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「スペース提供」から「コンテンツ提供へ」--メディアの広告ビジネス
小著「次世代広告コミュニケーション」で、「クロスメディアからクロスコミュニケーションへ」というフレーズで、考え方としての「クロスコミュニケーション」を標榜した。つまり、メディア配分からスタートするのではなく、企業のマーケティングメッセージを消費者が求める(楽しめる)ブランデッドコンテンツに変換して、それを「どんなコミュニケーションチャネルにどういう役割をもたせて構成するか」という作業を「クロスコミュニケーション」と呼ぼうと提案した。
CGMという言葉も、欧米ではUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテント)と本質的なワードになっている。ユーザーが求めているものは広告でもメディアでもなく、コンテンツであり、我々はブランデッドコンテンツをつくり、発信しなければならない。
こうした概念的な話もさることながら、一方で昨今のクロスメディアと称しているもののほとんどが、メディアのセリングサイドからだということに気付く。「組み合わせて効果的」という売り文句は、その中身がないのにどうして効果的か説得力に欠く。
今、「クロスメディア」はメディアを売る側のワードだ。そして「クロスコミュニケーション」はバイイングサイド(広告主側)のワードといえる。
メディアのセリングサイドとバイイングサイドをことさら対立させて見るつもりはないが、特にインタラクティブ広告ビジネスでは、メディアスペースありきで発想していくことの矛盾やミスマッチを感じることがある。
特にネット広告は極めて可変的なもので、非常に多くの広告メニューを生み出すことができる。現在、ネット広告にはモバイルを合わせると実に1万以上の広告メニューが存在する。このうち1度も売れた試しがないものもおそらくかなりあるだろう。
これだけ広告スペースがつくれるのだから、ネット広告の場合もっとバイイングサイドの理屈やニーズに合わせたスペース開発が可能なのではないかと思う。
特に今後ネット広告を本格使用するであろうマスマーケターによるブランドコミュニケーションでは、買い手はまずブランデッドコンテンツを開発しつつ、それに合わせたメディアプランニングをする。こうした広告主に対して最初からエクセル表に既存のネット広告メニューを列記したものをメディアプランだという提案はなかなか通じないのではないだろうか。広告会社が企画したコンテンツを前提にしたスペース開発、またはメディア側が一緒にコンテンツ開発に取り組むことが必要だ。
それだけ柔軟な加工が可能なメディアだけに、そうした努力がネットメディアには不可欠である。ネットのメディア会社はかなりのレベルで広告会社に近い機能も発揮しなければならない。これができるネット媒体社とそうでない媒体社の差は大きく開くだろう。従来のようにダイレクトマーケターに顧客誘導機能を売っていれば良いという時代は終わっている。
メディアの広告ビジネスへのスタンスは単なる「スペース提供」から「コンテンツ提供」へシフトする必要がある。そしてこれは何もネットメディアだけの話ではない。メディア(というかパブリッシャー)は、従来の広告会社機能を一部取り込んで、自らのコンテンツ開発力を広告ビジネスとしての収入に変換することに傾注すべきだろう。もちろんすべてがコンテンツ提供モデルにシフトするわけではないが、パブリッシャーのコンテンツはネット社会ではコンシューマーから対価を獲得しにくくなっている。情報の消費者から対価を得るよりは、CGMをコンテンツのプロモーションツールと考え、広告主企業にうまく加工したコンテンツを売ることを志向した方がいい。
例えば「雑誌」というメディアの編集者たちはビークル単位では、一定のプロフィールのターゲットが反応するコンテンツ開発のプロ集団だ。この価値は少しも落ちていないが、雑誌というメディアでコンテンツ流通させる方法は販売チャネルの減少や、情報の消費スタイルの変化で、たいへん難しくなった。ネットでも生かせるが、従来型のウェブサイトに記事を展開し、「バナースペースを売ってください」では限度がある。広告主企業のオリジナルコンテンツの開発者として、その能力(情報深度の深いコンテンツ開発力)を売ることを考えるべきである。
その意味で、これからは広告会社的マインドをもつ人材がメディア会社には必要である。コンテンツをブランデッドコンテンツという商品にするプロデューサーである。
クロスコミュニケーションというバイイングサイドの発想で取り組むことが、結局メディア側の収入を上げる作業になる。セリングサイドが本当に利益を上げるためには、バイイングサイドの考え方をしっかり理解することが重要だ。
横山隆治
株式会社アサツーディ・ケイ
執行役員 ADKインタラクティブCOO
青山学院大学文学部英米文学科卒。1982年に株式会社旭通信社入社。営業職を経て、1996年同社サイバービジネス開発室室長。同年デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社の設立に参画。設立時に同社代表取締役副社長に就任。黎明期にあったネット広告の普及、体系化、理論化に取り組む。JIAA(インターネット広告推進協議会)のガイドライン作成や新人研修テキストなどの多くを執筆するほか、著書多数。2006年7月からADKインタラクティブCOO兼デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社取締役。「インターネット広告革命」(2005年宣伝会議)、「Mobile 2.0」(2006年インプレス)、「究極のターゲティング」(2006年宣伝会議)、「次世代広告コミュニケーション」(2007年翔泳社)など。
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