ばしているのがレンタルWiFi・SIMカード業界だ。

中国人だけじゃない、隠れ爆買いするタイ人

 タイにおいて、訪日タイ人観光客向けにレンタルWiFi・SIMカードを提供しているのが、日本でもこの業界に黎明期から従事しているJapan emotion代表取締役の村上浩之氏だ。同社はタイでは事業を開始してから2年でSIM市場の約50%を占めるまでに成長した。

Japan emotion代表取締役の村上浩之氏。日本でも一時期は関東圏で携帯電話販売店を15店舗運営していたほど業界歴も長い
Japan emotion代表取締役の村上浩之氏。日本でも一時期は関東圏で携帯電話販売店を15店舗運営していたほど業界歴も長い

 村上氏によれば、「『爆買い』といえば中国人だが、実はタイ人もひそかに爆買いしている」という。タイはご存知の通り数多くの日系企業が進出しており、タイ製ではあるものの日系ブランドの日用品は一般化している。そのため国内ではそれらを買い占める行為は皆無だ。それでもやはり、「”本物”の日本製を使ってみたい」と日本を訪れた際には買い物に励むらしい。

 さらに、リピーターも多いそう。日本政府観光局(JNTO)のバンコク事務所や大手訪日専門ツアーオペレーターによると、日本人でも知らないような隠れ観光スポットともいうべき、味のある田舎の訪問を希望する人もどんどん増えてきているという。実際、JNTOの出国時アンケートの結果によると、日本の再訪問希望者は実に90%以上。LCCの充実や、世界的なホテル予約サイトがタイ語でも使えるようになってきていることなどが背景にあるという。

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