若者--新時代の到来を告げる「ミレニアルズ」 - (page 2)

文:Declan McCullagh(News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月12日 09時00分

 当然、ミレニアルズがひとつの物事に集中している時間は短い。このように次から次へと興味の対象が移る性質を、MITメディアラボのSeymour Papertは5年前に「イナゴの心(grasshopper mind)」と呼んだ。数学者で人工知能研究の草分けでもあるPapertは、1995年に行われた技術と学習に関する議会証言のなかで、すでにこうした行動パターンがもたらす影響に言及している。

 「今、われわれが議論すべき問題は、技術は教育を変えられるかどうかではない。それが望ましいかどうかですらない」とPapertはいう。「今日の技術はすでに、学習環境そのものを変える大きな要因となっている」(Papert)

 Pew InternetとAmerican Lifeが実施した最近の研究によれば、インターネットを利用している10代の若者の半分以上(1200万人)が、独自のウェブコンテンツを作成しているという。ブログやホームページを作っている者もいれば、絵、写真、ビデオといった自分の作品を学校のウェブサイトに発表している者もいる。この層の相当部分は、ウェブ上のコンテンツを「リミックス」して、ユニークな何かを作り出そうとする。

 「MySpaceにある特にデザインの優れたページのなかには、14、15歳の子どもが作ったものもある」と、ソーシャルネットワーク「MySpace」の共同創設者Kyle Brinkmanはいう。現在の人気を見る限り、MySpaceのサービスが的を射たものであることは間違いない。今年7月、Rupert MurdochのNews Corp.はMySpaceの親会社を5億8000万ドルで買収した。これはMySpaceのトラフィックがGoogleを超えてから数カ月後のことだった。

 ミレニアルズが技術に強いのは遺伝によるものではない。この世代はコンピュータを自在に操るが、それは環境の産物であり、デジタル化の流れと共に育ったことによるものだ。しかし、情報化時代の申し子であることにはマイナス面も伴う。

 たとえば、子どもに陰惨なニュース報道を見せないようにすることはほぼ不可能だ。彼らはコロンバイン高校乱射事件、アンバー・アラート(子どもの誘拐情報発信システム)、同時多発テロ、そして少なくともひとつの湾岸戦争と共に育った。多くの親が誘拐や性的虐待を案じるあまり、子どもをなるべく室内で遊ばせようとしていることも、無意識のうちに、子どもがウェブ上で不快な事件を目にする機会を増やしている。

 ひとつ前の「X世代」にとっては、ショッピングセンターとカフェは家から逃れることのできる数少ない聖域のひとつだった。しかし、多くの店が未成年の出入りできる時間を制限するようになったため、若者はもっぱらサイバースペースで独立心を発揮するようになった。

 「若者たちはどこに行けば親の目から逃れられるのか。公共の場所にそれがないなら、デジタルの世界に作るほかない」とカリフォルニア大学情報学部の博士課程に在籍し、Yahooのバークレー研究所で働くDanah Boydはいう。

 Boydは1年間にわたって、10代の若者の技術利用状況を調査し、IMや携帯電話を使ったおしゃべり、ゲーム、LiveJournal等のツールを用いたブログ作成、MySpaceのようなネットワークでの社交が、活動の大半を占めていることを発見した。「MySpaceは友だちがいる場所であるだけでなく、親が眉をひそめる場所だ。それがMySpaceの価値をさらに高めている。MySpaceがクールでないなら、若者は利用しない。それだけのことだ」(Boyd)

 ミレニアルズに最も人気のあるIMツールは、America Online(AOL)のAOL Instant Messenger(AIM)だ。しかし、いつもの友だちから少し離れたいときや、母親や父親と話をするときは、YahooやMicrosoftのMSNを利用することもあるとBoydはいう。「大半の若者は携帯電話とIMチャットを組み合わせて使っている。会話の90%は中身がない。その日の出来事を思い出し、自分が住んでいる世界を理解するために話をしている」(Boyd)

 しかし、一見無駄話のように思える会話の中に、重要な情報が潜んでいる。以前の子どもたちは親や教師に尋ね、新聞を読み、ニュース番組を観ることでニュースを知り、物事を学んでいた。しかし、現代の若者にとっての情報源は、自分と同じ若者だ。

 「最後にいつ新聞を読んだかなんて覚えていない」と大学生のThomasはいう。

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