au oneの向こうに見えてくるもの - (page 2)

リアルとネットの接点になるケータイ

 このサービスのさらなる延長には、これまでには存在し得なかったサービスの提供すら想定しうる。これまでもGPSデータなどケータイ経由であちら側にぼくたちの行動に基づいたデータを送信できたが、それらを集約して検索などのシステムの情報処理の対象=マッシヴ・データとして取り扱うことで、たとえば人気のある店舗はどこか、あるいは混んでいる時間はいつごろかといったデータを蓄積できる。そして、あちら側を走り回るボットを僕等のエージェントとして飼いならすことで、それらデータからこちら側で生活する上で最適な情報をピックアップすることが容易になっていくに違いない。

 そして、ケータイを持つ僕らだけではなく、FMC、あるいはユビキタスの世界では必須となるデジタル・サイネージ(OoH(アウトオブホーム)ともいわれる屋外で使われる高性能なメディア。ケータイや大型の街頭ディスプレイなどが含まれる)と結びつき、外部の情報ソースとリアルタイムにインタラクションすることで、カーナビならぬ「マンナビ」の普及も現実味を増す。そこには、単なる道案内だけではなく、周辺のお得情報などの提供といったさまざまなビジネスモデルの機会が潜んでいるだろう。加えて、MediaFLOのような一斉同報型=放送型の情報散布サービスが組み合わされると、街の中でメディアとのインタラクションを身体的に行うという、これまでになかったサービスも可能になるに違いない。

 それどころか、NHK教育で人気を博しているアニメ「電脳コイル」や、昨年の「SFが読みたい!(2007年版)」ベストSF国内部門一位の「ラギッド・ガール」(飛浩隆著)で語られるようなオーグメンメンテッド・リアリティ(CGと現実の視覚情報をリアルタイムで組み合わせて現実に見える以上のさまざまな情報を付加すること)に近いエクスペリエンスを、ケータイというモバイルデバイスのごくごく小さなディスプレイ・レベルで提供するのもそれほど遠いことではなくなるのではないか…などと、つい妄想に走りたくなるほどの可能性が秘められたサービス基盤であろう。

 もちろん、ここまでのサービスを実現するためには、通信の秘密などに抵触しない程度に利用者自らが承認(オプトイン)した範疇で情報を提供、提示する仕組みや、これまでは放送や紙媒体に限られてきた、無料メディアであっても十二分に採算がとれるビジネスモデルを「こちら側」の世界から「あちら側」に展開するためのビジネスモデルの開発が必須となる。しかし、KDDIはゼロスクラッチでこれらを実現するのではなく、ウェブのあちら側ですでに実戦経験者であるグーグルと手を組んでいることが大きな強みとなるのではないか。

 ウェブ2.0という言葉がそろそろ廃れてきた昨今、以前も言及したようにリアルな世界との接点において新たなネット体験を提供する条件(=ネット3.0)が揃い、仮にグーグルとのタイアップであっても日本発での面白い展開が可能になってくれればいいと思う。

 そして、これ以上にハードウェア的にファットになってしまうケータイよりも、ハードとしてはスリムになり、かつネットのプラットフォームとの組み合わせでリアルの世界に逆浸食(「あちら側」から「こちら側」へ)するサービスの急先鋒にこのau oneがなっていくとすると、巨人NTTドコモやソフトバンクモバイルはどういう対抗策を持ち出してくるだろうか。楽しみだ。

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