“赤浦流”の投資スタイルでjig.jpは今世紀を代表する企業へ - (page 2)

別井貴志(編集部)、田中誠2006年07月07日 12時00分

勝屋:赤浦さんの投資のやり方に驚くのは、自分がやりたいビジネスのコンセプトが初めにあって、それを実行するにはどういう人材が必要で、どういうビジネスモデルが必要かを考え、即実行して組み立てていくのです。(経営(創業)チームもご自分で探しにいくくらいアグレッシブに)まさにjig.jpさんのケースも同様と聞いてますが、次はjig.jpという会社について改めて伺っていいですか?福野さん、どのような会社なのですか?

福野:簡単に言うと、ネットを使っていかに余暇時間を作るか、日々の生活を便利にするか、ということなんですが、それを考えた時にフォーカスしたのが携帯電話なんです。インターネットはいろんな情報が増えてきて便利になって、それをいかに活用するかということも1つのキーポイントだと思いますが、パソコンを持っている時間と携帯電話を持ってる時間を比べると、パソコンで仕事をしてる人は別にして、一番接触してる時間が長いのは携帯電話なんですよね。だから携帯電話のアプリケーションによってそれを実現しようと思ったわけです。まとめると、日々の生活を豊かにする速い携帯電話のアプリケーションを作って販売する会社ですね。

勝屋:赤浦さんとの最初の出会いはどんな感じだったんですか?

福野:福井に電話があったんですよ。ネットバブルの頃に起業しようかどうしようかと思いながら福井県にいたので、そういう人たちがいろんな会社に投資したいというブームがあったのは知ってたんですが、結構冷めて見てたんですよね。現実感がなかったというか。何かを作って、それを売って、それで儲けてというのをいかにやるかということしか考えてなかったですからね。だからそれまでベンチャーキャピタルの人と話す機会も全然なかったんですが、今から福井に行きますよ、みたいな勢いだったので、じゃあ僕も東京へ行く用事があるので明日はどうですか、というのが最初でした。

勝屋:当時、東京にはよく来ていたのですか? 私もその頃、新宿御苑の喫茶店ではじめてお会いしましたよね。赤浦さんの紹介で。

福野:その頃からお客さんは東京ばかりなので、毎週3〜4日は東京にいる生活をしていました。

勝屋:赤浦さんは何で福野さんとコンタクトしたのですか?

赤浦:ITmediaのモバイル版をよく読んでたんですね。そこでiアプリ開発講座という連載を福野さんがやってたんです。あと、ドコモ四国でやっていたビジネスiアプリコンテストで審査員もやってたんです。それで何かすごい、会ってみたいと思って電話したんです。

福野:営業の話でもなさそうだし、売り込みの話でもなさそうだし、よく分からなかったんですが、でも、いい人そうな印象はあって……。東京からわざわざ福井まで来るというのがまず驚きだったんですよ。そんなことまでしてくれなくても東京に行きますから、という感じで。

赤浦:最初に会って、こういうことやりたいという話をしたら、一瞬で意気投合して、1〜2時間話をして、その日のうちに握手して、よしやろうって決まったんです。

福野:赤浦さんの話もその頃自分が思っていたことも等しくて、エンタメじゃないツールをビジネスマンがより便利に使うことで生産性を上げる、そういったツールを作りたい、ということだったんです。それをやってる会社はないだろうと思いましたしね。自分もエンタメ系のソフトをやってたことはあったんですが、あまり興味がなかったんですよ。自分が携帯電話を商売にしてるくせに、パソコンを使ってる方が多くて、何で携帯電話が使えないのか。それはそういうソフトがないからだ。それは作らないとなあ、と思っていて、そこで赤浦さんと一致したんです。
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勝屋:まさに運命の出会いですね。赤浦さんの最初の印象はどうでしたか? 率直に話してください。

福野:熱意があって、コミット感が強かったですね。自分のお金で自分の責任でこうやるんだ、というところが、一緒にやりたいなと思う部分でした。ベンチャーキャピタリストと言われる人と最初に話をしたのが赤浦さんだったので、僕の中でベンチャーキャピタリストというのは赤浦さんみたいな人だとずっと思っていたんですよ。最近、いろんな話を聞いていく中で、実は珍しい人なんだなということが分かってきましたけど(笑) でも、もし自分がそういう立場になった場合にはきっと赤浦さんのような関わり方をして、自分の経験を活かして若い人を助けてあげるということをしたいと思うので、そういう意味でも共感できました。

勝屋:どういう時に赤浦さんがいてくれて助かったなと思いましたか?

