青少年を有害な情報から守るために、フィルタリング以外にどんな方策が考えられるだろうか。最も多かったのが、「学校や家庭による教育・啓蒙活動」で、20件寄せられた。携帯電話に限らず、情報があふれている時代に、どこから情報を得て、何を信じるかという情報教育は欠かせなくなっている。ここを強化し、ユーザー側のリテラシーを高めることが抜本的な解決につながるという考えだ。
また、「業界による基準作りや審査体制」が5件、「サイト運営者による監視強化」が4件、「運営者による自主規制」が3件と、事業者の自主的な取り組みが必要とする声も多かった。
そもそも有害な情報を掲載したり、青少年を犯罪に巻き込もうとする側の取り締まりを強化すべきという意見もある。「自らの知識の向上と悪質業者の監視、排除の両方が備わることで安心・安全が保証される」(魔法のiらんど)、「悪質な利用者のユーザーID等をブラックリスト管理して、サイトが共同で利用を制限する」(モバイル・コンテンツ・フォーラム)、「悪い書き込み、サイトをより容易に通報できる対策を講じる」(社団法人日本PTA全国協議会)
逆に、青少年が有害サイト等にアクセスしないように、「子どもアクセス履歴を親に開示する」といった案も3件あった。「移動通信事業者による本人確認に基づく年齢情報をコンテンツ事業者に提供し、コンテンツ事業者が未成年を受け入れる場合の管理責任の範囲を明確化する」(マイクロソフト)と、年齢に応じてサイト運営者に表示する内容を変えさせるという案もある。
この問題について慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 准教授の菊池尚人教授は、「携帯電話でのフィルタリング問題は先進的モバイル環境にある日本社会が世界に先駆けて直面した問題」と指摘する。つまり、海外の事例で参考にできるものがあまりない点に難しさがあるのだ。
そういった中で必要とされるのは、関係者それぞれが、お互いにメリットのある状況を考え、議論し、協調していく姿勢だ。
「ただブロックして見せないようにすれば現在の問題点が解消されるものではなく、1番の目的である未成年者を守るということをもう一度きちんと考え直す必要がある」(シーエー・モバイル)
「ビジネスの発展と、次世代の子どもたちを守ることを両立させなくてはいけない。未成年者をビジネス対象として考えているのならば、その人たちにとってどういう情報がふさわしいのか、事業者側としても言える必要がある。世の中のコンセンサスが必要であり、教育関係者や保護者、児童心理の専門家なども交えて基準を作る必要がある」(ヤフー)
ただ、今回のことがきっかけで、有害情報への対応に関心が集まることを歓迎する声もある。「フィルタリングについて多少偏った議論や技術に対する過剰な期待が醸成された背景には、移動通信事業者が通信の秘密を遵守する一方、コンテンツ事業者は(会社として当然だが)事業への影響を最優先し、教育現場や保護者からの声に対する総合的な受け皿が確立されていなかったという事情がある」(マイクロソフト)
「サイト事業者の方も、青少年保護のための規制やセーフティネット構築への貢献が十分でなかった。しかしながら、今回の施策を契機として関係者全員の協力によりフィルタリングをはじめとした青少年保護のプログラムが適切に整備されるようになれば、モバイルコンテンツ産業が社会一般に認めるチャンスである」(モバイル・コンテンツ・フォーラム)
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