ベンチャーキャピタルは「もの言う株主」より「働く株主」であれ - (page 4)

永井美智子(編集部)、田中誠2006年11月02日 08時00分

勝屋:VCとして、一番嬉しいと思うのはどんな時ですか。

石部:株主ではありますが自分たちも汗を流しながら働いて一緒に事業を作っているので、そういう事業が立ち上がったり、会社が変化していったりすると、それ自体が十分な喜びですよね。もちろん、経済的な面では株式公開によるキャピタルゲインというポイントがありますが、事業のアウトプットの方が嬉しいですね。

穐田:株の売り買いで儲かれば確かに嬉しいですけど、それではデイトレーダーと変わらない。株の売り買い自体にそんなに喜びはないです。それよりも自分たちのサービスが世の中に広まっていったり、お客様が喜んだり、社員が喜んだり、出資者から感謝されたりという方が嬉しいですよね。儲かっただけではそんなに喜べないなあ。

石部:損した時は悔しいけどな。

穐田:それは悔しいですね。騙されたりするともっと悔しいですよ(笑)

勝屋:逆にVCとの付き合い方に関して、ベンチャー企業の経営者に何かアドバイスをいただけますか。

石部:VCとは素直に付き合うしかないんじゃないかな。「お金を出してくれる人」と見るよりも、「一緒に事業をやる人」という素直な目で見た方がいいと思います。

穐田:資金調達の観点で言うと、借りる場合と出資してもらう場合の2通りがありますよね。借りたお金は儲かれば返せるので、男女の関係で例えると交際しているレベルなんですよ。でも、株主になると返せないので、言ってみれば婚姻レベルなんですよね。だからきちんと調べてからの方がいいと思いますよ。

勝屋:コミットの度合いが違うということですね。では、これからVCを目指そうとしている人や、今まさに頑張っている若手のベンチャーキャピタリストに対してメッセージをお願いします。

石部:僕はベンチャーキャピタリストにもいくつか特色があると思うんです。資金運用を目的にしている人、事業化を支援したいと思っている人、実は自分が事業家になりたいと思っている人・・・。ですから自分がどういう立場なのか、あるいはどういうベンチャーキャピタリストになりたいのかをはっきり意識した方がいいと思います。それぞれにやれることが違ってきますからね。

 投資を受ける側も、そういうことがはっきりしている人の方がどう付き合っていけばいいかが分かりやすいと思いますよ。最近はとくにそれが大事なんじゃないかと思っていますね。僕自身は、最終的にはベンチャー企業の支援活動をやっていきたいと思います。

穐田:僕も基本的には同じ意見ですね。何をやりたいのか分からないとこちらも言いようがないので・・・。せめてウォーレン・バフェット(米国の著名な投資家)になりたいのか、ビル・ゲイツになりたいのかくらいは決めてね、という感じですね。それすら決まってない人もいるんですよ。「今は勉強です」と言われると非常に困ります(笑)

勝屋:石部さんはベンチャーを支援する立場でインキュベーションをしていきたいということでしたが、ファンドを運用する形でVCをやっていかれるのですか。

石部:できればファンド運用はやりたくないですね。自己資金で投資をしていく形になるでしょうか。ただ、その会社自体にいろんな株主が入ってくれば擬似的なファンドにはなると思いますが、ファンド、出資者、株主が利益相反するような状況はできるだけ作りたくないと思っています。

勝屋:穐田さんは以前、日本航空(JAL)の社長をやりたいとおっしゃっていましたね。

穐田:先ほども言った、働く株主というのがキーワードなんですが、投資と経営に関心があります。それを通じていろんな人を喜ばせたい、世の中のためになりたいと思った時に、JALはすごくイメージが沸くんですよね。うまくやったらいろんな人が喜ぶと思うんですよ。社員も喜ぶし、株主も喜ぶし、乗客も喜ぶ。みんな良い方向に向かおうとしているのに会社の内部でもめているようなので、もったいない。外部から株主兼経営者として入りたいと思うんです。

 初めて飛行機に乗った時の感激やワクワク感なんてすごくて、素晴らしいことをやっているのにもったいないですよね。給料はいらないからやりたいですよ。

穐田氏、石部氏、勝屋氏

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