大企業も必須となったモバイルマーケティングの先行事例 - (page 2)

 Coke Side of Lifeとは、全世界共通のCMフォーマットで統一的なプロモーションを行い、デジタルメディアを通じて若者にリーチしていくという戦略。CMの最初と最後のシーンを各国向けに変更し、若者に訴えやすいアニメーションに仕立てた訴求を始めている。

 Coke Side of Lifeを実施しながら、江端氏は、2006年夏からは日本独自のデジタル展開を考え、若者に対してどうリーチすれば良いかを模索したという。2006年の秋からユーザー数が伸びてきたディー・エヌ・エー(DeNA)のソーシャルネットワーキングサービス「モバゲータウン」の成長に注目し、提携を決めた。まずは清涼飲料水の「ファンタ」で実験。効果を検証してから、コカ・コーラのキャンペーンをモバゲータウン内で行うとともに、テレビなどほかのメディアとの連携を始めた。

 「ファンタでテストして反響が良かったので、(コカ・コーラのキャンペーンに)GOを出しました。今回の大きな特徴は、直接DeNAと取引をしたことが挙げられます」

 キャンペーンの内容は、5月1日から6月20日までの期間、モバゲータウン内にプロモーションサイトを設け、アバターアイテムやゲームなどを無料で配布するものだ。コカ・コーラはテレビCM、ラジオ、屋外広告、雑誌、自販機、メールなどを利用して共同プロモーションサイトに誘導した。「(^^)」と顔文字で検索するとキャンペーンサイトに誘導されるという「業界の常識外の企画」(江端氏)も実施した。

 結果、プロモーションサイトのトップページだけで3655万の件のアクセスがあり、「コークスキー」というキャラクターを立てて公開した日記も1000万以上のページビューがあった。

 「このキャンペーンサイトは5月中は日本で一番多くの会員を獲得できたのではないかと思います。社内でも評価の高いプロモーションと評判で、若者向けにこれからもモバイルを使おうという流れになっています」(江端氏)

ネットにもテレビのGRP的な指標が必要

 コカ・コーラがモバゲータウンと組むに至った理由については、「成長に勢いがあったこと、創業時からDeNAを知っていたことが挙げられます。そして何より、DeNAがモバイルでのコミュニティを育成するためにはサイト内でトラブルがあってはいけないという思想を持っており、端末認証を導入してサイト内の監視をしていたことが大きな決め手となりました」(江端氏)

 しかし、「社内的で理解を得るのは非常に難しかった」と江端氏は当時を振り返った。社内では「携帯電話向けにしかサービスを提供していないモバゲータウンを選択し、PCを捨ててモバイルだけでキャンペーンが成功するのか」という疑問がぬぐい切れない状況だったためだ。

 「外国人マネージャーが携帯電話でネットを使っていなかったということもあり、最後に承認をもらうまで、ぜったい大丈夫といい続けましたよ(笑)」(江端氏)

 全日空もネットでの航空券販売は成功したものの、宣伝広告媒体のネットへのシフトはそれほど進んでおらず、その最大の原因となっていたのは社内の理解だった。

 大企業は既存の売り方に自信を持っている分、それをダイナミックに変えるのは非常に大変なことだと幸重氏は語る。

 「たぶん、みなさんの会社でもこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。全日空は、この1〜2年で、大きく広告予算のネットへのシフトが進んできました。宣伝広告にネットが受け入れられたのは、個人利用の顧客のうち、ネットでの航空券購入者の比率が5割を超えたことが大きかったです。これが社内でのイメージを変え、ネットの重要性を理解するきっかけとなったのです」(幸重氏)

 では、このような飛び抜けた成功事例がない場合、どうしたら社内を説得できるのか──。 社内で話を通すための説得材料として、メディアミックスの指標が必要だと両氏は指摘する。

 テレビの指標はGRPというものがあり、1人当たり何回CMを見たかが分かる。つまり、広告に対する費用対効果が数字で出る。現在、ネットにはGRPにあたる指標がない。

 「GRPに似た指標が確立すれば、費用対効果の良さが分かりやすくなり、社内での説得材料として通用するのではないでしょうか。バナーなどの広告の場合、設置位置によってクリック率も変わるので、インプレッションをどうカウントするのかという問題があります。ただ、実はテレビでも、実際にはどれだけ本当に見られているか分からないのが現状です。それでも、GRPという指標が確立しています。ネット広告も、GPRと比較できるようになれば、効果が伝わりやすくなると思います」(江端氏)

 この意見には全日空の幸重氏も賛同した。

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