サムスンと日本の微妙な関係 - (page 2)

森祐治
構成/文:永井美智子(CNET Japan編集部)
2004年06月04日 10時00分

サムスンにとって日本市場は魅力的か

  世界でこれだけの競争力を持つサムスンにとって、日本市場が本気で参入するほどに魅力があるかどうかは疑問だ。日本の家電市場はすでに多くの企業がシェア争いを繰り広げ、過当競争に陥っている。そこに多額のマーケティング費用を投入して一から販路を築き、シェアを5〜10%取ったとしても、世界をすでに相手にしているサムスンにとってどれほどの意味があるのか。

  サムスンはすでに欧米や中東、中国などで圧倒的なブランド力を確立しつつある。製品の先端的な研究開発能力を有し、かつデザインにも注力しているサムスンが日本市場でも国内メーカーと互角、あるいはそれ以上に戦える実力は十分にあるはずだ。本気で日本市場に参入しようと思えば、そう難しいことではないだろう。サムスンは日本市場に食い込めていないのではなく、むしろ本気で日本市場に参入しようとは考えていないのではないだろうか。言い換えれば、日本市場に本格参入すべきか否かの選択を保留している状態といえるだろう。

  サムスン、そして家電やITのリーディングプレーヤーにとって、日本という市場は多くの部品メーカーとコンタクトしたり、競合他社の動向をチェックしたりする上で重要な存在だと考えられる。また、日本の消費者は家電に対して肥えた目を持っており、世界展開を実践しているサムスンにとって、成熟度の高い日本の消費者のニーズを拾う価値は十分にあるだろう。サムスンにとって日本は、研究開発やデザイン、テストマーケティングを行うオープンな一種の「ラボ」と考えてもおかしくない。

参入ならばオンライン販売が鍵に

  もしサムスンがこれから日本市場に本格参入しようとするのであれば、どういった方法が考えられるだろうか。おそらく、オンライン販売という手法をとるのが一番いいだろう。十分な製品力を有している上に、気の利いたデザインで価格が安ければ、オンラインでも売れるはずだ。これはサムスンがすでに米国で行って成功したやり方でもある。

  日本では長らく、量販店よりも町の電器店で家電を買う風潮が強かった。また、つい最近まではオンラインよりも量販店頭のほうが価格は安かった。しかしバブル崩壊後は町の電器店ではなく量販店での購入が増えており、加えてそれら量販店の店頭よりもオンラインのほうが安くなっている。このように、日本のチャネルは変わってきており、一昔前に比べて、新規参入障壁は低くなっている。

  家電製品は、値崩れして「安い」というイメージがつくと日本の一般的な消費者の選択肢からは外れてしまうことが多い。あえて販売価格を下げないための市場コントロールにもオンライン販売は有効だ。Sony Styleのように自社サイトで出されている販売価格というのは、オープン価格が一般的な昨今、量販店が価格を決める際のベンチマークになるからだ。

  ただしオンライン販売が成功するためには、商品を見なくても消費者が購入するという前提が成り立たなくてはいけない。商品に対する不安をなくすためのブランディングが今後必要になってくるだろう。

注目する点を間違えるな

  いずれにしてもサムスンの動向を注目する必要は十分にある。しかしそれは、日本という成熟し、特殊な消費市場への参入=日本の家電メーカーへ戦いを挑むという単純明快な構図を透かして見るのではなく、グローバルプレーヤーが日本という市場をどのように評価しているかという、戦略的な視点から見るべきではないだろうか。(談)

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