エンドユーザーの「移動中」を攻略する時代

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年07月02日 12時54分

 「家族揃ってお茶の間でテレビを見る」時間数は、以前より確実に減ったような気がします。このテレビ視聴時間の増減に関しては、現在様々言われております。

  • 「(平日テレビを見る方の)テレビを視聴している平均時間では、『2時間〜3時間未満』(27%)、『1時間から2時間未満』(25%)が多くなっている」(MyVoice、「テレビの視聴スタイル」調査
  • 「調査は2006年12月に18歳以上の米国人に行われ、(中略)。YouTubeを頻繁に利用するユーザーの約3分の1にあたる32%は、このために『テレビを見る時間が減っている』と回答した」(INTERNET Watchニュース 2007年1月30日、米調査会社HarrisInteractiveに関する記事の引用)
  • 「ネットまたは携帯機器で最低でも週に1度はビデオを視聴している人の5人に1人は、その結果テレビの視聴時間がかなり減ったとし、23%は若干減ったと回答」(IT media NEWS 2006年11月28日
  • 「マクロミルは、(中略)20代〜50代のHDDレコーダー所有者を対象に実施した調査結果を発表した。それによれば、HDDレコーダーの購入後、録画視聴も含んだテレビ視聴時間が『増えた』と回答した人は18%、『やや増えた』は37%で、視聴時間が増加したと答えた人は合計55%となった」(CNET Japanニュース 2006年7月28日

 上記のように、増える要因、減る要因様々言われているのが現状であります。それは、映像というものが、今後テレビを介したHDDで見られるか、その他のデバイスで見られるか、が鍵をにぎっているような気がします。

 広告市場にとって、一番大きな市場であるテレビの動向を考えることは極めて重要なことです。しかし私はもう一つ大きなことを忘れちゃいけないと思うのです。本日の話は、極めて個人的な見方かもしれませんがご容赦ください。以下は私の1週間における平均的なメディア接触内容です。

  • 新聞:1週間に3時間。2紙を移動中(通勤時間が主)に読む。
  • 雑誌:1週間に1時間。主に移動中(出張等)に読む。
  • ラジオ:1週間に20分。移動中(週末自家用車運転中が主)に聞く。
  • テレビ:1週間に3時間。毎日のニュースと週末の娯楽番組等を見る。
  • SP媒体:1週間に1時間。移動中(中刷・看板等の接触が主)に見る。
  • PC:1週間に12時間。仕事のメール等が8割。その他は検索・ポータル内のコンテンツを利用する。
  • 携帯(通話以外):1週間に3時間。移動中にメールやコンテンツ閲覧等を行う。

 これを見ると、(私が特に多いのかもしれませんが)「いかに移動中にメディアに接触しているか」ということです。しかもテレビ・PCを除き、殆どのメディア接触が移動中であります。今後、ワンゼグ、小型PC等が流行ってくると、移動中に見たいメディアがまた増えるわけです。

 「メディアは家でみるもの」の古臭い考えは陰をひそめ、インターネットは、普及理由通り「どこでも」「いつでも」を可能したと思うのです。その意味では、エンドユーザーの「移動中の『こまぎれ』時間」を利用したメディアサービスは、今後一層可能性がでてくるわけです。

 メディア別に考える市場発想も良いとは思いますが、広告市場をユーザー行動別に大別して考えることこそ広告業に携わる人にとって重要なことと思います。

 最後に、以下参考までに移動中の時間とはどういうことなのか、私見を書いておきます。

  • 「まとまり時間」
    ある程度長く連続性のあるまとまった時間である。多くのユーザーは、予測可能なまとまった時間であることから、目的ある行動を行う。例)通勤電車の中で新聞を読む20分間。出張中の飛行機の中で雑誌を読む30分間。など
  • 「こまぎれ時間」
    短い時間で、秒単位から数分。ものごとに集中できない時間の場合が多い。また次の行動に移すことができない「待っているだけ」の時間の場合もある。例)エレベーターを待っている数秒。駅で電車を待っている数分。街中を移動している数十分。トイレの時間。地下鉄で数駅移動している車内数分。など

 上記の時間は、おそらく何かしらのメディアに接触していると思います。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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