ゲーム内広告の魅力とチャンス―日本で離陸直前 - (page 2)

マスメディアにないゲームの魅力

 なぜ、こうした広告、プロモーション手法が米国で注目を集め、盛り上がっているのか。理由のひとつは「ゲームの中に広告を入れるという手法が注目されているというよりも、メディア観の変化がみられる顧客層への対応」(横地氏)なのだと言う。インターネットが発達するにつれて、マスメディアの信憑性やリーチ率が落ちており、その尖兵となるのが、20〜30歳代の男性。いわゆるM1層なのだ。

 「オンラインゲームのプレーヤーは、仕事をしつつ、平均的に毎日3〜5時間ゲームをやっています。どうやっているのか。テレビの時間をゲームの時間に振り分けられているとしか考えられないわけですよ。米国の場合は、20〜30歳代の男性のテレビ視聴時間が20%落ち、その代わりにゲームやネットの利用時間が30%伸びたといわれています」(横地氏)

 さらに、ゲームにはマスメディアにはないメリットがある。

アドバゲーミング 横地氏 アドバゲーミング シニアマネージャーの横地潤氏

 「ゲームは、テレビやラジオのような『ながら媒体』じゃない。そして、やる人は毎日やります。つまりフリークエンシー(広告への接触頻度)が高い。そのため、ゲームの世界観に沿った広告であれば、ユーザーへの浸透度も高いのではないかと考えられているのです」(横地氏)

市場形成の元年へ向けて離陸

 こうしたことから、日本でもゲーム内広告を手がける広告代理店はいくつもできてきているが、一般的な認知度は決して高いとは言えない。

 「広告業界で注目はされています。どのクライアントに行っても、興味を持って話を聞いてくれる。ただし、クライアントから言われることは一緒です。『結果がでた日本の事例はありませんか』と。まだ状況が良く見えず、みんながけん制しあっているのが現状です」(横地氏)

 柳の下のドジョウを見せろ、というわけだ。同社は、日本でのゲーム内広告が伸びていない理由をこう考えている。

  1. ゲーム内広告に3種類あることが啓蒙されていない
    3種類をしっかり分けて認識している人がほとんどいない。会社の広告担当者に話を持ちかけたとき、どれか1種類だけが頭の中にあり「うちには合わない」と考えられてしまうことがある。現時点では、営業活動そのものが啓蒙活動になっているという。
  2. ゲーム内での必然性をどうやって持たせるかのノウハウ不足
    日本でのオンラインゲームには、ファンタジー系や萌え系が多い。したがって、実在の製品を取り入れるのが難しいという問題が発生する。それは、下手に登場させるとゲームの世界観を壊してしまう可能性が出てくるということだ。ゲームの世界観に沿っての「登場の必然性」をどう持たせるか、ノウハウを溜めていく必要がある。米国では、ファンタジー系や萌え系よりも、オンラインゲームにリアルな世界を扱ったものが多く、ここが問題になることが少ない。
  3. 日本はプロモーションが重視される国である
    日本では、OOH(Out of Home、屋外広告など家庭以外で接触する広告の総称)を活用したリアルプロモーションや、人が集まる場所でのプロモーション活動など、数の論理だけではないコミュニケーション手法が発達している。したがって日本の広告文化にあった配信型を模索していく必要がある。

 「今年は、ゲーム内広告の市場が形成される足がかりの年だと考えています。一般的な認知が広がるのは来年からだと推測します」(横地氏)

 アドバゲーミング社の現在の方向性は、日本で受け入れられやすいインゲームズプロモーションに1つ1つ取り組みつつ、インゲームズアド(配信型)が根付くように、こつこつと手を打っていくというものだ。ゲーム制作会社や広告主を含めた市場開拓を進めつつ、広告制作や配給を担当するレップ事業を目指す。

 つまり、「ゲームという媒体(メディア)の価値向上」「ゲームはメディアであるという啓蒙活動」「配信技術などノウハウの蓄積」が、現在の同社の状況だということになる。まさしく、市場創生の試みだ。

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