福野:一番助かるなと思うのは、いろんな話が来て、そっちがいいかもな、なんてブレかける時ですね。そこじゃない、ブレないことが大事だ、これが本質でしょ、ということをきちんと言ってくれることが一番助かりますね。毎週、会議をやっているんですが、その会議にはほぼ毎回出席してくれています。そういう現在の状況をひとつひとつ確認していくという習慣を提案してくれたのも赤浦さんですし、いろいろアドバイスしてくれるのも赤浦さんです。会議の時間だけでなく、重要な局面ではこうした方がいいのではないか、こういう方法もあるなど、適切なアドバイスをくれます。僕が東京に来るのは週に何日かなんですが、来ている間はほぼ一緒にいるような状態でずっとやってきている感じですね。

勝屋:なるほど、お金以上に一体感と適切なアドバイスも助かるんですね。

福野:そうですね。出会った頃、自分でもやりたいなと思っていながらできなかったのは、自信がなかったからなんですね。作ることはできるけど、作っただけでは売れないじゃないですか。売り方も分からないし、どう経営していくかも自信ない。それを形にしていく部分で赤浦さんの力は大きかったんです。足りない部分を補ってもらえて大感謝ですね。

勝屋:経営に関することをいっぱい赤浦さんに学んだんですね。

福野:もともと社長はしていましたが、それまでの仕事とはまったく違うんですよね。新製品を作ってそれをどうお金に変えていくかというような販売戦略も必要ですからね。それまでは自宅でこんなことやってますと言うと、じゃあこういうことやって欲しいというような話が来て、それをやればいいだけでしたからそんなに考えなくてよかった。自分の予測の範囲でできたんです。でも、新製品を作ってそれをいかに売っていくかという部分は赤浦さんに教わった部分が多いですね。

勝屋:赤浦さん自身はどんな経験をして、福野さんに経営アドバイスをできるになったのですか?

赤浦:学んだという意味ではやはりサイボウズのときの経験は大きいです。サイボウズの中でモバイルの事業をやろう、モバイルアプリを強化しようとずっと言い続けてきたんですが、なかなか動きづらくて、だったら本業はベンチャーキャピタルなので、自分で立ち上げようと思ったんです。でも、ほとんどトライアンドエラーで福野さんと一緒にやってきたという感じですよ。お客さんの声を聞いて開発に活かそうという基本方針があっただけで、あとはそれに沿ってやってきただけ。

 だから、一般的なベンチャーキャピタルのイメージと僕がやってることって違うと思います。会社に役員がいて、それぞれが担当している仕事が違うというだけなんです。一緒に会社を作って、役割分担をして、信頼関係を持って会社を運営しているだけなんです。ベンチャーキャピタルだから特別なことをしているわけではないんですよ。ただ、最初に福野さんと会って握手した時からやりたいことはまったくブレてないですね。その中で自然にいろんな人が集まって来て、いつの間にか良い会社になったなという感じです。

勝屋:赤浦さんはベンチャーキャピタルとベンチャー企業との関係の理想形についてどう思うのか? 実際、赤浦さんは投資先とどう付き合ってますか?

赤浦:良い悪いは別にして、僕が嬉しいのは、みんなに僕をベンチャーキャピタルと思われないのが嬉しいんですよ。社員みんなが僕のことをただの投資家だと思ってたとしたらそれは寂しいですね。

福野:僕も赤浦さんも、会社に対して投資してるという意味では同じですからね。自分にできることはモノを作っていくことで、赤浦さんはその経営戦略的な部分を担っている。役割が違うだけなんですよ。一般的なベンチャーキャピタルのイメージとはズレてるかもしれませんが、パートナーというか、一緒に事業をしている仲間という感じですね。

赤浦:そう思ってもらえると一番嬉しいですね。

株式会社jig.jp 代表取締役
福野泰介

2003年5月に株式会社jig.jp 設立し、代表取締役社長就任。2004年10月に携帯電話で初めてフルブラウザ「jigブラウザ」を発売。携帯電話向けフルブラウザの更なる使いやすさと便利さを求めて「jigブラウザ」の改良に注力している。

趣味:バドミントン、スノーボード、ピアノ

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