絶大なる販促効果を持つメディアにどう対抗するか

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年11月05日 11時50分

 米国では、行動ターゲティング広告たる手法が定着化しつつあります。行動ターゲティング広告とは「クッキーなどを使ってユニークブラウザを特定し、エンドユーザーの行動を収集・分析することによって、行動・趣味趣向予測をもとにしたより精度の高いターゲティングを実施する広告手法のことです。それはブランディング目的・エンドユーザーのアクション目的の双方で利用されています」ということであります。

 日本においては、その目的の違いにより、新規エンドユーザーの掘り起こしを主たる目的とするものを「ターゲティング」、既存エンドユーザーへの再訴求を主たる目的とするものを「リターゲティング」と呼んでいるそうです。

 米国においてインターネット広告市場の約7%になった同広告手法は、全広告主のうち25%が利用しているそうです(2006年データ:2006年4月 eMarketerおよびJupiterResearch調べ)。この手法の効果事例の公開資料をみると、どの業種カテゴリにおいても通常バナーより広告認知効果が高かったり、コンバージョン率(申込率)においては通常バナーの2倍以上もだしており、今後最も注目される広告手法であると私は考えております。

 一方、米国において、大手ポータルサイトが、ショッピングサイトに対し買収を仕掛けるという動きがあります。おそらく実際の購買情報の収集場所としてショッピングサイトが必要なのでしょう。つまり、大手ポータルサイト上でエンドユーザーが行動する広告にひも付くデモグラフィックデータと、ショッピングサイトが持つ購買データを結合すれば、エンドユーザーの川上データから川下データを統合することが可能であり、そのデータを分析することによって得られる方法論の確立は広告主の一販促チャネルとして自立することを意味するからだと思うのです。

 現在日本においては、ヤフージャパンを初めとするポータルサイトは行動ターゲティングを強化しています。広告代理店各社は、その効果の良さから一斉に自社広告主に販売活動を始めていると思います。広告代理店のその積極活動は、一層エンドユーザーの広告にひも付く行動データをメディア側に蓄積するでしょう。

 一方、ヤフージャパンは、最終的な購買チャネルとして、ヤフーショッピングやオークションというプロパティを持っています。つまり、例えばですが、彼らはエンドユーザーがヤフージャパンに入る入口からユーザーアクションという出口までの行動データを結合することができるわけです。「ここにどれくらいのインプレッションをこのように出稿すれば、自社のショッピングプロパティでどれくらいの確率で販売できるはずである」という仮説は、広告主でもなく広告代理店でもなくメディア自体が持つことになるのです。

 このことを考えると、エンドユーザーの川上から川下までの行動データを持つメディアは、最強の販促機能を持つ存在になるのかもしれませんね。このチャネル取引には、広告代理店は入っていけるのでしょうか?

 広告主とメディアの中間に存在し付加価値を提供し続けなければならない広告代理店、たとえメディア(チャネル)内で完結する取引であっても、その取引におけるクリエイティブ性や掲載効率性等をたえず吟味し、広告主の心を引き寄せてなければならないということです。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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