iPhoneは日本のケータイ業界へのオマージュ - (page 3)

 これに対し、通信端末メーカーとキャリアとの関係が日本と比べて比較的希薄な米国のケータイ生態系は、日本はおろか欧州以上に混沌としており、新しいサービスが発生しにくい土壌になっているとさえいわれてきた。こういった中でAppleはiPhoneというAT&Tのネットワークで稼働するインテリジェントな端末を、ネットワークの「あちら側」という目の見えないところでiTSを核としたネット上のサーバ群とセットにし、これまでのハードウェア固有の柔軟性のなさを補う仕組みを創り出すことで、世界最先端かつ最優位のプラットフォームを創り出そうとしている。

 いままで通信の制度というと「縛りを設ける」という規制型のものが多いという印象が強かった。しかし、1980年代から、そしてネットの登場とともに、まずはインフラの領域で、そして今はプラットフォームの領域で、より競争を持ち込み、そして柔軟でさらなるイノベーションの生成を促進する振興型、あるいは政策型の制度こそが求められるようになってきた。

 その点においては、総務省のモバイルビジネス研究会やユニバーサルサービス研究会、ネットワーク中立性研究会などが打ち出している方向性、そしてそれらを統合する最終的な法制度体系を議論している「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」で示された3レイヤモデルは、明らかに政策型の制度設計を意識したものとなっている。

 もちろん、最適な法制度があったからiPhoneが北米で生まれたわけではなく、日本に来ないわけでもない。しかし、それが生まれた、あるいは上陸しにくいといった環境を今後どういう方向性を持って進化させるかについては、法制度が大きな影響力を持つことは間違いない。

 今回のエントリで、そして「iPhoneの日本展開が難しい本当の理由」で述べたとおり、決して法制度的に劣っているからiPhoneが日本には来ないわけではない。むしろ同じような機器やサービスは日本でも登場し得たのに、そうはならなかったことはなぜかを考える必要があろう。そして、iPhoneを超える何かを創り出すために必要なものとは何かを、法制度の今後のあるべき姿とは別に、我々プライベートセクターの人間が真剣に議論することが今必要となっているのではなかろうか。

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