前代未聞の速度で組織を急拡大するグルーポン--勝ち続けるために必要な人材とは(前編)

宍戸周夫(テラメディア)2010年12月22日 16時32分

クーポン共同購入サイトを展開するグルーポン・ジャパンの認知度が急速に高まっている。同社は、新たなビジネスモデル「フラッシュマーケティング」で躍進した米Grouponの国内法人だ。国内ユーザーの急増に合わせ、同社も営業スタッフ増員やIT部門の強化を急ピッチで行っている。同社を語るキーワードは、その強烈な“スピード感”だ。

急拡大する組織―営業も技術も足りない

 「採用がグッと伸びたのはやはり、グルーポン・ジャパンに社名変更した10月以降ですね。今は、サービス展開をより加速させる目的で採用を増やしています。それにつれて、日々サービスの強化も図っています」

 同社で人材採用の最前線に立つ、管理本部人事マネージャー小磯香氏の言葉だ。

小磯香氏 グルーポン・ジャパン 小磯香氏

 現在の同社の母体となったのは、米Grouponの急成長に刺激され、国内でもクーポンビジネスを展開しようと2010年6月に社員十数名で創業した株式会社クーポッド(Q:pod)だ。直後の8月、奇しくも日本展開のパートナーを探す米Grouponがクーポッドのサービスに着目、出資に至った経緯がある。

 小磯氏はクーポッド出身で、6月時点では十数名だった社員が約半年の間に数百名規模に膨れ上がった過程を、身をもって体験している。しかも、その大規模採用は現在も続いている。

 グルーポン・ジャパンは、そのビジネスモデルに共感する入社希望者のため、10、11月の毎週土曜日に企業説明会を開催してきた。1日に平均して3回説明会を行ったが、1回につき50名、多いときで100名近くの採用希望者が集まったという。人材獲得の現場は熾烈を極めている。

 しかし「当社はスピードが命。選考も出来る限りスピード重視で行っています」(小磯氏)というように、人材獲得にもスピードという言葉が欠かせない。

同社があるのは、東京渋谷に完成したばかりのオフィスビル。「出社したら、社員はスペースの奪い合い」のような雰囲気だそうだ。

 採用で力を入れるのは主に営業職と、同社のシステムを支えるエンジニア職だ。特に営業職では応募してくる人のキャリアは実に多彩だという。

 「前々からこうしたサービスを知っていて応募してくる人が多いですが、メディアへの露出が増えることによって、サービスそのものを知らなかった人の応募も増えています。前職は正直いってバラバラですね。ITやネットワーク分野にまったく関係なかった人もいます。」

アクセス増にも絶対ダウンしないシステム作り

 最近ではTVコマーシャルも開始し、全国展開も計画している。急速な人材採用は、その全国展開に向けて人の組織固めという意味がある。当然、それに見合うだけのシステムも準備する必要がある。

信川亮太氏 グルーポン・ジャパン 信川亮太氏

 そのシステムだが、基本的にはクーポッドのシステムをそのまま引き継いだ形になっている。

 「いわば表のデザインだけを変えたもので、米グルーポンとのつながりもありません。日本は日本独自のシステムでやっています」というのは、システム開発・運用の責任者である開発本部マネージャーの信川亮太氏だ。

 これまで米Grouponは、海外進出に当たっては基本的にそれぞれの国、地域のローカルビジネスを買収してきた。その裏には「このビジネスモデルそのものが地域に根づいたサービスを展開するものであり、地域の文化を理解しているローカルの事業者、類似サービスを行っている先行者とパートナーを組むのが効率的」という判断がある。

 しかしシステムをそのまま引き継ぐかどうかには別の判断があり、日本はたまたまクーポッドのシステムをそのまま引き継いだ形になっている。

 そのシステムはLinuxをベースにしたいわゆるLAMPで構築されている。Linuxを基盤に、WebサーバのApache、データベースのMySQL、そしてスクリプト言語のPHPで構成するオープンソースのシステムだ。ダイナミックなWebサイトに適しているということで、競合する企業もシステムとしてはあまり大きな差異はないようだ。

 「システムはどのクーポン共同購入サイトも似たり寄ったりですね。お客さんに見える画面はほとんど変わらず、デザインだけの違いという感じになっています。つまり、システムというよりビジネスモデル、その仕組みがポイントになってきます。日本もその通りで、米本社からはシステムを変えろという話はいっさい来ていません。しかし、デザインは基本的に世界で統一されています」

 だが、日々増大するアクセスへの負荷対策は重要である。

 「負荷分散はさまざまな形で日々行っています。立ち上げ当時に比べればシステムも相当大きくなってきていますので、対応を日々怠ることができません」

 たとえば、米本社がGAPの商品をサイトにアップしたとき、短期間で44万件以上もクーポンが売れた。それに対しても「システムは絶対落とすな」という上層部からの指示があったという。

 「そのため、突発的に想定している以上のアクセスが来た場合でも落ちないような工夫をしています。また、決済なども自社で完結するのではなく、決済代行会社などにお願いするなど負荷を分散するさまざまな工夫をしています」

 インタビューは後編に続く。同社がエンジニアに求めるのは、ユーザーとしての経験だ。

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