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日本で広がるスモールワールド・ネットワーク

2006/06/02 15:10
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 インターネットビジネス関係のセミナーやイベント、パーティなどに参加すると、かならず何人かは以前から知っている人に出会う。もちろん、1990年代後半からインターネットビジネス関係者の間に、こうした人的ネットワークは存在していたし、当時も知人に会う頻度は高かった。

 しかしこの数年、こうした催しの規模が拡大すると共に、知人に出会う機会も増えている。「知人の知人」といった関係まで含めれば、いったい何人とつながっているのかを、実際に何かの機会に調べてみたいとすら思う。こんな経験があるのは僕だけではないだろう。

シリコンバレーの本質

 僕は研究者なので、インターネットビジネスに直接の関わりを持たない。だから、こうした人的ネットワークの中心ではなく、周辺に位置している。それに最近のインターネットビジネスの発展に伴い、ネットワークの参加者自体は増加しているはずである。

 それでもこんな経験をするのは、この人的ネットワークは参加者の増加、つまりネットワークの規模の拡大にも関わらず、実際の参加者間には次々と新たな関係が築かれ、ネットワーク内部の密度自体は増加しているのではないだろうか。

 また、およそインターネットビジネスとは無関係と思われるような企業や機関、官公庁、大学などからこうしたネットワークに参加する人たちも増えており、ネットワークの構成要素は多様化の一途を辿っている。

 こうした人的ネットワークの話からすぐに思い浮かべるのはシリコンバレーである。シリコンバレーをシリコンバレーたらしめているのは、地理的な企業の集積というよりは、その場所に形成された様々な人的ネットワークだ。シリコンバレーを、起業家にとって世界で最も魅力的な場所にしているのもこのネットワークだろう。

 例えば、「シリコンバレーで起業をしたい」と思うのは、サンタクララやパロアルトにオフィススペースを借りて、そこで事業を興したいということを意味するのではなく、シリコンバレーの人的ネットワークに加わりたいということを意味する。

 実際に、シリコンバレー企業の発展の基盤には、起業家とベンチャーキャピタル(VC)や、あるいは大学の研究者たちの濃密な人的ネットワークあることはこれまで幾度となく指摘されてきた。シリコンバレーは人と人とのつながり方からみた場合、非常に「狭い世界」(スモールワールド)であり、このことがシリコンバレー自体の発展につながってきた。

規則と不規則の中間点

 近年、相次いで発見されたネットワーク理論のひとつにスモールワールド・ネットワークがある。現在コロンビア大学社会学部の准教授を務めるダンカン・ワッツが、コーネル大学での指導教官であったスティーブン・ストロガッツと共に1998年にNatureに寄稿した「Collective dynamics of 'small-world' networks」は、彼らのスモールワールド・ネットワークの理論とその考え方を一躍有名にした。

スモールワールド・ネットワーク図 図:スモールワールド・ネットワーク

 上の図はNatureに記載されたスモールワールド・ネットワークの作成手順である。左端のネットワークではすべての点(ノード)は、ある一定数の近いノード(ここでは左右両側の2つのノード)と規則的につながっている。この完全な規則性を持つネットワークは、レギュラーグラフと呼ばれる。一方で、右端のグラフがランダムグラフと呼ばれるものであり、ノードのつながり方はまったくでたらめで、ノード同士のつながり方に規則性はない。

 ワッツとストロガッツは、この完全に規則的なグラフと完全に不規則なグラフの中間的な段階をくまなく調査した結果、少数のランダムリンク(あるノードを他の無作為に選んだノードと結ぶこと)が、ノード間の距離に非常に大きな影響をもたらすことを発見した。ネットワークのサイズに関わりなく、平均して最初の5回ほどのランダムリンクは、あるノードから他のノードへ移動する平均的なパスの長さ(ノード間の距離、隔たりの数)を半分程度に縮小する。これが、上の図の中央にあるスモールワールド・ネットワークである。

 この、ランダムリンクがもたらすパスの長さへの影響はこれだけでも十分興味深い。しかし、スモールワールド・ネットワークにおいて特徴的なのは、ランダムリンクはパスの長さに対して大きな影響を与えるにも関わらず、ネットワークの内輪のつながりの濃密さ(専門的にはクラスター係数と呼ばれる)には、さほど急激な変化を与えないことである。非常に簡単に解釈すれば、スモールワールド・ネットワークではノード間の内輪のつながりを保ったまま、ネットワークのノード間の距離が劇的に短くなっている。

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