進化するケータイアプリケーションとケータイソリューション - (page 2)

高藤丈也(IMJモバイル)2006年11月13日 12時10分

 1994年には、ケータイが売れるごとにキャリアが販売店にインセンティブ(報奨金)を支払うというケータイ買取制度(インセンティブモデル)がはじまり、1996年には新規加入料が廃止されるなど、料金の値下げでケータイの人気は一気に高まった。携帯端末市場を支配していたポケベルユーザーやPHSユーザーの多くが次々にケータイへ乗り換えた結果、ケータイユーザーは1996年〜1997年末までのわずか2年間で3000万台に至った。

 その勢いを追い風に1999年2月、ケータイインターネット接続サービス「iモード」対応端末が発売された。これを機に、高機能化、高速CPUを積んだハイスペックケータイが各社から矢継ぎ早に登場していった。インターネット接続ケータイは8年間であっという間に8000万台を超え、NTTドコモはあっという間に日本一のインターネットサービスプロバイダーになった。2006年9月末時点で日本のケータイ台数は9381万台、その中でインターネット接続ケータイのシェアは、約87%にもなる。

 端末内に内蔵されているアプリケーションの数はインターネット接続ケータイの普及とともに増加し続けている。半年ごとにリリースされるケータイ端末には、次々と新しいアプリケーションが登場し、アプリケーションバブルの様相を呈している。ユーザーがそっぽを向けば、アプリケーションバブルは崩壊する。ユーザーの審判が真にくだるのは、インセンティブモデルが廃止された時だが、それまでに端末メーカーは価格競争力をつけておかなければ国際社会で勝っていくことはできない。

「健全な競争」が起きているケータイOS業界

 端末アプリケーションの開発に深く関係するのが、ケータイのOSだ。今、ケータイに搭載されるOSをめぐって熾烈な争いが繰り広げられているのはご存知であろうか。

 すでに9000万台以上普及しているケータイ端末の出荷推移が、今までのような右上がりを描くことは難しい。しかしその一方で、端末の高付加価値化、差別化に対応するためには効率化、汎用性を追求したアプリケーションの開発が必要になる。

 現在、ケータイ1機種を開発するコストは約100億円と言われているが、その約80%はアプリケーションの開発に費やされているという。その80%の部分をいかに削減しながら高機能端末を作っていけるかが、現在のケータイ開発の重要なテーマだ。OSに汎用性、拡張性、オープン性、セキュリティ機能を持たせ、ケータイの特性や将来のサービスイメージを十分に理解したOSメーカーが勝っていくことになるだろう。

 現在、Linux、Symbian、Windows Mobile、そしてプラットフォームからケータイOSへと進化を続けるBREWを加え4つのケータイOSがシェア争いをしている。最近ではNTTドコモがACCESSやNECとともにLinuxを担ぐ一方、SymbianがFOMA端末で採用され、シェアを伸ばすという動きが目立っている。BREWは世界市場を見据え、Windows MobileもケータイOSでも覇権を握るタイミングを虎視眈々と狙っている。

 この中でどのOSが優れているのか、また市場競争に勝てるのかということについては、それぞれのOSが目指すゴールや得意不得意があるので何とも言えない。しかし私は世界各国に拠点を持ち、特にケータイ端末に特化しケータイの特性を理解し、スマートフォンの市場にもシェアを持つSymbianの動きに注目している。同時に、Linux陣営が、機能を囲い込まずケータイでも2.0的発想をどこまで取り入れることができるかという動きにも期待をよせている。

 ケータイのOS市場は、1社寡占状態で不均衡な構造になっているPCのOS市場とは異なり、競争が盛んで、良い製品を作っていく姿勢が見て取れるように思える。ケータイOS各社は世界に目を向け、世界市場で勝負しながら切磋琢磨している。その過程でアプリケーション開発が効率化され、機能精度が上がり、サービスが生まれ、世界に普及していく。ケータイに携わる日本企業は視野を広げ、世界での通用するビジネスを1つでも多く作っていって欲しいとも思っている。

「PCのあとを追いかけてきた」ケータイ

 ケータイに搭載されるアプリケーションとそのプラットフォームの関係は今まで述べてきたとおり密接な関係がある。それはどちらもケータイというハードの中での進化の話であるからだ。では、ハードの外側はどうなっているのか。サーバ側で提供するアプリケーションの開発や企画、ビジネスプロデュースといったケータイソリューションについて考えてみよう。

 私は、2000年にケータイソリューション会社を立ち上げ、現在350人のスタッフを抱えるまでに成長したが、ケータイソリューションビジネスをはじめた時、すぐにわかったことがある。それは「ケータイはPCの背中を見て育つ宿命である」ということだ。

 下の図を見て頂くと、ケータイがPCに遅れること何年で同じようなサービスを開始したかを理解して頂けるのではないだろうか。極端に言うとPCの動きを見ていれば、3年後のケータイがわかると言ってもよい。

PCのサービスと携帯電話のサービス会時期の遷移 PCのサービスと携帯電話のサービス会時期の遷移。カッコ内はサービス開始時期、プラスはPCで同様のサービスが始まってからの年数を表している (C)TAKAFUJI ※クリックすると拡大画像が見られます

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