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ネットワークという視点で深まる世界観 - (page 2)
遍在するネットワーク
冒頭に述べたように世の中にはネットワークが遍在しており、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が対象とする人間関係もそんなネットワークの1つなのは明らかだ。そもそもSNSは、参加する人が初めて出会うと人とリンクを結ぶための仕組み(いわゆる「出会い系」)ではなく、むしろ知り合い同士のリンクを太くするという側面が強い。特に立ち上げ時期にその傾向はつとに明確であり、それなしでは普及しないという認識があるはずだ。
つまり、人間関係という目に見えない既存のネットワークの内部に、SNSという新しい下位ネットワークが発生するという構図なのだ。SNS提供者から見れば「目標達成のためのマーケティング施策」として捉えられる既存グループの取り込みも、社会というマクロな視点から見れば一種の「自己維持」のための「外部の内部化」でしかないという捉え方ができるということだ。完全相似形ではなく一部で重なり合うだけのものも含めて、社会全体を覆う壮大な入れ子構造というネットワークが存在すると想像すると、この世の中の不思議さということを改めて思う。
ただ、この天然ユビキタスともいえる壮大なネットワーク構造も、八百万の神様のごとくすべてのものを結び付けているわけではない。
複雑性を産み出す単純な法則
グラフ理論から始まったネットワークに対する科学的な興味は、1920年代にポール・エルディシュとアルフレッド・レーニイらの数学的な解析で得られた「ランダム・ネットワーク(任意にノード間のリンクが存在するもの)」から始まった。そし、ごく最近の20世紀末にはダンカン・ワッツとスティーヴン・ストロガッツが、ネットワーク内のノードはランダムに結びついているのではなく、ある特定のリンクを一部のノード同士が結びつく傾向が強いというクラスターの存在を説明した「スモールワールド・ネットワーク」モデルを提出し、より自然界や社会的なネットワーク構造に近い理論モデルとして注目された。そして今世紀に入って、ネットワークの生成過程に注目することで、巨視的なネットワークにおけるごく一部のハブと呼ばれるノードへのリンクの集中の創出についての仮説を備えたアルバート・ラズロ・バラバシらの「スケール・フリー・ネットワーク」へと進展してきた。
自然に存在するネットワーク構造を生み出すためには非常にシンプルな法則しか必要ではないということが、これらのネットワーク・モデルを巡る議論で明らかになりつつある。
存在する経験則との乖離を埋める
これらのネットワークモデルについての知見は、ノードはほとんど均質であるものの、そのほんのちょっとの違いが、結果的に大きな差を生むということになっていることを示している。この説明は、特定のグループの中でのちょっとした役割分担といった程度の違いによって、新しい流行が広がっていくことを理解するためには十分だろう。そう、カリスマは常に存在する必要はないのだ。
しかしこれは、前回エベレット・ロジャースの考察から得られたような「革新的採用者」などに代表され、社会科学や行動科学で言うところの「リエゾン」や「スーパースプレッダー」といった個体に帰属するような特性こそが重要という経験則とは異なる印象を受ける。
国内大手SNSのmixiは、ネットワーク資源の限界を理由に今月25日からの機能制限を発表した。SNSのようなネットワークサービスはその利用者数や内部でのトランザクションをどの程度まであらかじめ想定して設計されるべきかについても、これらのモデルからの知見は非常に有効に違いない。
だが、ここでも、通信網などにおける相互接続の開始や新たなサービスの導入(ネットワークの多重化)が、時として想像もできないほどのトラブルを引き起こすことを私たちは知っている。例えば、iモード導入初期におけるネットワークセンターのダウンや、北米での昨年夏の大停電などは記憶に新しい。それらを事前に想定できるほどに、これらのモデルが柔軟かつ堅牢なのかはまだわからない。
もちろん、自然科学におけるネットワークモデルについても、そしてネットワーク構造そのものについての理解も十分でない。むしろ、現在非常に急速に進展している分野であり、今後の展開こそが期待できる。また、その社会科学領域への応用も積極的に行われている。その場として、欧米ではビジネススクールなどの実践家養成のための大学院が機能していることは注目に値する。
ネットワークという視点は、いずれにしても非常に有効である。ゆえにその話題も幅広い領域で広がっている。しかし、新しい知見であるがゆえに、残念ながら亜流の理解が一人歩きする傾向もないわけではない。その真贋をきちんと見据えることも大切であろう。
僕は余裕ができたら、そんな亜流の普及ネットワークでも研究してみたいと思っているのだが、それはいつになることやら。
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