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放送・通信・家電融合のグランドデザインを求めて:2005年のキーワード

2005/01/14 10:00
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 「融合」というテーマが話題に上がるようになってすでに10年近くが経った。しかし、依然として制度上、あるいは製品上での「融合」は少ない。それでも、iTunes/iPodのような製品がヒットし、家庭にはPVR(パーソナルビデオレコーダー)のようにこれまでなかった価値提供を行う製品が進出してきた。ついに「融合」が時代の境界線にまで差し掛かっているのではないか、という印象がある。そこで今回は2005年という「いつの間にか融合が始まった」と記憶されるであろう年を占うキーワードをいくつか記してみよう。

越境:戦い方を変える=競争の領域を変える

 最初のキーワードは上で掲げた融合の兆しとなる「越境」である。これまでと同じ価値創造・提供だけでは成長を維持できなくなってきた、あるいはその地位にとどまることが困難になってきた業界のプレーヤーの動向を占う言葉になるだろう。

 ここでいう越境とは、関係した業界マップの中でこれまであった境界線を意図的、あるいは衝動的に乗り越え、これまでとは異なるポジション/コンピテンシーを獲得する戦略だ。典型的なケースは前述したAppleのiTunes/iPodだろう。ハードとサービスの垂直統合という表現も可能ではあるが、変化のグランドデザインを見据えた確信犯というよりも、目前にある選択肢の中でもっとも最適な解を選ぶという意味で「越境」なのだ。その意味で、社会科学的な「統合」よりも、現代思想風な「越境」のほうが望ましいのではないか。

 「越境」の対極にあるのが、グランドデザインを基に着々と活動領域を広げる思慮深いプレーヤーだろう。例えば、マイクロソフトだ。長期的・結果的な「越境」も行うが、これは確信犯として実践されるものであり、業界リーダーとしての選択である点でAppleのそれとは異なる。むしろ、PCメーカーがWintelの動向に依存せざるを得ないがためにIT製品から家電へと「越境」を強要され、日本家電メーカーにとって新たな脅威となりつつある。

 もちろん、「今後10〜20年後の世界は、突如登場した新たな商品で構成されることはない」と断言する家電トップが日本には存在するのも事実ではある。だが、現在存在する商品がハコとしては同じであっても、その機能や消費者とのかかわり方が一変する可能性は大いにあるはずだ。ただ、その変化のあり方とは、あたかも電子ブロックのように機能別にモジュール化した製品群が突如出現するというよりも、「越境」という表現が適する逐次変化の積み重ねであるに違いない。

 では、どのような方向への「越境」が発生するのだろうか。

コンシューマー・インサイト:技術による進化から、消費の進化を実現する技術へ

 やはりここでもヒントになるのはAppleのiTunes/iPodだ。

 本来、技術は利用者にとっての不便や限界を超克するための手段としてあった。しかし、ここ最近のIT技術の急速な進歩は、利用者の認知や学習、欲望が追いつけないほどのスピードだった。そのため、需要が形成される前に供給が準備される状況に陥ってしまった。これをあえて例えるならば、レストランに入ってメニューを見て注文をする前に食事が運ばれてきて、「これはおいしいからぜひとも食べてみてください。きっと気に入りますよ」と、一種押し売られているに近い状態だ。この異常が、通常化してしまっていた。

 だが、一口食べたその食事がいかにおいしくとも、顧客はそれが漠然としていたにせよ、本来食べたいものがあったはずだ。だから、最初のうちはオススメで満足した気になっていたとしても、そのうちに「なんだか違うなぁ」というストレスを感じてくるものだ。その食事が十二分においしくて、すぐにいつも用意されてくるから、ついつい何が食べたいかを言い出しそびれているだけなのだから。そして、消費者はいかに受動的な行動をとっていても、ひとこと「今日は何がご所望ですか?」といわれて、心底から「わかりません」というほどには教化されたりしないものだ。

 だから、「好きな音楽にいつも囲まれていたい」という本質的な欲望を発掘し、「持ち出せる僕の大好きな音楽」を実現したソニーのWalkmanや、「ずっとたくさんの音楽を手軽に」を可能にしたiTunes/iPodのような「欲望の再発見・再認識」を具現化した商品が大ヒットになる。そんな表面上忘れかけているように見えるけれど、絶対に忘れられない欲望を発見する視点をコンシューマー・インサイトという。これが、越境の方向性の指針となる絶対唯一の軸だ。

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