インターネットは“金の卵を産むガチョウ”--米高官が語るネットの重要性と問題点

 業界の起業家、イノベーター、ベンチャーキャピタリストらが集い、最新のビジネストレンドを披露するカンファレンス「新経済サミット2015」が4月7~8日の2日間の日程で開催された。7日、来日した米国務省 経済商務局 国務次官補のチャールズ H. リブキン氏による「自由でオープンなインターネットの重要性」と題した来賓講演が行われた。

インターネットの重要性と課題

米国務省 経済商務局 国務次官補のチャールズ H. リブキン氏
米国務省 経済商務局 国務次官補のチャールズ H. リブキン氏

 リブキン氏は、「インターネットは新経済の不可欠なコンポーネントであるだけでなく、経済そのもの」と主張する。同氏によると、G7諸国におけるデジタル分野でのグローバル経済とGDP成長は、2011年にエネルギー分野や農業分野を上回ったという。またインターネットについて、「新興市場に対して変革を急速に起こしているものであり、経済の成長と世界の繁栄に貢献できるものである。実際にわれわれの生活の中でも最も偉大で、重要な変化のためのエージェントの役割を果たしている」との認識を語った。

 インターネットが人々の経済活動や社会生活において必要不可欠で重要な役割を果たす中、インターネットを“金の卵を産むガチョウ”と喩えて次のように説明した。

 「ある家族が魔法のガチョウを手に入れ、そこからは黄金の卵や羽根を得られる。しかしこのガチョウを利用しようとして、究極的にはその家族は誤ってガチョウを殺してしまう。インターネットはわれわれにとって非常に重要なものであり、そして全員一丸となって人類の黄金の資産というものを破壊しないように努力しなければならない」

 リブキン氏によると、インターネットが急速に発展する中、どのように機能していくべきかについて非常に複雑で難しい判断が迫られており、多国籍間の会合をはじめその他さまざまな議論の場で議論がなされているという。

 その中の課題の1つとして挙げられるのは、プライバシー保護の問題だ。「人々のプライバシーを守りながらも、どうやってインターネットのダイナミックな要素というものを守り、自由に闊達な情報の流れを維持できるかということが議論されている。これはわれわれ日米両国にとってだけではなく、世界全体にとって重要なこと」とリブキン氏は話す。

 「われわれ米国は日本と肩を並べて多くの課題に協力し合っている。そしてインターネットの最大手の生産者であり、消費者でもある日米は最もインターネットを強く推進している存在。われわれは2国間協議の中でも、いかにしてインターネットガバナンスやマルチステークホルダーのアプローチを守り、サポートし、分散を図ることができるか。そしてどうやってイノベーションを続け、繁栄を共有することができるかということを追求している。また、プライバシーを保護しながらも、どのような形式でルールを形成し、データの収集や活用、配信といったイノベーションをサポートすることができるかが議題として取り上げられている」と、政府間での協議の状況を明かした。

インターネットの開放性と代償

 リブキン氏は「2国間交渉であれ、多国間パートナーという立場であれ、今後取り決められる内容はどこに対しても影響を及ぼすものであり、それゆえにインターネットは自由でオープンでなければならないと主張し、次のような見解を語った。

 「日本は2014年にエストニアで開催されたフリーダム・オンライン会合(FOC)で、インターネットの開放性について支援を行っていくとその立場を表明した。われわれは自国内の問題にも注意をしなければならないが、これがどのように応用され、その代償は何であるかということも把握していかなければならない。つまり、慎重な姿勢とインターネットが誰に対しても解放されていくというバランスを担保しなければならないが、米国がすべての解を持っているわけではない。データを保護するという点では、我が国は強い動機と裁量のリソースを持っているが、確固たるベストプラクティスと賢明なルールづくりの環境を整えることによって、むしろ壁をつくるのではなく、より信頼できる防御が達成できると思っている。そしてこれが結果的に、民主主義やオープン性を尊重する多くの国がインターネットの利便性を活用することにつながると思っている」

 また、自由でオープンなインターネットを維持することのもう1つの重要な要素として、インターネットが先進国をはじめ、新興市場や開発途上国における経済に対して大きなチャンスを与えることにつながる点を強調する。

 「調査によると、現在は世界人口の半分以上がまだインターネットにつながっていないが、2025年には18億人あまりがインターネットを利用するようになり、その大半は新興市場の人々であると言われている。つまりそれだけ多くの需要とグローバルな生産が生まれることになり、これは日米両国だけでなく、新興国や開発途上にある消費者向けにも物品・サービスなどさまざまな経済的チャンスをもたらすことになる。デジタル技術は、起業家の人々がミクロで多国籍になるということを保障していき、さまざまな製品やアイデアが国境を越えて行き交うことになる。その状況の中で、新興市場や開発途上国の小さい企業こそが経済の中核をなしていく。インターネットはより自由で公平になるための劇的な成果をもたらす。そしてより多くの起業家や中小企業がグローバルサプライチェーンとつながることによって、情報やサービスがありとあらゆるかたちで提供可能になっていくだろう」とリブキン氏は述べた。

 デジタルな交易ルートを開放し、よりアクセスしやすいインターネットの環境を整える必要性を改めて訴え、イノベーションと経済の成長を促すための自由でオープンなインターネットのグローバルなコミュニティの醸成に日本と協力し合っていく意向を語った。

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