「誰かが言わないとモバイル業界は変わらない」--モバ研報告書の真意 - (page 2)

永井美智子(編集部)2007年07月11日 18時25分

 通信伝送の部分だけで儲けるのは難しくなってきています。だからこそ今、携帯電話事業者はサービス面に力を入れています。多様なアライアンスを組むことで儲けてもらうことになるでしょう。競争自体を否定すると何も進みませんから、競争を前提に考えてもらうしかない。

――日本の端末メーカーの競争力が落ちていると言われています。

 販売奨励金を減らせば国際競争力が付くと思っているわけではありません。それはやや短絡的です。ただ、健全な競争環境を作れば、そこから端末の多様化、サービスの多様化が生まれて、ひいては国際競争力の強化につながると思っています。

 とはいえ、ハードランディングでは大変なことになります。少し時間を置いて、「2010年までにはこういう方向に持っていこう、そのためにみんなで考えようよ」という形で、議論をオープンにすることが最も大切だと考えています。

 (通信料金と端末価格の)分離モデルを規制で作れるかといえばできません。我々が規制でやらせることはできないんです。料金プランは事業者の経営の根幹にかかわる部分ですから、我々は方針を出して、それに沿った形にしてくださいとお願いする姿勢です。

 ただ、NTTドコモの中村(維夫)社長、KDDIの小野寺(正)社長は、今の販売奨励金は減らさないといけないと感じていらっしゃいますし、料金プランの見直しも考えているとおっしゃっていただいています。

――携帯電話のOSやアプリケーションでは海外に強い企業がいくつもあります。こういった企業と国内企業が戦っていくための支援や育成についてはどう考えますか。

 競争政策と産業政策というのは分けて考えないといけないですね。競争政策というとき、国内外を差別することはできません。そこは競争をしていただきます。

 他方で、産業政策、産業育成の視点も必要です。報告書の中では、端末を開発するときに端末間の相互接続性やソフトウェアなどの相互運用性を試験するコストが高いので、産業界と行政当局が連携してテストベッドを作りましょうと書いています。また、なるべく認証機能などをオープンにして、みんなで新しいビジネスを作っていこうということも書いています。

 また、今回、IDポータビリティという概念を打ち出しました。番号ポータビリティ制度を利用して通信事業者を変えた人は確かに同じ電話番号を使えるけれども、コンテンツは一度解約しないといけない。これはおかしいですよね。IDが持ち運びできればこの問題は改善されます。個人情報の問題を懸念する人もいますが、個人情報を持ち運ぶ必要はなく、認証さえできればいいんです。

――真の意味での分離ができるようにしないといけないということですね。

 周波数を持っている人がすべての経営資源を独占するのではなく、ほかの人がお金を払うのであれば使わせてあげて欲しいということなんです。

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