何でそんなに売れる?--急成長を遂げるモバイルコマース市場の現状 - (page 2)

深田浩嗣(ゆめみ)2006年10月26日 14時54分

 ちなみにドコモ公式サイトだとショッピングジャンルに100サイト以上、ファッションジャンルに70サイト以上がすでに存在する。また、ファッションジャンルは事実上女性向け商材を集めたショッピングサイトで構成されている。

 各ジャンルの中での表示順序は利用者数によって決まるため、自力で集客をしないとメニュー順位を上げることができない。公式サイトメニューリストに載ることによる集客効果があると言えるのはジャンル上位のせいぜい10位あたりまでであり、各キャリアが持つ公式メニュー内の新着情報サイトや紹介サイトに掲載されることで一定の集客ができるとはいえ、公式サイトとなった後も自分で集客をする必要があることには変わりない。

 ケータイでは検索エンジンやブログ、アフィリエイトといった集客経路の充実が遅れていたが、現在移り変わりつつある。先んじて検索エンジンの導入を実施したauにおいては、Google経由でのサイト流入がかなり増えていると聞く。この10月からドコモでも検索サービスが始まったので、徐々に集客経路の多様化が進んでいくだろう。そしてこの検索サービスを通じて一般サイトへの経路もできるため、流入はさらに増えることになるだろう。

 こうしたことから、これまでは会員数をすでに抱えている事業者や知名度のある事業者が有利だったモバイルコマースだが、今後は集客経路の多様化、トラフィックの分散にともなってより多くの事業者にチャンスが訪れることになる。プレーヤーの多様化、集客の多様化によりモバイルコマース市場は今後も間違いなく拡大していくだろう。

 次の話題へ行く前に、公式化の是非について触れておきたい。キャリアの公式サイト化については賛否両論さまざまな意見があるが、公式サイトの数の多さから、公式化が集客に必ずしもつながないため、いずれにしてもなんらかの形で集客に対して対策が必要となる。さらにサイト運営上の自由度も下がることも頭に入れていなければならない。

 特にどのキャリアもユーザー投稿型のコンテンツはサイト掲載前の検閲が必要になるため、コミュニティの要素をサイトには盛り込みにくく、口コミでサービスを広げるモデルが実施しづらい環境だ。公式化によりユーザーからの信頼感が増すというメリットはあるが、ドコモの発表データによるとすでにFOMAユーザーのネット利用全体の7割以上のアクセスが一般サイトになっており、公式化が必須だということはないと言える。

3つの特徴を持つモバイルコマースの販売方法

 次に、モバイルコマースでの販売方法について特徴的な点を説明する。

 ケータイでのモノの売り方はPCとはさまざまな点で異なっている。これはケータイのメディアとしての特徴に由来しており、それには大きくは下記の3つがあると考えている。

  • 隙間時間に使用する
  • PUSH型の情報配信をきっかけとする
  • 理性より感性に訴える

 ケータイとPCとの1番の違いは利用シーンだろう。ケータイはいつでもどこでも持っているという特性上、「隙間時間」に使われる。具体的には、電車の待ち時間や友人との待ち合わせの時間、1人で食事している時間などが挙げられる。基本的に隙間時間は短く、サイトをじっくり閲覧する時間はあまりない。また外にいたり何かをしながらであることが多いため集中力も途切れやすい。こうした利用シーンにおいてユーザーに響く要素は何かを考える必要がある。

 また、隙間時間での利用シーンにおける情報の受け取り方は、「PUSH型の情報配信」に適している。画面サイズの制約や端末の機能の制限により、PCでよくあるような複数のウィンドウを立ち上げて積極的に情報収集をする「PULL型」の行為はケータイには向いていない。そのため、メールなどPUSH型の情報配信をきっかけとしてサイトにアクセスすることが主流となる。

 最近登場したドコモのiチャネルもPUSH型の情報配信で、ユーザーの特性をきっちりと押さえている。今後メールと併せて使われるであろうと筆者が考えているのが、フィードによるPUSH型の情報配信だ。ショッピングサイトへのアクセスのきっかけを見ていると、メールマガジン経由でのサイトアクセスは全体の6〜7割、場合によってはそれ以上のこともある。メールを押さえるという事は非常に重要なことだと言える。

 さらにケータイでは経験則的に、「理性より感性に訴える」見せ方がより適しているようだ。隙間時間で見たコンテンツを一瞬で理解してもらうためには、直感的にユーザーに訴えるものであることが非常に重要になる。「あ、これおもしろそう」と思わずクリックして先へ進んでしまう、思わず「欲しい!」と買ってしまうような「引き」をうまく作ることが大切になってくる。

 たとえばケータイにおけるメールマガジンは、情報の量はもちろん質的にPCのメールマガジンとは大きく異なっている。PCのメールマガジンは「読ませてアクセスさせる」手法を取っていることが多いが、ケータイは「絵文字」「アスキーアート」を活用して「見せてアクセスさせる」ことを重視した作りにしているものが多く見られる。

 文章につける枕詞として「激レア」「読者モデル●●愛用」「限定●●個」など、直感的にわかりやすいものが多い。最近だと絵文字だけではなく、ドコモであればケータイ仕様のHTMLメールであるデコメールでメールマガジン配信をしているサービスも増えてきている。

 また、時間限定で実施される「タイムセール」や販売前の「予約」、共同購入などの手法がケータイではよくとられている。

モバイルコマースの利用者層について

 モバイルコマースでは、前述の特徴があるためか、女性向けの商材が売れているケースが比較的多いようだ。全般的に客単価は低いわけではなく、1万円を越えるサイトも存在する。「ケータイだから高い買い物はしないだろう」と筆者も質問されることはよくあるが、そういう傾向は特に見られない。購入者層の中心は20代〜30代だが、20代半ばを境にして、その上下でケータイでのネット利用の仕方がまったく異なっているようだ。「ケータイディバイド」と呼んでもよい。

 ケータイディバイドの下の層にいる人達の特性を具体的に記載してみよう。初めて触った自分専用のネット端末がケータイであり、そのためケータイでのブラインドタッチや両手打ちを身につけているため文字入力には不便を感じない。人によってはまるでPCを使うようにケータイを積極的に使いこなしている。1日に数十通のメールのやり取りし、PCを起動するのは面倒だとさえ思っているため、PCでウェブサイトはあまり見ることがない。クレジットカードは持っていないため、ケータイでの決済手段は代引きが中心となる。実際、モバイルコマースの決済手段ではカードより代引きの割合が多くなっている。

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