クリエイターの逆襲--ウェブ業界全体の格を上げる「投資活動」を徹底せよ

Webマーケティングガイド2007年10月18日 13時00分

営業A君
「すみません、キャンペーンサイトの制作をお願いしたいのですが」

ディレクターB君
「了解しました。スケジュールはどんな感じですか?」

営業A君
「来週アップ予定です」

ディレクターB君
「・・・。キツイなぁ〜(また徹夜か〜)」

営業A君
「マス広告とのメディアミックス案件なのですが、マス広告の素材は今週末に入手する予定です。そちらの素材をベースに制作を進めてください。トーン&マナーは絶対に崩さないようにお願いします」

ディレクターB君
「今週末に素材入手ですか?来週アップということであれば今すぐにでも制作に入りたいんだけどな。アップ期間まで短いから素材の配置換えなどで対応するのが最善策かな」

営業A君
「まあ、やむを得ないですね」

 ウェブ系の広告を取り扱ったことのある方なら、誰でも一度はこうしたやりとりのご経験があるのではないだろうか?

 特徴は以下の2点だ。

1)制作物をアップするまでのリードタイムが恐ろしく短い。
2)実はデザイン性をあまり求められていない。

 1)については、多くの人たちのスケジュールが関係してくる話なのでいかんともしがたい。2)については、1)を基点としているものの、モノをつくるクリエイターにとっては致命的である。この業界においてクリエイターという肩書きで仕事をしていながらも、クリエイティブな仕事ができている人はいったい何人いるのだろうか?

 筆者は比較的長くこの業界に身をおいており、こうした議論というのは現場レベルにおいて課題として認識され議論されつづけてきてはいるものの、やはり劇的に変化するというようなことは今現在においてもないと感じられる。(劇的な変化とまではいかないまでも)ゆるやかに変化はしているのだろうか。しかし、想定していた以上に変化はゆるやかであると個人的に感じている。

 ウェブはその特性から紙や電波と比較するとボタンひとつで容易に作業が完了すると思われがちだ。広告に携わる多くの人にとって、ウェブは「便利な魔法の箱」。素材を入れると、制作物が完成して出てくるというわけである。

 素材をもとに切り張りして制作物を仕上げてみても、仕事としての一定の成果は認められるが、クリエイターとしてはどことなく物足りなさを感じ、高いモチベーションを維持していくことが困難になる。

 こうした状況をどうやって打開していくか?

 「理想と現実」という表現があるが、こうした状況が現実なのであれば、我々クリエイターは理想を常に高く持つ必要がある。ウェブの広告がラジオや雑誌を抜き、新聞に追いつき追い越せというムードの中、外部環境は整いつつあるのだから。

 クリエイターはデザインに対する「投資活動」を徹底的におこなって欲しい。

 素材の切り張りに100%の力を使うのではなく、たとえ1%でもいいから「新しく自らが発想をして、試行錯誤して作り出すこと(=投資)」が必要なのである。ウェブを基点とする新しいコミュニケーションをイメージし続け、そして作り続けるのである。ゆるやかな変化の曲線の角度を上げたかったら、クリエイター自らの力で実行するほかはない。

 投資の結果、必ずしもすぐにリターンを生まないかもしれないが、その投資は業界全体の格を上げる行為となっていつの日か高い成果を生み出してくれると信じて。

 クリエイティブの言葉の意味は「モノを生み出すこと、創り出すこと」であれば、クリエイターは「モノを生み出す人、創り出す人」であって欲しい。

 切り張りで終わらない、クリエイターの逆襲がこれから始まるのである。

 丸山孝一(株式会社プライムクロス)

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