人材採用と育成には機会の提供が不可欠
セッションの参加者より多数寄せられた質問の中でも特に際だっていたのは、人材の採用についてだ。特にミドルマネジメントの処遇や、能力と企業文化のバランスをどれくらい兼ね備えているかということなどについては、社員のモチベーションや社員同士の連携、企業全体の志気にもかかわってくる。
人材について江幡氏は、「一定のポジション以上の中途人材がしっかりと現場にとけ込むには多くの課題がある」と指摘した。そして、「旧来の人材と融合するためにもっともシンプルなことは、中途人材がきっちりと実力を発揮して成果をあげることだ」とした。
「機会の提供と環境を整備することがもっとも重要だ」というオールアバウトの江幡氏 |
うまく人材を融合させるには、会社のサポートが必要になる。これについて江幡氏は、「周囲の関係者とミッションを共有し、上司を中心として中途人材が立ち上がり時期に成果を出せるようにサポートすることだ」と説明した。成果が出れば、周囲とその成果を共有できるような仕組みを作ることで、その人の果たす役割を周囲の人たちも実感できるので、とけ込みやすくなる。
石坂氏も「企業の成長に合わせると、どうしても外部から中間管理職を採用せざるを得ないし、できるだけサポートする」とした上で、「採用された側は期待に応えようと一生懸命がんばる。そのことが期せずしてテンションの元になってしまうことがあるので、軟着陸させるためにトップ側が気を遣ってサポートしなければならない」と話した。オールアバウトと同様に、ミッションの成功を皆で共有する、業務外でのコミュニケーション機会を作る、といった具合だ。
さらに、たたき上げと中途採用の人間が混在している場合には、横の連携でタスクや課題を与えて提案させる「分科会」も仕掛けている。石坂氏を除いたリーダー同士と中間管理職以下の人たちが、横の連携とコミュニケーションをとる場として機能させるのだ。業務とは別のテーマとタスクを与え、組織としてどう問題を解決するかを考案してもらう。
また、社員が働くモチベーションの1つに「収入」という側面がある。上場企業ならばストックオプションを導入できるが、オールアバウトとGDOではどのような制度内容なのだろうか。
オールアバウトは、創業時からIPO直前まですべての社員にストックオプションを付与している。オーナーシップを育てる目的もあり、1株でもいいから全員に配りたいという意向だ。
GDOは、上場前に幹部クラスの優秀な人材を採用する上で、給与ではまかなえない部分をストックオプションで補った。全員に支給するのは「その中での不公平感を生むのでは」という考えから、ある程度の責任を負う人向けに付与するという方針を貫いた。
ストックオプションについての基本的な考え方は上場後も変わらず、ある程度の行使や消化を計算に入れながら毎年見直している。現在はGDOそのものの価値を向上する段階であり、上場後も上がる余地は十分にあるという考えからストックオプション制度を未だ導入している状態だ。しかし、数年のうちには持株会のような別のインセンティブへと切り換えなければならないと考えているという。
最後に両社が抱える今後の課題について話がおよんだ。江幡氏は「成長期におけるミドル層への分業」を挙げた。企業が成長期に入ると、「社長がすべての意思を決定するのではなく、いかにしてミニ社長を何人も生み出せるかというフェーズになってくる」と言う。そのためには、機会の提供と環境を整備することがもっとも重要だと指摘した。
石坂氏は、「人材採用やモチベーションの工夫が課題だ」と捉えている。これまでは、システムエンジニアを採用したくても「ゴルフをやらない人は応募してこないのではないか」という不安があった。しかし、現在は具体的な成果を得られる特定の分野で技術力を発揮することがやりがいにつながるという意見もある。石坂氏は「ゴルフを前面に出すのではなく“GDOシステム”とでもいうべきものを設ければ採用に違いが出てくるのではないか」と考えている。そして、「やるべきことをより明確にすることで課題を克服できる」とした。
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