MySpace元会長が立ち上げた謎のネットメディア企業--軍資金2億ドルの使途は? - (page 2)

坂和敏(編集部)2006年11月16日 20時16分

 まず、同社のウェブサイトにいってみると、「9月下旬に1億ドルを調達した」というプレスリリースが目に付いた。出資者は3i、Oak Investment Partners、Spectrum Investorsの3社。いずれも私ははじめて目にする名前で、Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)Sequioa CapitalAccel Partnersといったいわゆる「金看板」ではないことだけはわかるが・・・(現時点ではそれ以上はなんともいえない)。

 また、経営陣の顔ぶれを見ると、eNomというドメイン名登録業者の出身者が複数いることに気付く。さらに、Demand Mediaが2006年5月の設立であること、同社のポートフォリオのなかには(HillClimb Mediaの買収で手に入れた)「Trails」「AllGetaway.com」「Golf Link」「eHow」などがあることもわかる(これらが「ニッチなバーティカルサイト」ということなのだろう)

 ちなみに、旅行ガイドの「AllGetaway.com」とゴルフ関連ガイドの「Golf Link」はともにディレクトリ(電話帳)のような内容で、「News」のページにならぶ見出しも単に他のサイトへリンクだった。また「eHow」サイト(新たに「weHow」という新版も公開されている)は、About.comに似た感じの「ハウツー集」を集めるCGMサイト。これらのサイトには共通するのは、GoogleのAdSenseをはじめとして、他サイトへの誘導から利益を得られる仕組みを収益源としている点だ。

 Flashgames.comは、こうした仕組みの利用が徹底している一例だろう。実際にアクセスすると一目瞭然だが、このサイトにはゲームなどまったくなく、単にリンク集が並んでいるに過ぎない。ところが、The Mercury Newsの提供する「SiliconBeat」というブログ(「Demand Media raises $120 million for a bunch of shell Websites」)によると、このリンク集サイトが広告手数料などで年間15万ドルを超える収益を得ているという。ちなみに、上記ブログ記事は、「MySpace.com元会長のRichard Rosenblattが、Demand Mediaという会社の設立資金として1.2億ドルを集めたが、この会社は何の変哲もないウェブサイトをたくさん買い集めたり、つくったりすることを目的としており、それらのサイトには自前の本物のコンテンツをつくるスタッフなどひとりもいない」と皮肉たっぷりな書き出して始まっている。

 以上のようなことから、このDemand Mediaという会社の狙いが、従来のメディア企業のサイトだけでなく、ブログネットワークなどとも違ったものであることが浮かび上がってくる。「チリも積もれば・・」の言葉ではないが、超低コストのCGMサイトがビジネスとしてうまくまわれば、運営者側にとってはこれほどおいしい話もないだろう。

 Googleや他の企業の広告配信の仕組みから得られる収入は、ブログやユーザー主導型ニュースサイトなど、新しいメディアの隆盛を支える重要な存在だ。そして、それを徹底的に利用しようとするDemand Mediaの狙いは、今後のネットメディアの方向性のひとつとして興味深い。同時に、Demand Mediaの狙いがヒットし、「Flashgames.com」のようなリンク集や「Golf Link」のようなディレクトリが「次世代メディア」の主流になるとしたら、その時は私は調べ物と買い物以外にはウェブを見なくなるだろう・・・そんな考えがいま頭をよぎった。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]