「物事に屈しない意志」で世界への扉を開けたオウケイウェイヴ

 会員同士が互いに質問、回答し合うことで、日常のふとした疑問のみならず、専門的な問題であっても、効率的に解決や解消できる場、ナレッジコミュニティ(Q&Aサイト)。その有効性や利便性により、2000年以降、「はてな人力検索」(2001年7月から)や「Yahoo!知恵袋」(2004年4月から)といったナレッジコミュニティが続々と誕生し、利用者数も年々増加している。

 こうした中でも、2000年1月にその元祖として正式運用を開始し、現在も最大の存在感を示しているのが、「OKWave」(開始当初は「OKWebコミュニティ」)だ。OKWebのシステムは、有益な回答に対して「ありがとうポイント」を付与し、累計ポイントランキング上位者に対して、あるいは抽選によって記念品を贈答する。とはいえ、基本的にボランティアベースのサイトであり、ユーザーは、単純な金銭的利益ではなく、やりとりされる情報や、他者からの感謝の言葉そのものに価値を見出している。まさにWeb 2.0を牽引する存在といえるだろう。

 そうしたWeb 2.0の可能性に早くから着目し、「OKWave」を日本最大規模、参加者90万人のナレッジコミュニティへと育て上げたのが、オウケイウェイヴ社だ。現在は、FAQ作成管理ツール「Quick-A」や、Q&A情報活性化ツール「ASK-OK」などの企業向けサービスも提供している。

 オウケイウェイヴの創立は1999年7月。2006年6月に名証セントレックスへの株式上場を果たしたばかりだが、2007年に入ってからも活発な動きを見せている。7月にはWordやExcel、PowerPoint、PDFといった形式のファイルを投稿できる、“ドキュメント版YouTube”とでもいうべきドキュメント共有サイト「docune(ドキュン)」を開設。10月には、楽天と業務・資本提携を締結して楽天の持分法適用関連会社となり、広告商品の開発や、楽天グループサイトへのQ&Aサイト機能の供給を手がけることになった。

 さらに11月29日、カリフォルニア州に子会社OKWave Inc.を設立、英語圏でのQ&A事業展開の橋頭堡を確保するに至る。

 順風満帆な経営を続ける同社。しかし、代表取締役社長の兼元謙任氏は、米国への進出を果たして初めて、日本のITベンチャー、ことに人材教育面での立ち後れを、身をもって痛感したという。

オウケイウェイヴ代表取締役社長の兼元謙任氏 オウケイウェイヴ代表取締役社長の兼元謙任氏

「技術面の差を数学にたとえるなら、米国が微分・積分なのに対し、日本は四則演算をやっているぐらいの開きがあります。そもそも、技術者の勉強の仕方からして、日本とはまったく違う。米国では技術はもちろん、財務や心理学、ユーザーインターフェースといった多岐にわたる分野を勉強した人がエンジニアになるんです」

 オウケイウェイヴの社員数は現在約70名。皆、社の方針、目指す未来と同じ理想を掲げる、兼元氏自慢の社員たちだ。しかし、ここ最近は、他の大半のベンチャー企業同様、これぞ、という人材になかなか巡り会えていないのも事実だ。技術と経験のある優秀な人材は、すでに他社へ就職、あるいは起業しているのでは、と兼元氏は推測する。

「優秀で、しかも弊社のやり方や目標にマッチする人材を中途採用で獲得できる率が低いのは、ある意味では当然です。かといって新卒も、先ほど述べたように、技術的・学術的な教育をきちんと受けていません。それ以前に、企業でどう働くか、社会にどう貢献するか、自分の関心をどう表現するか、という教育すら受けていない。それが日本の実情です」

 そうした厳しい現状を受け、オウケイウェイヴでは、新卒者の採用と教育にいっそう力を注ぐ方針を固めた。外注を利用した基本的な新入社員教育制度の採用はもちろん、2名の社員教育専任社員を用意し、かつ社内のビジネスコンテストで生まれた新規事業にインターンとして関わらせるOJT(On-the-Job Training、具体的な仕事を通じて必要な技能などを習得させる教育訓練法)を導入した。時間と経費はかかるが、会社側が率先して新卒者を受け入れる態勢を整え、“まっさらな”人材を純粋培養することに活路を見出す。兼元氏は心情をこう吐露する。

「先生や先輩たちに叩きのめされて自然に学んだ私たち世代から見れば、入社時に挨拶もきちんとできないことなど考えられないことです。でも、それが今の新卒者の姿だし、これからはそれがパラダイムになる。だから、私たちのほうがシフトしなきゃいけないんですね」

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