女性ベンチャーキャピタリストだから話せる、VCの魅力と苦労とは - (page 2)

永井美智子(編集部)、田中誠2006年12月25日 08時00分

勝屋:なるほど。では、VCにいて自分が役に立った、やっていて良かったと思ったのはどんな時ですか。

遠藤:役に立ったと思っているのは私たちだけかもしれないので、本当に役に立っているのか、常に自分の行動を振り返っています。

 ただ、今の会社では親会社が事業会社であることがすごく助かっていると実感しています。証券系VCや外資系VCにいた時にも個人的なネットワークを使っていろいろな企業や人を投資先に紹介してきましたが、あくまでも紹介しかできず、なかなかビジネスには結びつかなかったんです。

 でも今はグループ会社があって、現場の人たちと話をしながら具体的な先まで進めていけます。だんだんと思いが伝わって、「こういうことがやりたかったんだね」ということをインテックも私たちもお互いを分かっていけるようになったんですね。そこが一番役に立っているかもしれません。

落合:私も遠藤さんと同じで、投資先の企業にいろいろ紹介するのですが、なかなか先方に響かないことがあります。そういう時はすごくもどかしく感じます。逆に、ひとつの提案が喜ばれるとやっていて良かったなと思いますね。

 私はまだそれほど多くの経験があるわけではないですし、強力なネットワークを持っているわけでもないのですが、私なりにその会社にとって何が良いのかを追求した結果、その熱意が伝わったりすると本当に良かったなと思います。

長谷川:私はまだ経験が浅いので試行錯誤している日々なんですが、紹介したことに自分が満足しないようにしています。最初のうちは紹介だけで満足してしまっていたんですが、そうではなくて、その会社に対して自分がどう役に立てるかをいろんな方向から考えるようにしています。必ずしも結果が出なくても、その中で信頼関係が築かれていくのではないでしょうか。経営者との信頼関係をいかに築くかということは先輩からもよく言われています。

 それから、投資先と仲良くなりすぎないようにするのも大事だと思っています。距離感が難しい職業ですね。

勝屋:皆さんは日ごろどんなベンチャー企業に投資したいと思っていますか。投資の基準があれば教えてください。

インテック・アイティ・キャピタル遠藤氏

遠藤:使い古されている言い方かもしれませんが、やはり経営陣だと思います。たぶんこれは相性なんでしょうね。不思議なんですが、投資先とVCって似ていることがありますね。派手なVCが投資している会社は派手な企業が多かったり……。結局、この人たちと一緒にやっていきたいとか、この経営陣は好きだという気持ちが持てないとうまくいかないと思います。

落合:私も全く同じです。経営者とのコミュニケーションがきちんと取れる会社で、経営者が自分のやっている事業に誇りを持って熱意を私たちにぶつけてくるような方に魅力を感じます。何か失敗しても「あの人が失敗するなら仕方ない」と自分が腹をくくれる人じゃないとだめです。ですから最後の判断基準はやはり人になります。

長谷川:私も経営陣ですね。その経営陣がいかにそのビジネスに精通して、いかに信念を持ってやっているかということになると思います。あとは嘘をつかないということですね。これは私自身もそうなんですが、いろいろなことを言い合える関係が一番大切なんじゃないかと思います。

勝屋:ベンチャーキャピタリストとして、女性だから良かったこと、悪かったことはありますか。

遠藤:一番のメリットは、まだ女性が少ない業界なのですぐに覚えてもらえることですね。デメリットもあるんでしょうけれど、結果的にはプラスマイナスゼロのような気がします。

落合:世の中の半分は女性が占めるわけですから、男性の視点からは見辛い市場をカバーできるのはメリットだと思います。

 デメリットは、その社長の人柄をもっと知りたいと思う時、なかなかこちらからお誘いすることができないことです。男性同士なら気軽に「飲みに行きましょう」と言えるんでしょうが、女性からだと向こうも気を遣うでしょうから、コミュニケーションの取り方には気を使いますね。

長谷川:私は良いのか悪いのか、社内ではおじさんキャラだと言われていて、今まで一度も言い寄られた経験がないんです(笑)。ただ私自身、「だから女性の担当は嫌だ」といったことは絶対に言われたくないので、立ち振る舞いは自分なりに気をつけています。

勝屋:VC業界はまだまだ女性が少ないと思いますが、もっと増えるにはどうしたらよいと感じますか。

遠藤:私はあまり女性だからという視点がないんです。女性でも男性でも優秀な人には頑張って欲しいし、女性だからということにこだわりたくないんです。ですから、女性が頑張れる土壌を作ろうというようなことも考えたことがないですね。

 ただ、女性に向かない業界ではないと思うので、もし最初から女性には無理だと諦めている方がいるのなら、あまり性別は関係ない業界だと言いたいですね。

 企業を見ても、順調に伸びている会社はキーマンに必ず女性がいます。そういう会社は女性だから彼女たちを登用したわけではなくて、彼女たちが優秀だからというだけなんですよ。経営者たちに女性だからどうこうという視点はまったくないと思います。

落合:これは個人的な考えですが、新卒で入ると男性と同じ扱いなのでそれ程ストレスなく過ごせると思います。ただ女性は人生のサイクルがどうしても男性と違うので、そのあたりの社会や会社の理解があったらいいですね。日本アジア投資は産休制度が充実していて、子どもを何人も産んでその度に仕事に復帰している女性が多数いるので、そういう実績があることは心強いです。ただ投資部隊での実績はまだありません。ですのでそういう人が出てくれば若い人も安心して増えてくるのではないかと思います。

長谷川:素敵なベンチャーキャピタリストの方々がもっと目立つ機会があればとは思います。私自身が学生の時もキャピタリストの存在を知らなかったので、現在活躍している方々が目立つことが一番のアピールになるのではないかと思います。

日本アジア投資マネージャー
落合加奈恵

2001年上智大学外国語学部卒業後、日本アジア投資入社。国内投資を3年担当し、2004年よりグローバルリンケージチームへ異動。海外ポートフォリオのフォローや国内外の投資先をマッチングさせるリンケージ業務を担当する。2006年11月よりJAIC International (HK) Co., Ltd.Taipei Branchに異動。

趣味:テニス、書道

投資先:Afas Inc、デジタル・ナレッジアブコ、Vertical、他

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]