Web 2.0時代を生き抜くネットメディアの将来 - (page 2)

メディアとコマースの融合はブランドが柱

 ネットメディアを次の次元へと進化させるには、各社が新事業を打ち出して強化していくという姿勢がみられた。その中で、テレビとネットメディア、コマースとメディアなど、融合によって進化の境目がなくなってしまうのではないか。その点をモデレーターの小林氏が指摘し、具体的にどう捉えているのかを楽天の吉田氏に迫った。

グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 小林雅氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 小林雅氏

 吉田氏は「究極的には楽天は会員制のビジネスだ」と答え、買い物をしなくても毎日来てくれるユーザーを作り、アクティブにするための工夫をすることが重要だとした。そして、そのためにマーケティングや楽天や球団があるのだという。

「多くの人を活性化させ、新規会員を取れたらいいという思いもありますが、それ以上に今いる会員さんをアクティブにするための工夫をメディアでやっていこうとしています。それがネットメディアでもあり、また、フリーペーパーなど紙のメディアや通信との融合に繋がっているのです」(吉田氏)

 楽天がやっているポータルメディア事業は、メディア、ツール、コミュニティーがあり、それぞれ楽天のブランドとインフォシークのブランド、また、学生向けには「みんなの就職」というブランドがある。この3つを使い分けてビジネスを展開している。ブランドイメージは、メディアを融合する上で、大きな柱となり、認知度を利用して新たなメディアを強化していくための支えとなる。

 ブランド力については、GDOの場合も「ゴルフダイジェスト」という紙のメディアから始まり、認知度のあるブランドを使うことでネットメディアを強化している。しかし、ネガティブな面もあると石坂氏はいう。

「雑誌のブランド力の大きさに助けられている面もありますが、その半面で実際にはネットで幅広い活動をしていても、ネットの展開が一時的なものとして捉えられてしまうこともあります」(石坂氏)

 多数の情報誌を出版しているリクルートでは、1997年頃に「ネットで情報が見られるようになれば、情報誌は要らないのではないか」という議論があったという。しかし、実際には紙媒体を持っていることがネットメディアを展開していく上で強みとなった。

「最後の勝負はブランド力だと思っています。テクノロジーや仕組みは真似ができても、ブランドは真似ができないものです。紙媒体を持っているという強みを、ネットメディアでどう展開していくかが今後の大きな戦略になっていくと考えています」(伊藤氏)

 リクルートは、R25 cafeなどリアルの店舗を出店していく予定もあり、ネットメディアとどう絡めていくかという点も今後の課題となっている。

 こうした中で、ブランドとしては会社名をキーワードにして認知度を高めているのがカカクコムではないかとモデレーターの小林氏が考え、「名前」がキーワードとなることのメリットについて穐田氏に訊ねた。

 カカクコムは、サービスのイメージを直接的に受け、非常にインパクトの強い名前だ。消費者の側に立った場合、「いつ、どこで、なぜ、誰が」というような、英語でいう5W1Hのような要素がある。穐田氏は、その中で価格についての「How much」というのは要素のうちの1つでしかないと考えている。

「意思決定のためのツールとして、カカクコムを値段だけで見られるというのも今後の展開には少し邪魔になってくる気がしています」(穐田氏)

Web 2.0メディア戦略の思惑

 セッションの後半では、モデレーターの小林氏の提案で、メディア戦略についてスピーカー同士で質問しあうという試みを促した。

 そこで、まずは楽天の吉田氏からリクルートの伊藤氏へ「リクルートはポータルをやらないのか」という質問が投げかけられた。

 それについて伊藤氏は、過去にISIZE[イサイズ]というサービスでの経験を披露し、「ポータルは二度とやらないだろう」と答えた。

 ISIZEがあまりうまくいかなかったのは、リクルートのコンテンツの特性にあった。立ち上げ当初は求人、不動産、車などのコンテンツを全部つなげればポータルになるとまとめてみたが、リクルートは学業、就職、結婚など、一生に数回しか体験しないコンテンツが多い。したがってユーザーがサービスを複数にまたがって利用するというのは、時間的なスパンでいくと非常に難しい。

 また、「R-25はポータル的な存在ではないのか」という意見に対し、伊藤氏は次のように述べた。

「R-25はポータルとして捉えず、これまで車、不動産、結婚など商材で切り分けていたコンテンツを、年齢という属性で分けたコンテンツに変えたものです。ポータルにするつもりはありませんが、属性に合わせたメディアは今後出てくるかもしれません」(伊藤氏)

 次に、GDOの石坂氏から楽天の吉田氏へ、「今後専門サイトの行く末はどうなると思いますか」という質問が投げかけられた。

「最近は楽天でも量販店を入れ、商品の供給力が相当向上していると思いますが、そうなると専門サイトが締め出されていくのではないかという危機感を持ってしまう。楽天さんがどう考えているのかを聞きたいですね」(石坂氏)

 インターネットではナンバー1か2しか残らないと語られたことがあった。しかし、実際にはブランドに対する好き嫌いやサービスの展開の方法によって「そんなところには収まらない」というのが吉田氏の感じていることだという。

「楽天は自社販売をやらないわけではありませんが、マーケットプレイスを提供する側でもあります。出品者と戦う形になることはありえないわけです。自由競争をしてお互いにサービス、価格を含めた競い合いをして、いいところが残る。価格が安いところだけが売れているのではありません。サービスや納期、アフターケアのよさで勝負しているところもあります」(吉田氏)

口を揃えて全員が「Googleは脅威ではない」

 そして、伊藤氏からは、全員に「Googleをどう思っていますか」という質問が投げかけられた。

積極的に意見が交わされた

「Google脅威論が一人歩きしているような気がして、僕はまったく脅威だと思えないので、皆さんはどう捉えているのか知りたいのです」(伊藤氏)

 この質問に対して、「脅威ではない」と全員が答えた。Googleとは協業していく部分も多く、共存・共栄できると考えている。楽天のインフォシークから見たGoogleについては、吉田氏が以下のように答えた。

「サービスやコンテンツを提供する側として、インフォシークよりもGoogleのほうがブランドとして認知されている。競合する部分ではあるが、楽天としてはECが中心。そこをどう組み合わせていくかは今後の課題になると思います」(吉田氏)

 セッションも終わりに近づき、今後の豊富が語られた。その中で、ネットで情報提供することも大事だが、「情報を能動的に選べない人たちにどうサービスを展開していくか」という伊藤氏の課題が印象的だった。今後のネットとメディアの融合を成功させる上で、考慮すべき点である。オールアバウトの江幡氏も、Web 2.0でネットメディアが大きくなるとはいえ、影響力はマスメディアに比べてまだ少ないことを指摘した。

「日本の人口全体から見ると、まだまだ人を動かすような影響には至らない。ビジネスを含めて、メディアとしての影響力を高めていけるように、その一部を担いたい」(江幡氏)

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