全方位かピンポイントか:成功と失敗に学ぶベンチャー創業6つの教訓 - (page 2)

文:Jawad Shuaib 翻訳校正:吉井美有2007年02月27日 08時00分

3.焦点化が鍵を握る

 企業、その中でも特に大企業は、業種を広げようとする自然の傾向を持っている。例えばGoogleは検索で知られているが、「ウェブ」に関するものになら何でも手がけている(2)。性急な拡大は、歴史上ほとんどすべての帝国とその軍隊を滅ぼしている。競争環境では、「多く」をねらった結果はしばしば「少なく」終わる。「多く」を求めることで焦点が失われてしまうからだ。

 大企業は、自社のブランドを使って参入し、マーケットリーダーから市場シェアを奪おうとするが、新興企業は新しいカテゴリーを切り開いて大ヒットを手にする。焦点を絞った特定市場で新興企業を運営する利点は、そのサイトを訪れる全ての人が、提供されているものを欲しいと思っていることだ。これはくさびの先端になることにほかならない。この利点は、新興企業が「何でも、誰でも」を目指そうとすると、台無しになる。市場が大きいほど、企業は専門化する必要がある。生き残りをかけた競争の中では、同じ位置を占める新興企業は2つとない。もしそうしようとすれば、一方の企業が他方の企業を絶滅に追い込むだろう。

4.小さすぎる市場などというものはない

 世界規模でみると、インターネットユーザーが10億人にものぼる。したがって、ウェブはどんな規模の市場についても、大きなチャンスを与えてくれる。例えば、インターネット上にはペルシャ猫の飼い主が何千人もいる。したがって、ある新興企業の特定分野のソーシャルネットワークがペルシャ猫の飼い主向けのものであれば、潜在的な市場規模は数千に及ぶ。これは小さすぎるターゲットだろうか?MySpaceにとっては確かに小さすぎるだろうが、特定分野のソーシャルネットワークにとってはそうでもない。特定分野を狙う新興企業のよいところは、どんな市場も小さすぎることはないということだ。むしろ、市場規模が小さくなるほど、大きな競合企業がそのパイをめぐって参入してくるおそれも小さくなる。

 競争という面からは、どんなブランドも大企業も新興企業も、市場の100%を支配することはできない。この現実を一度受け入れれば、特定市場を見つけるのは非常に簡単になる。「どんなに小さいマーケットであっても捨てるな」という悪魔のささやきに耳を貸す必要はなくなる。すべてのビジネスが特定のビジネスだというのが真実なのだ。唯一の違いは、リーダー企業の小規模市場は、他社が支配する小規模市場よりも大きいということだが、それもまた小規模市場であることにかわりはない。特定のユーザーに固有のニーズを育てることが、ほとんどの成功している新興企業の共通のテーマになりつつある。

5.バカみたいな単純さ

 「検索ボタンをクリックしたとき、ユーザーは何を期待するか?」- Phil Butler、Profy.com

 「他のすべての条件が同じなら、最も単純なものが最良のソリューションであることが多い」- オッカムの剃刀(3)

 iPodの機能の80%を理解するのに、どれだけの時間が必要だろうか?せいぜい2分間だろう。Googleの機能の80%を理解するには、どれだけの時間が必要だろうか?5秒もあればいいだろうか。iPodには1000の部品があり、Googleの背後で動いているコードは1000行だ(4)。それでも、ユーザーが思い立ってからこれらの技術をたどるのに、3分もかからない。これが単純さの法則だ。頭が麻痺するくらい単純にせよ。余分なクリックが死を招く。

 われわれは、ソーシャルネットワークの退屈さは、刺激が足りないのが原因だと考えがちだ。一種の情報不足だ。しかし、実際には多くの場合、退屈さは過剰な刺激や情報の過多によって起こる(過剰な広告が原因のことが多い)。情報には、エネルギーと同じように、エントロピーの増大に伴って雑音と冗長性だけになっていく傾向がある。複雑なインターフェースは誰のためにもならない。

 焦点を絞っていない新興企業は、ウェブページに余分な機能を無理に備えることで、物事を複雑にしてしまう。そして、ユーザーは自分の疑問をなくすために思いもしないことをするものだ。

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