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本日の主要記事
顧客経験を個別にデザインする「One to One」設計のススメ
◆本コラムのサマリ
・近年の技術的な進歩により、すべてのユーザーに等しく同じ画面をみせるのではなく、ユーザーごとに個別最適化したウェブサイトを安価に提供することが可能になった。
・そもそもサイトのターゲットユーザーや利用シナリオを考えることがユーザー中心設計の第一ステップであり、それらが練りこまれないままOne to Oneを実現しようとするのは早計。
・しかし、ユーザー中心の設計手法をさらに推し進めるステップにあるウェブマスターは個別最適化を検討すべき。
注意していても「八方美人」設計に陥る現実
近年、多くの企業ウェブサイトでもユーザー中心という考え方のもと、インタビューやアンケート調査・電話や対面でのヒアリング・アクセスログ解析・ユーザビリティテスト・β版評価等、顧客を理解するための様々な取り組みが行われています。
これらに携わったウェブマスターは、顧客の理解について少なくとも「調査から導き出す『平均的なユーザー』は、消費者の本当の姿を反映したものではない」という共通見解に到達しているのではないでしょうか。近年のペルソナ手法の流行は、この事実に多くのウェブマスター、マーケターが気づいたからにほかなりません。
ですが、実際にウェブサイトを作ろうとしたとき、せっかく定義したペルソナを活用できていない方も多いはずです。複数のペルソナを用意し、それぞれのシナリオを作ってみたものの最終的には平準化した「全員を喜ばそうとするサイト」が作成されてしまう--こんなケースは珍しくありません。
平均は消費者の本当の姿ではないことを知っていても、冷徹な目で優先度を付けきれず、要件を捨てられない経験をされていませんか?様々な調査を実施しても、最終的に出来上がったサイトは、八方美人の要素がふんだんに組み込まれ、使いやすいとはいえないものになっていませんか?本稿では、こうした最終段階での妥協をなくす、一段階先のユーザー中心設計のあり方を提案します。
ユーザー個別の対応を行う「One to One」設計とは
最終的に実現すべきイメージとして、『One to Oneマーケティング』(D.ペパーズ、M.ロジャーズ1995)で紹介されている、前近代的な八百屋の例が分かりやすいでしょう。
地元のグローサリー・ストアの店主は、顧客の一人一人と顔見知りであった。スミス夫人が毎週どんな買い物をするかよく心得ていて、ご近所のひとたちと違い、夫人がいつもトウモロコシ粉の大袋を買い込み、料理にどっさりつかっていることを知っていた。(中略)
八百屋の商売は、店主と顧客との人間関係と、好みや家族構成といった一人一人の顧客の情報の上に成り立っていた。そしてそれらの情報を基にして、それぞれの顧客の注文に応じ、売り上げを伸ばし、移り変わるニーズを満たすためにサービスや商品を変えていったのである。(D.ペパーズ、M.ロジャーズ1995)
この例で示されているのは、一人一人の顧客情報や知識に基づいて顧客を個別に扱う「One to One」アプローチです。ペルソナ手法を採用するステップにまで到達したウェブマスターは、ここに見られるように、適切な顧客満足プログラムを用意するという点こそウェブサイト作りの根本であると気づくのではないでしょうか。
同じことをサイトでやるとすれば、「ウェブサイトを訪問するユーザーを識別し、サイトが自動的に生き物のように姿を変える」ということになります。Amazonなどが代表的ですが、顧客別にあるべき接し方を行うウェブサイトは、全員に同じ顔をする「八方美人」のウェブサイトとは一線を画します。
もっとも、顧客データベースを用いて、カスタマイズしたコミュニケーションを行うというアイデアは、1990年代末から徐々に紹介されており目新しいものではありません。しかし、仕組みの導入に伴うコスト面の不安から、日本では必ずしも多くの企業がこれらに積極的に取り組んでいるとはいえない状況にあります。
しかし、厳密性を求めなければ、安価にかつて小売店主が行っていたビジネス方法に立ち戻ることが可能であることをご存知でしょうか。例えば、アクセス時の条件を解析し、
- 最後に訪問した日時
- 過去に閲覧したページ
- 訪問頻度
- アクセスしている地域情報
- 流入キーワード
などをユーザー個別に判別し、その条件に応じて画面上のデザインを出し分ける程度の個別対応であれば、高度なDB、システム導入は不要です。ツールによりますが、費用は月間数万円〜数十万円程度の投資で実現が可能になっています。
具体的なツール例として、Rtoaster(http://www.rtoaster.jp/)、CONDUCTOR LCO(http://lpo.axyz.co.jp/)などが有名です。
ユーザーに個別対応するという取り組みを、複雑なデータベース・マイニング作業と同等と捉えてしまい食わず嫌いをしているとすれば大きな損失といえるでしょう。先に触れたツールを用いることで、厳密なOne to Oneとは言えないまでも、ある程度ユーザーの状況や関心に沿ったコミュニケーションを行うことができるのです。
事例紹介:アクセス時に判断できるユーザー情報を活用した個別最適化
初めてウェブサイトに訪問したユーザーと、毎日訪問しているユーザーはサイト訪問の理由や探している情報が異なることが予想されます。よくサイトに設置される「はじめての方へ」のようなコンテンツは、リピーターには不要ですが、初心者には有用です。逆に、更新情報などはむしろリピーターにこそ意味のある情報であることが多いといえます。
こうした、サイト訪問に関する行動を切り口にページの見せ方を切り替えることがツールの導入により実現可能であり、すでに導入して実績を上げている企業も存在します。
【サンプル】初回訪問時には「初めての方へ」コンテンツを露出し、訪問経験のあるユーザーにはキャンペーン情報など露出する

図1:永久不滅.com (http://www.a-q-f.com/)他にも、サイトに流入してきたキーワードに応じて露出するコンテンツを変えるケースもあります。生き物のようにサイトが変化し、各ページで欲しい情報・商品へのリンクが優先して表示されるのは、シンプルながらも行き届いた配慮と言えるでしょう。
【サンプル】流入キーワードに応じて、露出するコンテンツを変化させる
図2:セシール (http://www.cecile.co.jp/) ※画像をクリックすると拡大します。
株式会社ビービット
仮説検証型の独自方法論「ビービットUCD(User Centered Design)」を用いて、ウェブおよび携帯サイトの戦略立案、サイト設計、構築、効果検証を行うインターネットコンサルティング会社。
年間1000人を越えるユーザビリティテスト(ユーザー行動観察)やアイトラッキング調査など各種リサーチを実施し、ウェブユーザーの心理と行動パターンを分析。サイトの売上向上、コンバージョン率改善などの具体的成果の創出を行っている。
絶えず変化するウェブユーザのニーズを把握し、インターネットを通じた企業の収益機会を実現するための方法論を解説。「ユーザ中心ウェブサイト戦略~仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践」
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