統合通信サービスはどこに向かうのか:ソフトバンク・日本テレコムの明日

 5月27日、ソフトバンクは、投資会社リップルウッド・ホールディングスから日本テレコムの株式100%を、その負債の充当も含めて総額3400億円で買収すると発表した。これまで手薄だった法人向け事業とバックボーンおよび専用線の強化、ITソリューション領域を含めた通信事業人材の一挙獲得により、 「個人・法人向けに、音声・データ・インターネット接続等、総合的な通信サービスを提供する、「ブロードバンド No.1カンパニー」を目指す(ソフトバンク・プレスリリース)」としている。

 11月の買収完了時には、売上高1兆円、提供回線数約1000万回線という日本で第3位の通信事業者が誕生することになる。はたして、それは私たち消費者や企業にとって、どのような意味を持っているのだろうか。

通信の近代史を反映してきた名門「日本テレコム」

 通信のグローバル化が華やかなりし頃に、JR系と商社・高速道路系の合併で誕生した新規第一種通信事業者(NCC)の日本テレコムには、当初AT&TやBTが出資し、後のグローバル・ネットワークアライアンス「コンサート」のアジアにおける橋頭堡として位置づけられる運命にあるかに見えた。が、90年代に入り、TCP/IPに代表されるコネクションレス=パケット系ネットワークの勃興で通信のグローバルアライアンスは軒並み失速し、やがて来るモバイル・プレーヤーの時代では主従関係が逆転することになった。日本テレコムは日本におけるその典型だ。

 日本の固定系では、巨人NTTグループの売上高(NTT東日本・西日本・コミュニケーションズの3社合計)が約5兆5000億円。それを追う2番手のKDDIですらNTTグループの半分(約2兆8000億円)の収益規模であり、3番手につける日本テレコムはKDDIの更に5分の1弱の規模(推定)でしかなかった(すべて2003年度)。

 ただし、日本テレコムは早くから全ネットワークのIP移行(PRISM)を表明し、ISP事業(ODN)も早期に開始するなど、「小粒でもピリリと辛い」プレーヤーというポジションにつけてきたのも事実だ。とはいえ、マイラインなど重量級の顧客獲得競争になると、その基礎体力の違いがいかんともし難いことになってきた。そんな折、規模で逆転した携帯子会社(J-Phone)の買収によって親会社となった英Vodafoneの下から離れ、リップルウッド・ホールディングス傘下となった。そして、「通信はITソリューションとの一体化によってこそ付加価値を生ずる」と明言する倉重秀樹氏を社長に迎え、新たな方向性を打ち出した直後に、今やYahoo! BBにより通信事業者へと様変わりしたソフトバンク・グループ入りとなった。これほどまでに通信事業の潮流に翻弄されてきたプレーヤーは日本テレコムしかないだろう。

新グループの事業は規模、内容ともにピカイチ

 ソフトバンクと日本テレコムの買収による事業規模は約1000万回線であり、日本の全通信回線契約(加入電話、ISDN、専用回線の合計:約6200万契約)の16%を占めることになる。もちろん、ADSLのように複数の事業者が1契約を共有することもあるので絶対的なものではないが、十分に大きな数値だといえるだろう。

 日本テレコム配下のeAccessのADSL提供数とYahoo! BBを合計するとほぼ600万となり、全ADSL契約数の半数以上を占める。ISPとしてのYahoo! BBと日本テレコム(ODN)の合計は580万契約となり、@nifty、Biglobe、OCNなどのトッププレーヤーの契約者数を凌駕する規模となる。また、Yahoo! BB加入者のほとんどが利用しているIP電話サービスの規模は他ISPなどが提供する数の合計を大幅に上回り、現在のIP電話サービス利用者のほとんどを占めるといってもいいだろう。いずれにしても、固定系通信の本命となりつつあるIP接続サービスで新グループがNTTグループを上回る規模になっていることは事実であり、「ブロードバンドNo.1カンパニー」という看板は伊達ではないことがわかる。

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