LLPという組織の新しいカタチは働き方を変えるか - (page 2)

 日本ではこれまで監査法人や弁護士法人のような特殊な法人組織はあったが、業種が限定されており、欧米のように「○○○ LLP」や「△△△ LLC」を見かけることはなかった。

 ちなみに、LLPがどのようなものであるかは、コンサルティング会社や会計事務所などプロフェッショナルファームで働いたことのある人はお分かりだろうが、そうでなくてもハリウッド映画で弁護士が活躍する様子を描いたものを思い浮かべればイメージの一端はつかめるのではないだろうか。

 出資者がパートナーとして、経営者かつ事業執行者として活動することで事業目的を果たすという形式が登場することで、これまでは「何が何でも株式会社」という感があった日本の働き方が変わるかもしれない。

LLPは働き方をどう変えるのか

 LLPであっても雇用者を得ることは可能だ。あくまで組合組織あり、株式会社と同じレベルでの法人格は持っていないものの、通常のビジネスの遂行には十分耐えられる。また、これまでの組合や会社では出資者への配当額は出資比率に応じた分量となっていたが、LLPでは組合員が話し合いで定めた基準に従って、事業に貢献した人により多くの金額を配当することもできる。

 コンテンツ制作に限って言えば、これまで財務的に劣っていた制作会社はコンテンツなどの制作委員会(任意組合の場合が多い)に参画できず、制作に対する対価は得られても、作品の成功によって発生する配当の受け取りや新たな事業展開を実現するための著作権の獲得ができなかった。企画から制作までの実質的なコンテンツ作りをすべて行っても、制作委員会に著作権が帰属してしまって、制作会社には著作権もそこから生ずる利益配当も一切なかったのだ。しかし、LLPはこの悩みを解消する手段になりうる。

 それだけではない。これまで、個人、あるいは大学や企業の研究者などが優れたアイデアや発明を持っていても、ビジネス化するのに必要十分な資本を得るのと引き換えに議決権を投資家に提供せざるを得ず、給与以外にはストックオプションなどでしか、その貢献に報いることができなかった。しかし、LLPという新しいビークルでは、出資比率に関係なく、その貢献度合いに応じて事業配当を自在に変化させられる(もちろん、それほどころころとは変えられないが)。また、法人ではないため、LLP自体に法人税は課税されない。このため、相対的に課税額は少なくなるはずで、ストックオプションよりも効率がいい可能性がある。

パートナーというポジション

 さまざまなメリットがあるLLPだが、最も大きなものは、若い人やこれまで企業の中でしか活動してこなかった人たちが、経営者として活動する機会をこれまで以上に増やせることだと思う。これまでは、成功するベンチャーというと「創業者の1人が何らかの圧倒的なカリスマでなければいけない」というようなイメージがあった。しかし、多様な才能から構成されるチームでの経営や、独裁やワンマンではない優れた合議による経営という選択肢があってもいいはずだ。むしろ、そのほうが望ましい場合もある。社長や代表取締役という肩書きが面倒になることもあるだろう。そういう点でも、やる気のある人たちにとってオプションが増えることはのぞましい。

 もちろん、企業にとってもジョイントベンチャーやアライアンスのツールとして活用すればメリットも大きいはずだ。まだまだ新しい制度ゆえ、運用上の課題も多いだろうが、新しモノ好きの僕としては、積極的な活用をしてみたいと思う。

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