スマホで銀行を「手のひら」に--金融のカジュアル化を目指すじぶん銀行

 スマートフォンの普及や通信技術の発展によって、ITは音楽や映像などのデジタルコンテンツを楽しむためのものから、より多くの消費者の生活を便利に、そして豊かにするツールとして進化を遂げつつある。この連載では企業のウェブでの取り組みを通じて、それぞれの領域におけるテクノロジの持つ可能性について考える。

 今回のテーマは“金融”。銀行での「手続き」や「振り込み」といった言葉を聞くと、いちいち店舗の窓口やATMまで足を運ばないといけないというイメージを持っていたり、実際にそうしている人は多いはず。しかし、スマートフォンの登場によって、銀行サービスは手軽に、そしてカジュアルな存在へと変わってきている。

 KDDIと三菱東京UFJ銀行の合弁会社であるじぶん銀行は、モバイルデバイスに特化した銀行サービスを提供する企業だ。“手のひらにある銀行”をコンセプトに2008年からフィーチャーフォン向けにサービスを開始。また、2010年からスマートフォン向け銀行取引アプリ「じぶん銀行アプリ」(iOS/Android)を提供している。開業から5周年を迎え、現在は約160万口座を開設、預金高は約5500億円におよぶ。

スマートフォン向けの“トータルバンキング”で差別化

 同社の強み、それは円定期預金や残高照会などの「口座」、外貨預金やFX、ローンなどの「金融商品」、振込や電子マネーなどの「決済」を兼ね備えた、“トータルバンキング”をスマートフォン上で提供していることだ。アプリでは、米ドルやユーロ、中国元などの為替レートが確認でき、事前に登録した為替レートに到達するとメールやプッシュ通知を受け取れる機能も搭載している。もちろん、リアルのATMで直接お金を引出すこともできる。

 通常であれば煩わしい手続きが多い銀行口座の開設も、わずか4ステップで完了する。同社の「クイック口座開設アプリ」で運転免許証を撮影すると、OCR処理(光学式文字認識)で読み取った住所や生年月日情報を自動で入力し、あとは電話番号や暗証番号などの情報を加えて送信するだけで、キャッシュカードが郵送されてくる。そのため、運転免許証のコピーを郵送するといった作業は一切不要だ。このアプリを2012年12月に提供してから、約3カ月でアプリ経由の口座開設が2割増加したのだという。

  • 銀行取引アプリ「じぶん銀行アプリ」

  • 利用できるメニューの一覧

  • 変動する為替レートもスマホからすぐにチェックできる

 アプリは、携帯端末IDで認証するため面倒な乱数表入力が不要なほか、じぶん銀行に口座を持つユーザー同士であれば、携帯電話番号を使ってメール感覚で振込手続きができる。振込手数料も無料のため、たとえば「ランチで友人に借りた数百円」といった小額のお金も、スマートフォンからその場で返金できる。12月19日にはAndroidアプリでFacebookやTwitter、メールなどを通じて家族や友人にギフトを贈れるようになった。これはスモールギフトサービス「giftee」と連携して提供するもので、じぶん銀行の口座があれば商品選びから決済までの一連の流れをすべてアプリ内で完結させられる。

  • スマートフォンにカードをかざすと残高を確認できる電子マネーリーダ機能

 また、こちらもAndroid版のみではあるが「Suica」や「nanaco」「楽天Edy」など、主要な電子マネーのチャージがアプリからできる。さらに、スマートフォンにカードをかざすと残高を確認できる電子マネーリーダ機能も備えている。この機能は口座を開設していなくても利用できる。じぶん銀行 執行役員 経営企画担当の吉川徹氏は、「従来のように家計や法人取引だけではなく、個人が気軽に自分のお金を管理したり、使ったりできることがじぶん銀行のコンセプト。多様なニーズに応えられるよう幅広い商品ラインアップを揃えている」と説明する。

 ネット銀行サービスで最も懸念されるのがセキュリティの問題だ。じぶん銀行では、普段はATMでの現金の引出しや残高照会をロックし、ユーザー自身がキャッシュカードを使うときだけ解除できる「ATMロック」機能を提供。また、ATMロックと同様に、PCバンキングを使うときだけ、スマートフォンでロックを解除して利用できるようにする「パソコンロック」機能も提供する。これによって、なりすましなどの不正取引のリスクを減らせるとしている。

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