コミュニティーマーケティングに強くなる--前編

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年04月16日 11時00分

 「イベント」は、4マス媒体に比肩する第5のメディアとして、今や広く知られています。広告ビジネス入門(社団法人日本広告業協会発行/平成8年第11版)によりますと、「イベントの基本的役割は、売り手側、買い手側の人達と商品を動かし、出会いの場を設けて売買の機会をつくることである。(中略)イベントのテーマの共有がもたらす新しい(人々の)関係づくりが、イベントによって共感にまで発展できれば、その関係はより強固なものになる」と述べています。

 つまり一方向的な4マス媒体に対して、当時第5のメディアと言われたイベントは、「企業とエンドユーザー(以下ユーザー)またユーザー間のインタラクティブ性」があると言っているのでしょう。またその特性を持つイベントは、4マス媒体と密接な関係を持ちながら発展してきたと思うのです。

 さてインターネットの世界では、このイベントのような特性を持つメディアまたはツールはあるのでしょうか?。おそらく類似しているのは、ユーザーが集まるという共通性から「ネット上のコミュニティ」であると思うのです。(以下サイバーコミュニティと呼ぶ)。

 実際にサイバーコミュニティーを使ってユーザー参加型のネットイベントを実施する事例もぽつぽつ出始めています。早稲田大学の根来教授と私が書いた論文で「サイバーコミュニティを使ったニーズ調査の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年春季大会発表)というものがありますが、その中でサイバーコミュニティーとは、「ある価値・テーマに興味のある人達が集まるネットワーク上の場所」と定義付けをしています。

 具体的には、SNS、ブログ、掲示板、チャットなどのことを指します。しかし、このサイバーコミュニティーをイベントのように取扱うことに広告代理店は基本的に苦手意識を持っていると思うのです。Web 2.0時代に、広告代理店は、その分野を攻略した方が良いと思うのです。

 まずこの前編では、基本的な知識をお伝えします。私の論文によるとサイバーコミュニティーは以下4つの特性を持っています。(1)情報(ユーザーの意見)の公開、(2)情報の蓄積、(3)情報発信・着信の自発性、(4)情報の相互参照性、です。

 第1に、サイバーコミュニティーを攻略するには、この特性を深く理解する必要があります。ユーザーの意見がインタラクティブするサイバーコミュニティーは、この特性を理解して、かつ対処しないと、暴走する可能性もあります。

 次にサイバーコミュニティーの機能を理解することです。現在存在する(していると思われる)機能としては大きく4つあります。(1)開発機能、(2)流通機能、(3)マーケティング機能、(4)製品そのものとしての機能です。この4つの機能は、現在、観察できる機能であり、今後は違う機能もでてくる可能性も否定はできません。また1つのサイバーコミュニティーが2つ以上の機能を持つ場合もあり得ます。1つ1つ以下説明致します。

  1. 開発機能:サイバーコミュニティ内でユーザーが対話することによって物・サービス等の生産を行うもしくは生産のヒントを提供すること
  2. 流通機能:サイバーコミュティ内でユーザー同士が物・サービス等を流通させること
  3. マーケティング機能:サイバーコミュニティ内のユーザーの対話が、結果として口コミ創出や企業のマーケティングニーズの発掘等に影響をすること
  4. 製品そのものの機能:サイバーコミュニティが、上記機能を持たず、単に製品そのものであること

 企業がサイバーコミュニティーに興味を持つときは、その機能を企業のマーケティング活動に取り込みたい時であり、コミュニケーションを支援する広告代理店にとってそれを深く理解しなければならないと思うのです。再来週の「後編」では、サイバーコミュニティーのマーケティング機能を掘り下げ、実際の事例を紹介していきたく思っております。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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