Web 2.0ビジネスの答えは過去の教科書に - (page 2)

 インターネット普及率の調査や考え方には色々なものがあるが、仮に総務省の統計を見ると、世帯普及率が80%を超えた、つまり、ほとんどの世帯にインターネットが普及したと言えるのは2002年以降だ。さらにブロードバンドの普及で、個人が時間を気にせずインターネットを使えるようになったのはつい最近のことだ。同様に、インターネット上でビジネスするための法制度などが整備され始めたのも2000年以降のことだ。

 こうしたことを考えると、いわゆるインターネットバブルの時期にネットビジネスや、ネット企業に関して評価するには早すぎた。本当は僕たちが思っているより、インターネットの普及やネットビジネスの発展はずっと遅かったのだ。

 この現実は、先に挙げた識者たちの予見した未来の一部がやっと実現し始めたことを示していると考えられる。ただ、彼らがすべて正しかったかというと、それも少し違うように思う。現実から一番の違いを考えると、実際のインターネットビジネスのマーケットは彼らが思っていたよりも大きかった可能性がある。

 これまでの教科書やそれから派生して広まった考え方に、「市場でトップシェアをとれないネット企業は生き残れない」というものがある。しかし、2004年後半以降、相次いで上場を果たしたエキサイトやディー・エヌ・エー(DeNA)、カブドットコム証券などは、いずれもポータル、オークション、オンライントレードの分野のトップ企業ではない。これは、ネットビジネスの成熟と共に、市場シェアが2番手、3番手の企業であっても十分に生き残っていけるようになったことを示している。

教科書を読み返せ

 当然、インターネットが社会を変えるほどのインパクトをもつには、(1)誰もが簡単で快適にアクセスできるインフラとしてのインターネット、(2)個人が簡単かつ自由に情報発信できるような仕組み、(3)インターネットというインフラと個人の自由な情報発信を活用したビジネスが必要であった。これに対応するブロードバンドの普及や、ブログに代表される個人用ウェブサイトの発展、そしてこれらを活用して収益を得ることができるインターネットビジネスのマーケットは、最近やっと本格的に離陸し始めたと考えるのが妥当だろう。

 そして、インターネットが普及し始めた1990年代に語られた未来を実現するための要素が、なんとか一通り揃ったのはつい最近になってのことである。そして、この最近になって完成しつつあるインターネット本来の姿を表す言葉が「Web 2.0」なのかもしれない。

 2005年のWeb 2.0 Conferenceにおけるスピーチで、インターネットバブル当時「ネット株の女王」といわれたモルガンスタンレーのメアリー・ミーカーは「2005年までの10年間はこれから起こることのウォームアップであった」と述べている。

 もちろん、ミーカーの意見には二度と耳を貸したくないという人もいるだろう。しかし、この理解が正しいとすれば、Web 2.0という進化したウェブを表す言葉は、1990年代に語られたインターネットが社会に与える影響が今度こそ本格的に起こりつつあることを非常に端的に語っているとも捉えられる。ならば、冒頭の質問に対する答えは過去の教科書に既に書かれている。そして、ネットビジネスの時間は思うより遅い。Web 3.0のことを考えるのではなく、どのようにすれば後発者の利益を最大限に享受できるのかを考えるべきだろう。

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