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本日の主要記事
Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編) - (page 5)
ブログと群衆の英知
Web 2.0時代の特徴として、最もよく語られるのがブログの台頭である。個 人ホームページはウェブの初期から存在したし、日記や個人の意見をつづった コラムは、そのはるか前からあった。では、ブログが今、これほど騒がれてい るのはなぜなのか。
ブログの基本は、日記の体裁をとった個人ホームページである。しかし、 Rich Skrentaが指摘している通り、ブログが時系列の構造を取っていることが、 「ささいな違いに見えるが、従来とはまったく異なる配信、広告、そしてバリ ューチェーンを生み出している」
ブログを特別なものにしている要因のひとつは、RSSと呼ばれる技術である。 RSSはウェブの基本構造に重要な進化をもたらした。ウェブの初期のハッカー たちは、CGIを使うことで、データベースと連動したウェブサイトを構築でき ることを発見した。RSSはそのとき以来の重要な進化である。RSSを利用すれば、 ページにリンクを張るだけでなく、そのページを講読し、ページが更新される たびに通知を受け取ることができる。Skrentaはこれを「インクリメンタル・ ウェブ」と呼ぶ。「ライブウェブ」と呼ばれることもある。
確かに、「動的なウェブサイト」(データベースと連動し、動的にコンテン ツを生成するサイト)が静的なページに取って代わったのは十数年も前のこと だ。ライブウェブの新しいところは、ページだけでなく、リンクも動的である 点にある。ブログにリンクを張るということは、変わり続けるページにリンク を張ることに等しい。個々の記事にリンクを張るときは、「permalink」を利 用する。ブログに更新があった場合は通知が届く。このように、RSSフィード はブックマークしたり個々のページにリンクを張るよりも、はるかに強いつな がりを生み出す。
また、RSSはウェブページを見る方法がウェブブラウザだけではないことを 意味している。RSSアグリゲーターの中には、Bloglinesのようにウェブベース のものもあるが、それ以外はデスクトップクライアントだ。頻繁に更新される コンテンツを携帯機器で講読できるようにしたものもある。
現在のRSSは、ブログの記事だけでなく、株価、天気情報、写真など、あら ゆる種類のデータの更新を通知するために利用されている。これはRSSの原点 に回帰することでもある。RSSは1997年に、ブログの更新情報を発信するため に利用されていたDave Winerの「Really Simple Syndication」技術と、 Netscapeの「Rich Site Summary」が合流することによって誕生した。Rich Site Summaryは、Netscapeのポータルサイトをユーザーがカスタマイズし、更 新情報を定期的に取り込むための技術だったが、Netscapeはこの技術に関心を 失い、開発はブログのパイオニアであるUserlandに引き継がれた(Userland はWinerが立ち上げた企業)。現在のRSS関連アプリケーションには両方の技術 の面影を見ることができる。
しかし、ブログを一般的なウェブページと異なるものにしているのはRSSだ けではない。Tom Coatesはpermalinkの重要性について、次のように述べてい る。
「……ささいな機能のように思えるかもしれないが、permalinkの登場に よって、ブログは簡単に情報を発信できるツールから、コミュニティが交錯し、 会話が生まれる場所に変わった。permalinkによって初めて、比較的簡単に他 者のサイトの特定の記事について意見を述べ、サイトの所有者と話をすること が可能になった。議論が生まれ、チャットが始まった。その結果、友情が芽生 え、あるいはより強固なものとなった。permalinkはブログとブログを結びつ ける初めての、そして最も成功した試みとなった」(Coates)
さまざまな形で、RSSとpermalinkの組み合わせはUsenetのNNTP(Network News Protocol)の機能の多くを、ウェブプロトコルであるHTTPに加えること になった。「ブロゴスフィア」は、初期のインターネットの社交場だった Usenetと掲示板のP2P版ということができるだろう。人々はお互いのサイトを 講読し、各ページのコメントに簡単にリンクを張ることができるだけでなく、 トラックバックと呼ばれる仕組みを使えば、他者が自分のページにリンクを張 ったことを知り、相互リンクを張ったり、コメントを返したりすることによっ て、それに反応することもできる。
興味深いことに、双方向リンクはXanaduのような初期のハイパーテキストシ ステムが目指したものでもあった。ハイパーテキストの純粋主義者たちは、ト ラックバックを双方向リンクを実現するための一歩として歓迎した。しかし、 トラックバックは厳密には双方向のものではない。双方向リンクと同等の効果 を生みだす(可能性のある)対称的な一方向リンクである。この違いはわずか なものに思えるかもしれないが、実際には非常に大きい。たとえば、相手の承 認を得なければコネクションを構築することができない「Friendster」「 Orkut」「LinkedIn」といったソーシャルネットワーキングシステムは、ウェ ブほどの拡張性を持たない。写真共有サービスFlickrの共同創設者である Caterina Fakeが指摘した通り、双方向の注目は偶発的にしか起こらないので ある(このため、Flickrではユーザーがウォッチリストを作成し、どのユーザ ーもRSS経由で他のユーザーが更新する写真を見ることができるようにしてい る。RSSに登録した場合、相手にも通知が行くが、承認を得る必要はない)
Web 2.0の本質が、集合知を利用して、ウェブを地球規模の脳に変えること だとすれば、ブロゴスフィアは絶え間ない脳内のおしゃべりを、すべてのユー ザーが聞いているようなものだ。これは脳の深い部分で、ほぼ無意識のうちに 行われている思考ではなく、むしろ意識的な思考に近い。そして、意識的な思 考と注目の結果、ブロゴスフィアは大きな影響力を持つようになった。
検索エンジンは、的確な検索結果を導き出すためにリンク構造を利用してい る。このため、適切なタイミングで、大量のリンクを生み出すブロガーは、検 索結果の生成に重要な役割を果たすようになっている。また、ブログ・コミュ ニティはきわめて自己言及的であるため、ブロガーが他のブロガーに注目する ことで、ブロガーの存在感と力は増幅していく。しばしば「反響室」と批判さ れるブログは、増幅器でもあるのだ。
もっとも、単なる増幅器であったなら、ブログはつまらないものになってい ただろう。しかし、Wikipediaが体現しているように、ブログでは集合知が一 種のフィルターの役割を果たしている。James Surioweckiが「群衆の英知」と 呼んだものが働き、PageRankが個々の文書を分析するよりも優れた検索結果を 生み出したように、ブロゴスフィアではユーザー全体の注目が、価値あるもの を選び出す。
主流のメディアは特定のブログを競争相手と考えているかもしれないが、こ の競争の手ごわいところは、相手がブロゴスフィア全体である点にある。これ は単なるサイト間の競争ではなく、ビジネスモデル間の競争なのだ。Web 2.0 の世界は、Dan Gillmorが「個人メディア(we, the media)」と呼んだ世界で もある。この世界では、一握りの人々が奥まった部屋で物事を決めるのではな く、「かつてのオーディエンス」が何が重要かを決定する。
(この続きは「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(後編)」をご覧ください。)

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