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厳密会計ルールが日本の成長を阻害する - (page 2)

森祐治 2006/12/12 06:00

 事業組合は本来、相互に出資しあうことで事業リスクを分散すると同時に制作予算を高め、作品の質を上げて事業の成功率を高めることを目的に設立される。にもかかわらず、その全体の収益を、最も大きな出資をしたり、主要な業務を行ったりした組合員企業の損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)といった財務会計にすべて取り込まなければならないのだ(それも、組合を連結する企業は1社とは限らない。出資額の大きな会社と、主要業務を行う会社の両者が、それぞれ全額を連結する場合すらある)。

 より具体的にいえば、資本金1000万円で年商1億円の会社が、なけなしの現金2000万円を出資し、同様な企業4社とともに計5社で1億円の組合を作ったとしよう。そして2年間にわたるプロジェクトを行ったとすると、当然2年間のほとんどはプロジェクトの収支がマイナスであり、一歩間違えば年商に匹敵するマイナス額を、出資した会社が連結で取り込まなければいけない場合が出てくる(連結の基準は出資額、支配力、配当額によって評価されるというが、あいまいな部分がある)。当然赤字決算となり、事情はどうであれ、金融機関からの融資の条件は不利になる。ましてやこのプロジェクト自体が途中で失敗したとなれば、その費用を仕掛計上から焦げ付きの引当金に回さなければならず、出資額は2000万円であっても会計上は大きな負債を負うことになる場合すらある。

例外を考慮しなければ日本全体のマイナスに

 これでは、なんのために組合組成をするかわからなくなってしまいかねない。たとえば、昨年夏から導入されたLLPでは出資者=事業組合員のリスクは出資額を上限とし、事業の自由度を高めることが目的となっていた。にもかかわらず、LLP全体を連結会計の対象とするとなれば、そのリスクは出資額が上限にはならない。

 これは、作品に成功失敗の差が大きく制作期間の長いアニメーションやゲームなどのコンテンツ産業だけではなく、先進的なテクノロジー開発など、リスクの分離や分散が不可欠な領域に対しても、大きな影響を与えるという懸念がある。大企業であっても将来性の不明確な先進的な企業へメジャー出資することは避けるようになるだろうし、ベンチャーキャピタルも確度の高いミドルステージ以降のベンチャーへの出資を増やし、しかもできるだけ連結対象にならない程度になる傾向が強まっていくのではないか。

 企業活動の全体的把握の必要性は十分に理解している。しかし、リスクの切り出しを容認する仕組みを前提にしなければ、事業として成立しない場合も多い。このままでは、財閥的に大きな企業グループ規模を抱えており、内部で十分な投資が可能で、そのマイナスは全体では微々たるものである、といった状況の企業以外にリスク投資はできなくなる。

 しかも、現実的には、そのような企業内部であっても自ら火中の栗を拾うマネージャーはほとんどいないため、結果的に「イノベーションのジレンマ」的な状況に陥り、内部からの変革は実現されない。変化は常に辺境から起こるのだ。そうなれば近い将来、日本のどこにも辺境がなくなってしまうのではないか。

 コンテンツと技術革新の領域は日本の成長産業領域として前政権から継続的にスポットが当たっているにもかかわらず、その長期的な構造に負の影響を与えかねない会計新ルールについては再考が必要だろう。少なくとも、例外ルールの設定などを求めたい。

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